教養・歴史書評 読書日記

ブレイディみかこの読書日記 エリートよりピープル 勝つために転換せよ

×月×日

 英国に移住して22年目のわたしにとり、北田暁大著『終わらない「失われた20年」 嗤う日本の「ナショナリズム」・その後』(筑摩選書、1700円)は、自分が不在の間に祖国で何が起きていたのかを教えてくれる貴重な一冊だ。

 日本で「リベラル」という言葉が浸透したのは民主党政権が誕生したときだったとか、そのためそれが「自民党的ではないものの寄せ集め」という独特な意味を持つようになってしまったとか、海外在住者には目から鱗(うろこ)だ。この日本型リベラルから欧州型のソーシャル(社会的)な部分が霧消してしまったことが現在の野党の迷走につながっていると著者は警告する。

 日本型リベラルが標榜(ひょうぼう)したものは、エスタブリッシュメントによるクリーンで寛容な都市政党だった。それはソーシャルなポリティクスのソウルとも言える人的資源への公共投資を「自民党的バラマキ」と否定し、多様性や社会包摂の理念のみをリベラルの進むべき道として受け取ってしまったと著者は指摘する。

残り898文字(全文1330文字)

週刊エコノミスト

週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。

・会員限定の有料記事が読み放題
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める

通常価格 月額2,040円(税込)

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事