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経済・企業 経営

KDDI・ローソンのタッグで通信事業者とコンビニの関係は新時代へ 石野純也

ローソンのユニホームを着て手を合わせる(左から)三菱商事の中西勝也社長、ローソンの竹増貞信社長、KDDIの高橋誠社長=2024年2月6日、北山夏帆撮影
ローソンのユニホームを着て手を合わせる(左から)三菱商事の中西勝也社長、ローソンの竹増貞信社長、KDDIの高橋誠社長=2024年2月6日、北山夏帆撮影

 KDDIはローソンに対し株式の公開買い付け(TOB)を行い、ローソン株式の50%を取得する。TOBは4月にも実施し、現在筆頭株主の三菱商事と折半する形で共同経営体制に移行する。取得金額は4971億円を予定。KDDIは現在2.1%を保有し、他の通信事業者ではNTTドコモが2.09%保有しているが、この枠組みが大きく変わることになる。

「未来のコンビニを実現したい」

 KDDIがここまで巨額の資金を投じて買収を行う狙いはどこにあるのか。KDDIの高橋誠社長は「通信とDX(デジタル・トランスフォーメーション)を活用し、未来のコンビニエンスストアを実現したい」と語る。コンビニの店頭でリモート接客によって、保険などの金融商品を販売したり、服薬指導をしながら薬を購入できるようにしたりと、通信の活用でコンビニの利便性を上げていく方針だ。

 一方ローソンは、店舗を拠点にしたEコマースへの参入を検討しているという。ローソンの竹増貞信社長は「1万4000店舗のリアルなお店がEコマースのセンターになれば、オーダーから最短15分で商品をお届けできるようになる」と話す。こうしたサービスの実現に、KDDIの通信やデジタルサービスのノウハウを生かせる。また、KDDIとローソンのデータを融合することで新たなサービスが生まれる可能性もある。

KDDIの株価は下がる

 このような構想は、公開買い付け表明時に語られていたが、コンビニの進化だけでは、KDDIが5000億円近い巨額の資金を投じる理由を説明しきれないようにも思える。通信やデジタルソリューションの提供であれば、通信事業者と顧客という関係でも成り立つからだ。

東京都内のauの店舗
東京都内のauの店舗

 高橋氏も「小売り分野にはあまり知見がない」としながら、「小売りがより価値を出すために通信を使っていただくことに関して我々はプロなので、その立ち位置はキープしていく」と語っていた。実際、シナジー効果が見えづらいとの理由で、買収発表直後にKDDIの株価は下落し、現時点でも1月時点の水準には戻っていない。

 ただローソンは、2022年度に営業利益550億円を計上しており、23年度はさらに増益するとの予想を出している。KDDIがローソン株式の半数を取得すれば、利益の半分を連結決算でKDDIの利益として計上できる。

 さらに、auやUQ mobileのユーザーをローソンに向かせるような仕掛けも検討しているという。。2月にスペイン・バルセロナで開催されたMWC(Mobile World Congress)で、高橋氏は「auの延長線上にコンテンツを置くし、ファイナンス(金融)を置くし、エネルギーも置く。その次としてコンビニエンスストアを置く」と語り、ローソンに両ブランドの利用者を送り込む施策を考えていることを明かした。

決済サービスやポイントが軸に

 単にローソンのデジタル対応を強化するだけでなく、強化したローソンにauやUQ mobileのユーザーを送り込むことで、通信事業とローソンのそれぞれで相乗効果を出すのが狙いというわけだ。具体的な方法はこれからだが、決済サービスやPontaポイントなどが軸になっていくことは間違いないだろう。

経営にシナジーを発揮できるか(東京都内のローソンの店舗)
経営にシナジーを発揮できるか(東京都内のローソンの店舗)

 ローソンは現在、ドコモのdポイントとKDDIが採用するロイヤリティマーケティングのPontaの両方に対応しており、ユーザーはどちらか一方を選択できる。決済手段としては、ドコモのd払いやソフトバンク系列のPayPayも選択可能だ。

 こうした他社のサービスは排除しない方針だというが、高橋氏は「せっかくこういう枠組みになったので、Pontaは強化していきたい」としている。実現すれば、auやUQ mobileの経済圏強化につながるはずだ。

 また、ローソンの店舗網を活用したEコマースを、自社ユーザーに勧めていくこともできそうだ。楽天市場を持つ楽天グループや、Yahoo! JAPANを傘下に持つソフトバンクと比べ、KDDIはEコマースが手薄だ。Eコマースは、ポイント経済圏の要となるサービスなだけにKDDIにとって強化が必要になる。

ドコモやソフトバンクはどう出るか

 では他の通信事業者の戦略はどうか。KDDIが通信事業から小売りまでを垂直統合でつなげようとしているのに対し、ソフトバンクはアプローチの方法が真逆だ。ソフトバンクの宮川潤一社長は「僕らが求めている経済圏は、もう少しオープンな形。どこか特定の小売り業者のDXを目指すより、小売り業界全体のDXを目指す方向性」と語る。楽天グループも、戦略はソフトバンクに近いと言えるだろう。

 一方でドコモは、ファミリーマートや親会社の伊藤忠商事などとデータ・ワンという会社を設立して、小売りのデータを活用したデジタル広告配信事業に乗り出している。コンビニ自体を傘下に収めたKDDIとアプローチは異なるが、距離感は近い。

 等距離外交を標榜するソフトバンクも、PayPayを軸にセブンイレブンとの連携を進めている。KDDIのローソン買収が引き金になり、通信事業者とコンビニの関係がさらに接近する可能性もありそうだ。

(石野純也〈いしの・じゅんや〉ケータイジャーナリスト)

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