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経済・企業 コンビニ最終決戦

ファミマ、Tポイント「決別」の皮算用=永野雅幸

コンビ二との関係強める商社
コンビ二との関係強める商社

「Tポイントカード、どうにかせんとあかんな。ファミリーマートに不利な契約になっとる」──。伊藤忠商事の岡藤正広・会長CEO(最高経営責任者)は経営説明会で繰り返し不満を訴える。共通ポイントカード、Tポイントカードを管理するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)との契約更新のタイミングが2018年末とされるなか、子会社ユニー・ファミリーマートホールディングス(UFHD)が、Tポイントカード陣営から脱退する選択肢を含めて、契約条件改定交渉の真っ最中であろう。

特集「コンビニ最終決戦」

 伊藤忠がTポイントの契約条件にこだわるのは、同社の中期経営計画で掲げる「商いの次世代化」の根幹に関わる問題だからだ。同戦略では、UFHDを起点とするグループのバリューチェーン(価値連鎖)向上を狙うとともに、中国・アジアでのビジネス創出を主眼としている。ポイントカードの問題は次世代化戦略に大きくかかわってくるのだ。

 コンビニは、来店客数の多さ、来店頻度の高さ、商品の入れ替わり頻度の高さなどの特徴から、性別や年齢をはじめとする顧客の属性に関する情報が入手できる。購買履歴に関するビッグデータの宝庫だ。

 しかし、UFHD傘下のファミマが現在発行する「ファミマTポイントカード」が大きな障壁となる。Tポイントカードを管理するCCCが顧客属性情報を管理しているのだ。ファミマ側では、鮭おにぎりが何個売れたのかは分かっても、ある40歳代の男性が購入した場合に、その男性の過去の購入履歴などの情報はCCCから購入するしかない状態にある。岡藤会長がTポイントカードに不満を隠さないのも、こうした事情が背景にある。

 伊藤忠はUFHDを起点に食品分野では高いレベルのビジネスを展開している。セブン─イレブン向けに強い伊藤忠食品と、ファミマ向けが軸の日本アクセスの強力な食品卸2社を傘下に抱えることが大きい。

 だが、商いの次世代化戦略の成否を握るのは情報・金融面でのファミマの活用強化策だと筆者は考える。

 Tポイント陣営を脱退して独自に開発中のポイントを導入するのか、現行の契約条件を改定してTポイントにとどまるのか、両方の併用か、他のポイントと提携するのかなどの方向性が近く発表される見込みだ。

コンビニ活用の次の手

 伊藤忠とUFHDにとっては、来店客の決済頻度が高いコンビニという利点を生かしながら、消費者に魅力的なポイント制度を導入し、メインの決済手段として選ばれる新しいファミマカードやキャッシュレス決済手段を導入することが必要だ。

 それによって、コンビニチェーンの企業価値が、おにぎりを販売する物販だけでなく、ビッグデータを吸い上げる場所として、情報・金融面での価値が向上するスタートラインに着く。

 その先には、ファミマで吸い上げるビッグデータのマネタイズが課題として浮上してくる。ファミマの需要予測への活用だけでなく、他の小売り業態企業やサービス・金融企業にも活用できるビッグデータを使い、百貨店、家電、ドラッグストアなどとアライアンスを形成し、独自のECを展開するのも一計だ。

 このEC事業を中国へ拡大するのが、同国に強い伊藤忠のコアコンピタンス(核となる競争力)の最高の活用方法であろう。

 アマゾンや楽天、中国のアリババなどとの差別化戦略としては「日本小売業が販売する日本製のプレミアム商品」を扱うEC、特に中国の富裕層をターゲットとする方向性が有効だと考える。

(永野雅幸、三菱UFJモルガン・スタンレー証券シニアアナリスト)

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