週刊エコノミスト Online ロングインタビュー情熱人

女子サッカーを盛り上げる――高田春奈さん

「WEリーグで国立競技場が埋まるような盛り上がりの試合ができたら理想的です」 撮影=武市公孝
「WEリーグで国立競技場が埋まるような盛り上がりの試合ができたら理想的です」 撮影=武市公孝

WEリーグ チェア 高田春奈/118

 間もなく開幕するパリ・オリンピックで、12年ぶりのメダル獲得を目指すなでしこジャパン。その4割を占めるのがWEリーグ所属の国内組だ。高田春奈さんはWEリーグを盛り上げようと、チェアとして引っ張っている。(聞き手=元川悦子・ライター)

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「選手たちが積み上げた成果をパリ五輪でも」

── 7月26日にパリ・オリンピックが開幕します(サッカー女子は25日が初戦)。なでしこジャパン(サッカー日本女子代表)は2012年ロンドン・オリンピック以来のメダル獲得を目指しています。

高田 メンバー発表の時はいつも「WEリーグ(日本女子プロサッカーリーグ)から何人の選手が入るのかな」というのが一番の関心ではあります(6月14日発表のパリ・オリンピックなでしこジャパンでは、バックアップメンバー4人を含む22人の選手のうち、WEリーグ所属選手は9人が選出)。

 現地視察した23年の女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア・ニュージーランド大会では、23人中14人がWEリーグの選手で、国内組も自信を持って堂々とプレーしていました。海外組もWEリーグや前身のなでしこリーグで育った選手たち。彼女たちが日本で積み上げてきたものが確かだということを広く知ってもらう機会になったと思いますし、今回のオリンピックもそうなると確信しています。

── なでしこジャパンが11年女子W杯ドイツ大会で世界一になった時には、日本中を大いに勇気づけました。

高田 そうですね。なでしこジャパンは23年の杭州アジア大会でも優勝していて、これはWEリーグ勢主体で勝ち取ったもの。大会後、選手たちが各自治体を表敬訪問した際、大々的にお祝いされるのを見て、女子サッカーの価値を改めて感じました。選手がこれだけ堂々と世界と戦い、その勇敢な姿を見て、自分自身が奮い立たせられたのも事実です。伸び伸びと戦ってほしいですし、その成果としてメダルを獲得できれば本当にうれしいことだと思います。

 国内初の女子プロサッカーリーグとして20年に設立され、3シーズン目の23-24年シーズンを5月に終えたWEリーグ。12クラブが参加し、三菱重工浦和レッズレディースが2年連続2回目の優勝を果たした。6月7日には23-24年シーズンの「WEリーグアウォーズ」も開催され、パリ・オリンピック代表にも選ばれた浦和の清家貴子選手が最優秀選手賞を受賞。ベストイレブン、得点王と合わせて個人3冠となった。 WEリーグはそれまでの国内トップリーグだったなでしこリーグを再編し、なでしこリーグはアマチュアのトップリーグの位置づけとなった。WEリーグの初代理事長(チェア)となった岡島喜久子さんの後任として、22年9月からチェアを務めるのが高田さんだ。

V・ファーレン長崎社長も

── 高田さんは大学卒業後、最初の就職先であるソニーを4年で退社し、父・明氏が創業した通販大手「ジャパネットたかた」(長崎県佐世保市)の人事コンサルティングを担う会社を自ら05年に設立して、ジャパネットの事業にかかわり始めます。

高田 ソニーではやりがいのある仕事をさせていただきましたが、ジャパネットの組織拡大に伴って採用や人材育成に苦労しているという話を耳にするようになりました。悩んだ末、一念発起して「会社を作ってジャパネットの人事を手伝う」と言ったら驚かれましたね。もともと、親と一緒に仕事をすることを嫌がっていると知っていたので。起業後、社員一人一人の個性やキャリアを見つめられるよう、それまでの経験を生かしてグループ内の人事制度の構築を進めました。

 その後、10年には広告代理店業務も開始し、会社はもともと別資本で経営していたのですが、15年にはジャパネットグループの取締役となってグループ全体の人事、広告業務などを担当するようになりました。18年から(ジャパネットグループが17年にグループ会社化したJクラブ)V・ファーレン長崎(現J2)の経営にもかかわり、20年に父が務めていたV長崎の社長を引き継いで、サッカー界に軸足を置いたという流れです。

父・明氏の「人との接し方」

── 日本有数の実業家である父・明氏から学んだこととは?

高田 15年間一緒に仕事をし、コミュニケーション力やリーダーシップを間近で見てきて、一番すごいと思うのは人との接し方ですね。V長崎の社長だった時も目上の人から新入社員まで年齢に関係なく、気さくに声をかけていましたし、ファン・サポーターとも「同じサッカーを楽しむ仲間」として接していました。私はまったくタイプが異なるので、同じようにはできませんが、そういった姿勢がV長崎の成長にもつながったのだと思っています。

── V長崎では悲願だったJ1昇格が果たせず、心残りもありながら、22年3月にはJリーグ理事に転身。その半年後にはWEリーグのチェアという大役に抜てきされました。

高田 会社やクラブの社長は収益の最大化、観客やスポンサーを増やすことがメインの仕事で、一つの組織に目を向けていればいいのですが、WEリーグチェアの場合は加盟クラブや理事会、実行委員会の運営を考えて、より中立的な立場で仕事を進めなければいけない。全体を俯瞰(ふかん)する力と同時に、日本サッカー協会やJリーグ、ステークホルダー…

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