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映画 ビリーブ 未来への大逆転 男女平等のため闘い続けた女性最高裁判事の自伝的作品=野島孝一

    (c)2018 STORYTELLER DISTRIBUTION CO.,LLC.
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    米国というと、女性が強く、働く女性の権利がしっかり守られている、という感じが強い。だが、実際には、1970年代ごろまでは法的にも男女差別が画然としていた。この映画は、現在、米国でただ一人の女性最高裁判事ルース・ギンズバーグの自伝的な映画だ。彼女は男女平等のために法廷で闘い続け、今も86歳になりながら最高裁判事の要職にある。

     ユダヤ人家庭に育ったルースは弁護士を目指し、ハーバード大学法科大学院に入学する。1956年当時、同校に女性は9人だけで女子トイレもなかった。学生結婚した夫のマーティンもハーバードに通い、2人の間には幼い女の子もいた。マーティンががんにかかる逆境の中、ルースは転籍したコロンビア大学法科大学院を首席で卒業する。だが女性の弁護士を雇う法律事務所はなかった。やむを得ずルースはラトガース大学の教授になる。米国では大学教授が弁護士として活動することを認められている。

     ルースは法律における男女間の差別をなくすため法廷で奮闘した。女性は結婚して家に入り、専業主婦をしていれば、それでいいという時代。ルースは病身の夫を支え、母親として子供を育て、寝る間も惜しんで仕事をした。男の権利を主張する傲慢な法律家と対決し、女性の権利を確保しようとあがいていた。その第一歩が母親の介護をしている男性に税控除が認められなかった控訴審だった。

     法廷場面がリアルで素晴らしい。女性側から声高に権利を主張するのではなく、男だって仕事を休んで家族の介護をすることがあるのに、それを認めないのはおかしいと逆転の発想で男女の平等を勝ち取った。

     ルースを演じているのは、「博士と彼女のセオリー」でアカデミー賞女優賞にノミネートされたフェリシティ・ジョーンズ。イギリス育ちの彼女は、自身もオックスフォード大学を卒業した才媛。知的で輝く個性が魅力的だ。ラストシーンでは、85歳のルース・ギンズバーグ自身が裁判所の階段を上がって来る。女性の喝采は鳴りやまないだろう。

     ルース自身が出演しているドキュメンタリー映画「RBG 最強の85才」も5月10日から、ヒューマントラストシネマ有楽町などで公開される。RBG(ルース・ベイダー・ギンズバーグ)という3文字で通用する人物は、米国でもJFKなどごく少数。平然とトランプ批判をするRBGの人気は高く、Tシャツやマグカップまで売られている。だが本人は至っておしとやかで、内向的。猛女のイメージとは程遠い。

    (野島孝一・映画ジャーナリスト)

    監督 ミミ・レダー

    出演 フェリシティ・ジョーンズ アーミー・ハマー ジャスティン・セロー

    2018年 米国

    原題 ON THE BASIS OF SEX

    TOHOシネマズ 日比谷ほかで公開中

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