注目産業別総点検1 スマートフォン 販売数が急=山根康宏
世界最大のスマートフォン市場となった中国で、販売台数が急減している。シェアトップの中国ファーウェイなど国内大手メーカーは品質向上などで健闘するものの、米アップルのiPhone(アイフォーン)を中心にその他のメーカーが苦戦。2016年まで右肩上がりで拡大を続けた市場だったが、消費者へのスマホの普及が一巡したとみられ、19年も販売台数の減少が見込まれる。限られたパイを激しく奪い合う市場へと転換したと考えてよさそうだ。
シンガポールの調査会社カナリスによると、18年のスマホの販売台数は3億9600万台と前年比14%減少した。過去最高を記録した16年の4億7650万台から2年連続での減少となり、販売台数は13年以来の低水準となった。18年第4四半期(10~12月)は前年同期比15%減となり、7四半期連続の減少となる。カナリスは消費者がスマホをより長く保有するようになったことに加え、景気減速や購買力の低下を減少の要因に指摘している。
中でも苦戦が目立つのが市場シェア5位の米アップルで、18年の市場シェアは9%と前年に比べ変わらないものの、販売台数ベースでは13%減少した。一方、上位4社は中国勢が占め、ファーウェイ(市場シェア27%)をトップに、オッポ(20%)、ビーボ(20%)、シャオミ(12%)と続く。中でも、ファーウェイは販売台数を前年比16%増と大きく伸ばしたほか、ビーボも9%増加している。
年内にも5G開始
一昔前の中国メーカー製スマホの特徴は一にも二にも値段が安いことだった。しかしここ数年は技術開発に力を入れており、さらには矢継ぎ早にマイナーチェンジモデルを投入。消費者を飽きさせないマーケティング戦略が奏功している。例えば、オッポとビーボは18年6月、カメラがモーターの力で本体から出てくる機構を持ったスマホを発表。ファーウェイは今年2月、ディスプレーを折り曲げることのできるフォルダブルディスプレー搭載製品を発表している。
iPhoneは本体サイズを変えたりカラーバリエーションを増やしたりしているが、新製品の投入は毎年秋のみで、半年もたつと古臭く感じられてしまう。ましてや中国各社が相次いで投入する新機構搭載製品と比較するとなおさらだ。もはや中国4社が新製品を出す際、「iPhoneのような」という形容詞はまったく使われなくなった。中国各社のライバルはアップルではなく国内他社になっている。
だが、すでに市場は飽和しており、カナリスは19年のスマホ販売台数を前年比3%減と予測する。中国では年内にも第5世代(5G)通信が始まる見込みだが、メーカー各社が投入する5G対応製品は高品質・高価格帯が中心になりそうで、市場全体を押し上げる力は限られる。また、安全保障上の懸念から米国を中心にファーウェイ排除の動きが出ていることも、中国メーカーに無視できない影響を与えており、市場動向から目が離せない状況が続く。
(山根康宏・香港在住ジャーナリスト)