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台湾 人気の新作ゲームに中国が激怒したワケ=田中淳
配信6日目にして世界で100万本超を売った台湾の新作ゲームが闇に葬られようとしている。「習近平国家主席をちゃかした」と怒り狂う中国人ゲーマーたちの攻撃にさらされたからだ。
問題となったのは、2月19日に配信されたオンラインのサイコホラーアドベンチャーゲーム「還願 (ディヴォーション)」。台北のアパートを舞台に、幸福な家族が難病やカルトに巻き込まれ崩壊していく悲劇を描く。実写かと見まがうほど緻密(ちみつ)な背景美術は欧米の専門家も絶賛。湿度の高い生々しさと生活感がホラーを展開する下地として生きている。
だが中国人ゲーマーは、背景に描かれた1枚の魔よけ札を見逃さなかった。札に中国語で記された11字を組み直すと「クマのプーさん習近平のクソッたれ!」というメッセージになるのだ。
習氏は2013年、初訪米した際にオバマ大統領と並んだ姿が「アニメのプーさんと(虎の)ティガーにそっくり」と話題になり、ネットスラングで「小熊維尼(クマのプーさん)」と呼ばれるようになった。だが国家指導者の威厳を損ねると感じた中国政府は「小熊維尼」という単語自体を検索不可にする。中国では今もプーさんそのものがタブー扱いだ。
「台湾が中国をバカにした」という政治的な感情も相まって、批判は燎原(りょうげん)の火のごとく拡散。中国市場を重視する配信元は「還願」の取り扱いを中止した。あの国では、たかがプーさんされどプーさんなのだ。
(田中淳・台湾在住編集者)