「NO 選挙, NO LIFE」に出演――畠山理仁さん
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フリーランスライター 畠山理仁/97
選挙の現場を長年取材し、選挙区の候補者全員に会うまでは記事にしないことが信条。そんなフリーランスライターの畠山理仁さんを追ったドキュメンタリー映画「NO 選挙, NO LIFE」が11月18日、公開される。(聞き手=井上志津・ライター)
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── 畠山さんが選挙の現場を取材する姿を記録したドキュメンタリー映画「NO 選挙, NO LIFE」が公開されます。出演の経緯を教えてください。
畠山 監督の前田亜紀さんとは、彼女がプロデューサーを務めた映画「なぜ君は総理大臣になれないのか」(2020年)の紹介記事を書いたことがきっかけで知り合いました。昨年7月の参院選前、「畠山さんは選挙が面白いとずっと言っているので、畠山さんの肩越しにカメラを据えて選挙を見たい」と前田さんに言われて、2日間ほど迷いました。
── なぜ迷ったのですか。
畠山 ある選挙区の選挙戦を取材する時、候補者全員を取材するまでは記事にしないというのが僕のポリシーですが、参院選で取材することにした東京選挙区の候補者は34人で、全員に会うのは大変なことなので、前田さんがついて来られるかなと不安でした。それに、限られた選挙期間の中で全員に会うためには、ある人の街頭演説を途中で切り上げて他の人の所に行ったり、瞬時に判断して走ったりするので、前田さんに気を使っていられません。前田さんとはせっかく良好な関係なのに、嫌われるのではないかとも考えました。でも、こんな機会はめったにないし、自分は今まで取材相手に「話を聞かせてください」と頼んできたのに、自分が頼まれたら断るのはかっこ悪いと思い、引き受けました。
「“無頼系”候補者の全力の戦いを知ってほしい」
畠山さんは選挙の面白さを伝えるフリーランスライター。国政から地方選、海外まで選挙取材歴は25年を超える。メディアから注目されず、「泡沫(ほうまつ)候補」などと呼ばれて記事化されない候補者も公平に扱う。敬意を表すため「無頼系独立候補」と呼び、可能な限り全候補者に会って取材している。これまでに出会った候補者たちを描いた『黙殺 報じられない“無頼系独立候補”たちの戦い』(集英社)は17年、第15回開高健ノンフィクション賞を受賞した。
── 初めて選挙に興味を持ったのは?
畠山 大学生時代、編集プロダクションでデザインや編集のアルバイトをしていて、社長の知り合いが市長選に出たのを手伝った時です。選挙事務所に行くと、これまで会ったことのない、いろんな人たちがいて、こんなに面白い場所って初めて来たなと思いました。
高すぎる日本の供託金
── 1998年から“無頼系独立候補”を取材していますが、きっかけは?
畠山 『週刊プレイボーイ』で(芸能事務所)「大川興業」の大川豊さんが、各地の選挙現場を取材するのに同行したことでした。大川さんは政治をテーマにした記事を連載中で、「主要候補」ではない候補のことを「インディーズ候補」と呼んでいました。取材を重ねるうちに、日本で立候補することは供託金の用意や仕事をしながら選挙運動することの難しさなど、ハードルがとても高いという現実を知り、そんな中でも熱い思いで政策を訴える無名の候補者たちの存在に引かれました。
けれど、マスコミは政党が推薦や支持をした候補者を「主要候補」と呼び、それ以外の候補と分けます。「主要候補」の後に「その他の方々」として紹介したり、「泡沫候補」と呼んだり、「独自の戦い」と表現したりすることに前から疑問も感じていたので、自分は全候補に会い、その情報を有権者に提供することにしました。誰に投票するか判断するための参考になるよう、候補者の情報を有権者に伝えることは、選挙報道のスタートラインだと思うからです。
「無名の候補者をバカにするのは無名の有権者である自分自身がバカにされるのと同じこと」
日本では選挙に出るには供託金を国に納める必要がある。候補者の乱立を防ぐのが目的で、一定の得票率に達しない場合、没収される。その額は、町村議会議員選の15万円から衆院選小選挙区、参院選選挙区、都道府県知事選の300万円、衆参比例区は600万円……。アメリカ、ドイツなど大半の国には供託金制度はない。制度があるイギリスでも500ポンド(約9万円)という。
── 供託金制度がない国はたくさんあるのですね。
畠山 高いといわれる韓国でも約150万円です。こんなリスクを背負って立候補するのに、日本では無名の候補者をバカにする傾向があります。政治に参加するには社会的に地位がなければいけないという凝り固まった考えがあって、選挙に出ることがカジュアルじゃないんです。海外では、立候補は権利なのでバカにされることはありません。
候補者は民主主義を支える「宝」です。無名の候補者をバカにすることは、無名の有権者である自分自身がバカにされるのと同じこと。それは巡り巡って有権者の不利益につながります。僕はそれを断じて受け入れられない。だから候補者の全力の戦いを多くの人に知ってもらいた…
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週刊エコノミスト
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