新型肺炎は中国バブル崩壊の引き金=市岡繁男
「新型肺炎の影響で中国の石油需要は消費全体の20%も減少。2008年〜09年の世界金融危機以来、最大の需要ショックだ」。ブルームバーグ通信の報道だ。また韓国紙は「現代自動車は中国からの部品供給が途絶え、生産停止の危機に直面」と報じる。
そんな事態にもかかわらず、米ナスダック指数は最高値を更新するのだから、相場は分からない。だが米国株はともかく、中国と密接な関係にある東南アジア株や豪ドル、そして商品相場は低迷している。それも今回の新型肺炎が流行する前から、ずっと右肩下がりで推移しているのだ(図1)。
これは16年から中国の生産年齢人口(15〜64歳)が前年比マイナスとなったことが大きい。働き手が減れば経済は上向かない。事実、景気のバロメーターであるマネーサプライ(M1、現預金)の伸び率は16年8月をピークに低下し、今も伸び悩む。このため、中国が世界消費の過半を占める非鉄なども、M1に連動する形で価格が下落しているのだ(図2)。
そんな局面において米トランプ政権は中国からの輸入品に関税を課した。そして今回の新型肺炎ショックである。この災厄は「中国バブル崩壊」の引き金となりうる。今なお宴(うたげ)が続く米国株だが、たとえば中国からの物流が滞り、インフレが顕在化したら万事休すとなる。
(市岡繁男・相場研究家)