小説 高橋是清 第16話 耐恒寮=板谷敏彦
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(前号まで) 英語教師として唐津に招かれた是清は、酒豪ぶりで評判になるものの、赴任先の洋学部が焼失、東京に残してきた愛人の芸妓桝吉との関係も終わり、前途多難である。
火事で焼けた洋学部は、二の丸にあった元藩主の御殿に移され耐恒寮と名付けられ、是清はそこに住み込んだ。
攘夷派の嫉妬を買って放火されるほど洋学部には人気があったのだろう。これを機に、生徒を50名から250名へと増やすことになったが、藩の負担も大きい。
そこで是清は、給料100円のうち40円を返上して学校の運営費に回してもらうことにした。ちょうど牧田への借金を完済し、また桝吉(ますきち)と別れたので生活費の送金と東屋への10円の仕送りもなくなったこともある。
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