孫崎享の読書日記 成人が詩と無縁に生活 日本は特異な国
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1980年代末、かつての上司・岡崎久彦氏から連絡があった。「自分は近くサウジアラビアを離れる。君が来ればサウジの情報機関の人々に紹介する」。
それで出かけて情報機関の人々と意見交換した。夜、「一緒に行こう」と言われて出かけたのが、世界の100人の富豪に入っている実業家の家だった。サウジ中央銀行総裁や政府高官も来ていた。驚いたのはその中で最も尊敬を集めている人物が詩人だったことである。私はロシアやイランなど詩を愛好する国々に勤務しているが、サウジで詩人が高い地位を得ているとは思わなかった。
成人が詩と関係なく暮らしている日本は特異の国と思う。そのような思いを持っている中で、谷川俊太郎、鴻上尚史著『そんなとき隣に詩がいます 鴻上尚史が選ぶ谷川俊太郎の詩』(大和書房、1500円)を手にした。詩を「さみしくてたまらなくなったら」「毎日しかめっつらだけになったら」「愛されなかったら」「愛されたら」「大切な人をなくしたら」「家族に疲れたら」「おっぱいが好きなら」等の項目に分けて選んでいる。
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週刊エコノミスト
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