法務・税務税務調査が狙っている

動き出した「富裕層チーム」 態勢強化で調査件数は大幅増=下桐実雅子

    (注)富裕層のデータは野村総研 (出所)国税庁の資料を基に編集部作成
    (注)富裕層のデータは野村総研 (出所)国税庁の資料を基に編集部作成

     国税の税務調査が今、苛烈さを増している。その重点ターゲットの一つが「富裕層」だ。

     <税務調査が狙っている>

     全国有数の高級住宅地、兵庫県芦屋市──。昨年から今年にかけ、芦屋に住む資産家ら50人以上に対し、大阪国税局による集中的な税務調査が行われている。現在までに総額30億円以上の申告漏れが指摘された模様だ。相続財産の一部を申告していないなどのケースとみられる。

     国税庁は2014年7月から、東京、大阪、名古屋の3国税局に富裕層対策を強化する「重点管理富裕層プロジェクトチーム」(富裕層PT)を新設した。関係者によると、大阪国税局は当初、13人態勢だったが、現在は32人に増強。富裕層に申告漏れの所得や資産がないか監視や調査を強化しており、その本格的な活動の成果が今回、現れた形だ。重点管理富裕層の具体的な基準は明らかでないものの、租税回避行為や節税対策が活発な保有資産1億円以上の層の可能性がある。

    税務署レベルにも配置

     国税庁が富裕層を重点対象とするのは、海外への資産移転をはじめ富裕層にしか取りえない過度な節税策や租税回避行為が広がっているとの認識を持つからだ。16年には「パナマ文書」、17年には「パラダイス文書」の存在が明らかとなり、富裕層の租税回避行為の一端が明るみに出たこともあり、税の公平・公正な負担という根幹が揺らぎかねないとの危機意識にあふれる。富裕層PTは17年、福岡や仙台など全12国税局へ設置され、全国へと対象が広がった。

     また、重点管理富裕層を頂点とすると、その下に位置付ける「上位富裕層」については、税務署レベルで監視・調査を強めている。具体的には、東京、大阪、名古屋、関東信越の4国税局管内の税務署に「上位富裕層担当特別国税調査官」を試行的に配置、東京国税局管内では世田谷、麻布など6税務署に配置されている。大阪国税局管内は8税務署で、芦屋のほか、京都の右京、大阪・北摂地域を管轄する豊能(とよの)税務署などだという。

    (出所)国税庁資料より編集部作成
    (出所)国税庁資料より編集部作成
    (出所)国税庁資料より編集部作成
    (出所)国税庁資料より編集部作成

     富裕層PT設置以外にも、5000万円超の海外財産を申告させる「国外財産調書」や、3億円以上の財産などを申告させる「財産債務調書」新設など、富裕層に対する包囲網を年々強化している。国税庁が今年11月に発表した17事務年度(17年7月~18年6月)の富裕層に対する所得税の税務調査件数は、全国で5219件と前年度より24.6%増えた(図2)。中でも、海外投資などをした富裕層への税務調査は前年度比6割の大幅増を記録した(図3)。国税の前進は止まらない。

    (下桐実雅子・編集部)

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