クラシック 第7回仙台国際音楽コンクール=梅津時比古
珍しい協奏曲に的を絞った選考 ヴァイオリンとピアノ部門を開催
日本で注目すべき国際音楽コンクールの一つに、宮城県仙台市が創設した「仙台国際音楽コンクール」がある。
3年に1度の開催で、今年第7回を迎えるこのコンクールの特徴は、ヴァイオリンとピアノの両部門において、世界でも珍しい協奏曲に的を絞った選考をしていることである。参加者が本選まで進むと、ヴァイオリン部門では4曲もの協奏曲、ピアノ部門で3曲の協奏曲を弾くことになる。
若い演奏家にとって、オーケストラと共演する協奏曲はあこがれの的、夢であるためか、応募者は増え続け、今年の第7回は史上最多の39の国と地域から467人(ピアノ331人、ヴァイオリン136人)の応募があった。その中から予備審査を通った両部門合わせて84人(ピアノ43人、ヴァイオリン41人)が5、6月に仙台市でしのぎを削る。
最初に始まるピアノ部門(5月25日~6月9日)では、あらゆる協奏曲の中で最も華やかなピアノ協奏曲が連なる。セミファイナルはベートーヴェンのピアノ協奏曲第3、4番のどちらかを選択、本選は、モーツァルトのピアノ協奏曲を1曲(選択)と、ベートーヴェン、ショパン、リスト、シューマン、ブラームス、チャイコフスキー、ラフマニノフ、ラヴェル、バルトーク、プロコフィエフなどの協奏曲から1曲(選択)。まさに協奏曲の一大供宴になる。
その分、心配になるのは、コンクールが華麗さの競争に傾かないかということ。その手当てが実に利いている。本選のモーツァルトの協奏曲は、作品番号の若い室内楽的なものに選択肢を限定しているのだ。これが功を奏し、前回(2016年)、筆者が聴いた時には、モーツァルトにおいて繊細な感性が手に取るように分かり、そして、もう1曲の協奏曲で名技性が堪能できた。
続いて始まるヴァイオリン部門(6月15~30日)は、今回、特筆に価する新たな審査ポイントを加えた。セミファイナルで、参加者はブラームスの交響曲第1番の第2楽章の指定箇所、R・シュトラウス《ツァラトゥストラはこう語った》の指定箇所において、オーケストラのコンサートマスターとして演奏する課題が加わったのだ。国内外を問わず、コンクールでコンサートマスター席に座らせるのは初めてだろう。堀正文審査副委員長は「若い人に多様な能力を発見するのがコンクールの務め」と狙いを語る。
セミファイナル以降の協演はピアノが広上淳一指揮、ヴァイオリンが高関健(たかせきけん)指揮の仙台フィルハーモニー管弦楽団。公式サイトはhttps://simc.jp
(梅津時比古・毎日新聞学芸部特別編集委員)
会期 ピアノ部門 5月25日(土)~6月9日(日)
ヴァイオリン部門 6月15日(土)~30日(日)
会場 日立システムズホール仙台(仙台市青年文化センター)
宮城県仙台市青葉区旭ケ丘3-27-5
問い合わせ 仙台国際音楽コンクール事務局
TEL 022-727-1872