リーマン・ショック10年=編集部
「二度と味わいたくない」
日本最大級の機関投資家・農林中央金庫で運用最前線にいた2008年9月、リーマン・ショックに遭遇した年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の高橋則広理事長は、こう振り返る。直前までもうかっていた金融商品の時価が消え、ドルの調達ができなくなった。「企業で言えば、資金繰り倒産」(高橋理事長)。
「まったく予想できなかった」(竹中平蔵・慶応義塾大学名誉教授)リーマン・ショックから10年──。日米欧の強力な金融緩和と主要国に加えて、中国による4兆元(当時のレートで57兆円)財政出動が「世界経済の底割れ」を回避した。危機直後の08年11月の20カ国・地域(G20)サミットで「政策協調・反保護主義、通貨安競争回避の合意は特筆に値する」と当時、財務官として急騰する円を前に為替介入の腹をくくった篠原尚之氏は回想する。
その後、日米で戦後最長規模の景気拡大を続けるなど世界経済は、表面的には順調に推移している。
しかし、世界を巻き込んだ巨大なバブル崩壊は格差拡大をもたらし、人々から寛容性を失わせた。それが反グローバルや反移民、国民分断へと発展していく。16年6月、英国の国民投票で、まさかの欧州連合(EU)からの離脱を選択、その5カ月後の11月に米大統領選で「米国ファースト」を掲げるトランプ氏が勝利した。
一方で、「世界経済は決してお先真っ暗というわけではない」(小玉祐一・明治安田生命チーフエコノミスト)。政治経済の混乱の過程でも米シリコンバレーを中心に、デジタル技術は日進月歩の進化を遂げた。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)という巨大IT企業が台頭。米中二極体制の中、プラットフォーマーという従来になかった世界的独占企業を制御するすべを持たないまま、人類は未知の世界に突入する。
リーマン・ショックとは、何だったのか。その教訓とは──。政財官界の有力者に聞いた。
(編集部)