スペイン風邪の歴史に学ぶ相場=市岡繁男
日本の人口統計をみると次の2点が注目される(図1)。1点目は出生数で、昨年(86万人)は1874年以来の水準だ。当時の総人口が3500万人だったことを思えば、今の出生数は異常とも言える少なさだ。2点目は死亡数で、昨年は138万人と戦後では最大だが、今なお戦時中を除く過去のピーク(1918年)には及ばない。
18年の死亡数(149万人)が突出しているのは、スペイン風邪の世界的流行によるものだ。その前年の日本の総人口は5400万人だったので、驚異的な死亡率だったと言えよう。『日本を襲ったスペイン・インフルエンザ』(速水融、藤原書店)によると、当時の新聞紙面は、「罹患(りかん)者の5%が死亡、郵便配達に支障を来す。市電も間引き運転」といった見出しであふれ、その新聞も「社内における罹患者増大のため頁数縮小」を通告せざるを得なかったという。
全世界で5000万人が犠牲になったとも言われるスペイン風邪の流行は、18年6月からの9カ月間で3波に及んだ。なかでも18年秋の流行は猖獗(しょうけつ)を極め、11月には第一次大戦が終結したほどだ(図2)。
当初は上げ基調だった株価も流行1波、2波とも死亡数の急増をみて下落した(3波目の時は戦後の経済ブームで上昇)。だとしたら、現在の好調な株価も先行きは楽観できない。
(市岡繁男・相場研究家)