小説 高橋是清 第15話 唐津城下=板谷敏彦
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(前号まで)芸妓桝吉に入れあげ自堕落な生活を送る是清に、唐津藩が創設する英語学校教師の口が舞い込んだ。月給100円という好条件にあらがえず、是清は桝吉に養祖母の面倒を委ね唐津へ向かう。
明治4(1871)年7月14日、是清が唐津に到着する少し前、東京では在京の知藩事が皇居に招集されて、廃藩置県の詔書が下された。
領地を召し上げるなど、封建藩主の抵抗があってもよさそうなものだが、どの藩も財政に苦しみ、むしろ重荷を下ろして安堵(あんど)しているような状況である。幕藩時代そのままの地割りで移行したので当初は3府302県、この後すぐに府県の合併が推進されて、明治22(1889)年に至ってほぼ現在の3府43県に統合された。
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