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第13回 国際組織のマネロン審査に おびえる地銀の不安と恐怖=浪川攻

    金融庁もFATFに身構えている
    金融庁もFATFに身構えている

     銀行業界における今年のビッグイベントのひとつがFATF(マネーロンダリングに関する金融活動作業部会、本部パリ)の対日相互審査である。犯罪・テロに関する収益、資金の洗浄行為のために金融機関の預金口座、あるいは送金手続きなどが悪用されることを防止するための国際的組織だ。相互審査で、加盟国の取り組みを厳しくチェックしている。

     日本ではこれまで3回の相互審査を受けており、秋にも着手されるのは第4次審査となる。4回ともなれば、その対応も随分と慣れているにちがいないとみるのは大間違い。過去の3回が国を対象に制度面の充実度を主目的に行われたのに対して、今回は民間側がきちんと対応できているのかというシステム態勢、事務オペレーション等々という実務に初めて目が向けられるからだ。

     金融庁はこれまで、各金融機関にマネーロンダリング防止に向けた態勢などを厳格に検査し続けてきた。しかし、率直に言って、地域銀行、信用金庫、信用組合の中には、いまだに態勢が十分とはいえない向きがあると言う。そこで、金融庁はこれまでの検査、ヒアリングに基づいて、リスクベース・アプローチ(マネロンのリスクを特定、評価し、実効的に低減するための対策を講じること)の視点から、到底十分とは言えない事例や、反対に期待通りの事例をとりまとめて、地方銀行業界など業界団体に還元する動きに出た。

     マネロン防止態勢を専門的に扱うコンサルティング会社では「地域銀行の中にも、いまだ態勢面で不安を解消できないところもあるため、金融庁が動き出した」とみている。

     一方、FATFの相互審査は今年11月ごろに個別金融機関へのヒアリングが行われる見通しだ。ヒアリング先で有力視されているのは、全国銀行協会、地方銀行協会など各金融業態の会長を務めている銀行と言われている。が、それだけが有力候補というわけではない。

    トップ自ら応対の必要

     前述のコンサル会社は「FATFの過去の取り組み方からすると、過去にマネロンで問題が生じたと目されている銀行も選び出される可能性がある」と指摘する。中でも可能性が高いのが地銀業界といわれているだけに、これから1年あまり、マネロン防止に向けた態勢整備問題が最優先課題とならざるを得ない銀行があるはずである。

     FATFによる相互審査とそれによる評価付けは「欧米の大銀行でも、最優良評価を下されたところはない」(メガバンク関係者)ほどに厳しい。したがって、メガバンクでも、相互審査の対応の準備にシリアスさが強まってきている。万が一、ヒアリング対象となって、FATFから不合格の烙印(らくいん)を押されれば、そのダメージは計り知れないだろう。

     さらにいえば、FATFのヒアリングは、金融機関のトップ自らが答える方式で、それができないと、それ自体がマイナス評価になる。トップがこの問題に対して十分な体制の把握ができていないという受け止め方になるからだ。これは、トップの横に担当者たちがズラリと居並ぶという日本的なスタイルが当てはまらないことを意味している。

     一方では、デジタル社会の象徴としてのキャッシュレス決済も多くの地銀で開始される見通しにあるとともに、電子マネーとマネロンという問題も新たに浮上してきている。今年、地域銀行は重たい課題を背負っている。

    (浪川攻・金融ジャーナリスト)

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