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週刊エコノミスト Online ロングインタビュー情熱人

献身的MFの経験――明神智和さん

「今の子どもたちの全体的なレベルはものすごく上がっています」(パナソニックスタジアム吹田にて) 撮影=浜田健太郎
「今の子どもたちの全体的なレベルはものすごく上がっています」(パナソニックスタジアム吹田にて) 撮影=浜田健太郎

元サッカー日本代表、ガンバ大阪ユースコーチ 明神智和/95

 堅実な守備的MFとして名をはせ、サッカー・ワールドカップでの日本代表初勝利にも貢献した明神智和さん。さまざまな経験や思いを糧に、指導者への道を歩んでいる。(聞き手=浜田健太郎・編集部)

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── 明神さんは2002年のサッカー・ワールドカップ(W杯)日韓大会の日本代表として、ロシア戦に先発フル出場して日本のW杯初勝利に貢献しました。あれから21年、日本代表は、今年9月の国際親善試合のドイツ戦で4対1と完勝しています。あの試合はどんな印象でしたか。

明神 昨年11〜12月のW杯カタール大会でも日本はドイツに勝ちましたが、内容は守備的で、結果優先という評価もありました。カタール大会後に森保一監督が続投し、再びドイツ相手にどんな戦い方をするのかが楽しみでしたが、今回は内容と結果が伴う試合でした。日本サッカーのレベルが高くなったと改めて実感しました。

── 明神さんが日本代表だった当時、ブラジルやドイツといったW杯優勝経験国と対戦して、勝つ見込みや自信はありましたか。

明神 勝てる可能性はゼロではないけれど、10回戦って1回か2回勝てるかどうかという確率だったと思います。その1、2回をどうたぐり寄せるのか。そういう時代だった当時とは隔世の感があります。

── 今年はJリーグ開幕から30周年。代表チームも強化してW杯優勝という目標を掲げて、その成果が表れているのでしょうか。

明神 今はインターネットやSNS(ソーシャルメディア)を通じて世界の情報がすぐに得られるので、子どもたちには世界のサッカーが身近になっています。それに加えて、日本代表やJリーグのレベルが向上した両方の影響で、ドイツのような強豪国相手に短期間で連勝するようになったと思います。

「努力を積み重ねた結果としてタイトルがある」

── 現役時代の明神さんは、1996~05年に柏レイソルに在籍し、06年にガンバ大阪に移籍後もアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)で優勝するなど(08年)、数多くのタイトル獲得に貢献しました。

明神 レイソルでも99年にナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)で優勝していますが、僕は準決勝、決勝には出場してません。初めて自分が主力で出場してタイトルを取ったのはガンバに移籍後です。チャンピオンの味を知る喜びに加えて、日々の努力を積み重ねた結果としてタイトルを取る素晴らしさと同時に、タイトルを取れない悔しさを知ったことが選手としての糧になりました。

「8人の明神がいれば」

── 明神さんが移籍したころのガンバには、中盤のポジションだけでも遠藤保仁選手や二川孝広選手など日本代表クラスのタレントがひしめいていました。移籍後のポジション争いはどうでしたか。

明神 最初は本当に大変でした。ガンバは前年に優勝していたし、メンバーがそろっていたし、移籍して最初の3、4カ月はついていくことで精いっぱいでした。自分自身が、気負いすぎていた面もあったと思います。

 守備的なMFとして献身的にピッチを縦横無尽に駆け回る明神さんは、J1で歴代11位となる497試合に出場。日本男子A代表としても00~02年、W杯日韓大会を含め26試合に出場して3得点を記録した。日韓大会で日本代表監督だったフィリップ・トルシエ氏はそのプレースタイルを「8人の明神と3人のクレイジーな選手がいれば完璧なチームができる」と表現した。 レイソルとガンバで同僚だった元Jリーガーの中沢聡太さんは、明神さんのすごみを次のように語っている。「1試合に2、3回、年間にしたら100回は必ず『ミョウさん(明神さん)がいてくれてよかった』と胸をなで下ろす瞬間がある」(高村美砂著『ガンバ大阪30年のものがたり』)

── レイソル在籍時の明神さんのプレーを観戦して、ポジショニングやボール奪取の巧みさ、危機察知能力の鋭さには何度も感嘆しました。ガンバでもそうした特徴を生かすことができると手応えはありましたか。

明神 移籍して最終的には適応はできたのですが、ガンバに移籍当初は、もっと攻撃的なプレーをやらなきゃいけないと、自分のプレースタイルを見失う時期がありました。

── 移籍当時のガンバ監督は西野朗さん(元日本代表監督)でした。前職はレイソルの監督で、当時の西野さんは堅守速攻が主体でしたが、ガンバでは、ボールを保持する攻撃的なスタイルを押し出していました。両チームで西野さんの下でプレーした明神さんはその変化をどうみていましたか。

明神 西野さんは、所属選手の特徴を引き出したチーム作りにたけていました。レイソルなら、洪明甫(ホンミョンボ)(元韓国代表キャプテン)さん、渡辺毅さん、薩川了洋さんという3人の強力なディフェンダーがいたので、それを基にチームを作っていました。所属の選手で最大のチーム力を引き出す監督でした。

ガンバでACL制覇

── 明神さんが獲得した最大のタイトルは、ACL優勝です。準決勝第2試合は浦和レッズ戦で、会場の埼玉スタジアムの雰囲気は欧州リ…

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