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週刊エコノミスト Online ロングインタビュー情熱人

J2からACL参戦――佐久間悟さん

「次は何としてもJ1に復帰したい。それが多くの人々への恩返し」 撮影=武市公孝
「次は何としてもJ1に復帰したい。それが多くの人々への恩返し」 撮影=武市公孝

ヴァンフォーレ甲府社長 佐久間悟/98

 昨年にサッカーJ2クラブとして天皇杯制覇という偉業を達成したヴァンフォーレ甲府(山梨県)。今季初参戦のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)でも躍進する。このクラブを力強くけん引しているのが佐久間悟社長だ。(聞き手=元川悦子・ライター)

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── 今年9月に始まったアジアが舞台のACLに、ヴァンフォーレ甲府はJ2クラブとして参戦しています。11月8日のホーム、浙江FC(中国)戦も4対1で勝利し、4試合を終えて2勝1分け1敗のH組1位(勝ち点7)と、グループリーグ突破が見えてきました。

佐久間 篠田善之監督のもと、選手たちも「一戦必勝」のスタンスで戦っています。可能であればACLに集中したいところなのですが、週末にも重要なJ2のリーグ戦が組まれていました。J2の終盤になって上位3~6位が参戦できるJ1昇格プレーオフ争いにも挑んだものの、11月12日の最終節を終えて8位となり、2017年以来となるJ1への昇格を逃したのは本当に残念です。

 今季は9月以降にACLの試合が組まれることが分かっていたので、本来であればJ2の前半戦で勝ち点を積み重ねておくつもりでシーズンに入ったんですが、思惑通りにいきませんでした。フロントを含め、チーム一丸となって挑戦していたんですが……。

── それでも、東京・国立競技場で開催したACLホーム2試合では、いずれも1万2000人前後の観客動員を記録しています。

佐久間 国立では(全3層ある座席のうちグラウンドに最も近い)1層だけを使用していますが、本拠地のJITリサイクルインクスタジアム(甲府市)に比べて5~6倍の使用料がかかります。そこで「1試合1万人超え」という目標をまず掲げ、安心・安全の試合を最優先に考えながら、JITと同規模の運営体制で準備することにしました。

── 例えば、どのような?

佐久間 VIP用の食事を例に挙げると、温かいものを提供するのが一般的ですが、山梨から来る方が試合観戦しながら食べられるようにと、弁当を用意することにしました。その一方、チケット価格は500~1万5000円と、プレミアムシートを除くとJITとまったく同じ設定です。山梨から来るファンの方は旅費もかかるので、負担が大きくなりすぎるのは望ましくない。「国立でもこんなに安くできるんだ」という声もいただきましたね。

── 国立には他クラブのユニフォームを着たサポーターもたくさんいましたね。

佐久間 「甲府に力を」と呼びかけ、いろいろなチームのサポーターにも国立に足を運んでくださいとお願いしました。今年は新型コロナウイルス禍が明けてスタジアムに観客が戻ってきましたが、サポーター同士の小競り合いなども目につきました。そういう時期だからこそ、調和を念頭に一体感を作りたいと考えたのです。

「クラブの長年の地道な歩みが大きな力に」

── ACL参戦は地方クラブの経営にとって負担も大きそうですが……。

佐久間 クラブの長年の地道な歩みが大きな力になっています。メインスポンサーのはくばく(山梨県が本社の食品メーカー)にACLスポンサーにもなっていただき、大きなサポートを受けました。サプライヤーのミズノにもACL用ユニフォーム制作協力を得て、5000枚が完売しました。こうした協力があって、国立開催は黒字化できる見通しです。

 この経験を勢いに、次は何としてもJ1に復帰したい。それを早く実現させることが、多くの人々への恩返しになると信じています。

 山梨県をホームタウンとするプロサッカークラブの甲府。市民チームとして発足し、1999年にJ2に参入したものの、特定の母体企業を持たないことから、2000年代初めには経営危機にも直面した。しかし、その後は3度にわたってJ1にも昇格。23年1月期も売上高16億円弱と経営規模は大きくはないが、地域に根を張って地道に強化を続けた結果が、昨年の天皇杯制覇とACL出場権獲得として表れた。佐久間さんはその甲府の社長に21年3月に就任し、経営の最前線で指揮を執る。

大宮で一からクラブづくり

── 佐久間さんは86年、J2・大宮アルディージャの前身、NTT関東サッカー部に選手として入り、91年の現役引退後は指導者も務めながら、大宮のプロ化(98年)に深く関わりました。

佐久間 NTT関東と大宮に関われた約20年間は本当に幸運でした。Jリーグの最初のシーズンとなった93年時点では、NTT関東はアマチュアチームでプロ化条件をまったく満たしていませんでした。僕は一からクラブ作りに携わり、プロ化やJ1昇格(05年)、スタジアム改修(06~07年)まで経験できたことに感謝しています。そうした人材は今のJリーグを見渡しても皆無に等しいですしね。

── 今でこそサッカー先進地の欧州で多くの日本人選手がプレーしていますが、90年代はサッカーのコーチングやクラブ運営などの情報も非常に少ない時代でしたよね。

佐久間 そうなんです。95年に視察に行った欧州で、モアテン・オルセン氏(元デンマー…

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