歴史書の棚 現代人には想像外 暴力と欲望の歴史=本村凌二
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16世紀には地球規模で商業が活発になり、東アジアでも明(みん)の海禁に反して貿易を営もうとする内外の勢力が出没した。周縁海域では密貿易や海賊行為が横行した。それを明では倭寇(わこう)とよんだが、実際には中国、日本、朝鮮の私貿易商人たちが徒党を組んで武装していた。
西ヨーロッパでも、イングランド人、フランス人、スコットランド人らが入り乱れて、戦争と報復に便乗した海賊行為がくりかえされている。やがて略奪の波はイングランド沿岸部から大西洋へと広がり、カリブ海や中南米沿岸部まで含むようになる。薩摩真介『〈海賊〉の大英帝国』(講談社選書メチエ、1950円)は、現代人の理解を超える合法化されたこの暴力と欲望の歴史の実像を描き出す。
とりわけ、イベリア半島のスペインとポルトガルの両国がいち早く独占していた新大陸の富を、他の諸国がいかにして奪うかという点に眼目がある。コルテスやピサロらの征服者(コンキスタドーレス)による植民地が拡大し、そこで先住民を酷使して鉱山開発が行われた。巨万の金や銀が採掘され、旧大陸で大々的な銀納化が進行した。
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週刊エコノミスト
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