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米FBI 積水ハウス前会長らから聞き取り、三菱UFJの同社株取得にも関心

地面師事件の舞台となった西五反田の旅館跡地
地面師事件の舞台となった西五反田の旅館跡地

 積水ハウスが東京都品川区の土地に絡んだ不正取引で55億5000万円の損失を引き起こした問題について、海外の捜査当局が具体的に動き始めたことが編集部の取材で明らかになった。

 関係者によると、米連邦捜査局(FBI)は3月19日に積水ハウスの前会長の和田勇氏と、米国のESG(環境・社会・企業統治)投資ファンドが積水ハウスの新任取締役に推薦している斎藤誠弁護士の2人に電話で聞き取りをした。積水ハウスが詐欺グループに支払った63億円の資金の行方、なぜ積水ハウスが資金の回収に動かなかったのかなどについて関心を持っているという。

 和田氏と斎藤弁護士らは1月、FBIなど捜査当局や、資金決済をした三菱UFJ銀行などに対して、積水ハウスの不正取引の損失について、不審な問題点を調査するよう書面を送っており、FBIの聞き取りは要請に対応したものとみられる。

 関係者によると、FBIはこのほかに三菱UFJフィナンシャル・グループが積水ハウスの株式を3月に追加取得した件についても、関心を示しているという。同グループは積水ハウスの株式を9日に748万株取得した。ブルームバーグによると、持ち株比率は7・34%から8・5%に上昇した。

 株式取得のタイミングは新型コロナウイルスによる株式市場暴落の局面だった。加えて、積水ハウスは3月6日、都内で記者会見し、米投資ファンドらが主張する取締役交代などの株主提案に反対意見を表明したばかりだった。積水ハウスの株価は6日と9日の2営業日間で10%下落した。米国の金融市場の専門家は三菱UFJの株式追加取得について「新型コロナウイルスで暴落が続く局面での取得は疑問だ」と話す。

 三菱UFJ銀行の広報部は、追加の株式取得の理由について、グループ会社である「三菱UFJモルガン・スタンレー証券による商品有価証券としての取得」と説明している。

マネロンを問題視

 また、米投資ファンドらは詐欺グループの資金決算について、「マネーロンダリング(資金洗浄)の兆候がある」として問題視している。和田氏や斎藤弁護士らは積水ハウスの現経営陣のほか、資金決済をした三菱UFJ銀行にも問題があると主張している。

 三菱UFJ銀行がなぜ詐欺にかかわる不自然な資金の流れをチェックできなかったのか。1月に和田、斎藤氏らが送った書面では「この不正取引はマネーロンダリングの兆しがあり、北朝鮮に関わりのある犯罪組織、テロリストに関わっている可能性がある」と指摘している。。

 これに対して、三菱UFJフィナンシャル・グループは3月24日付けで、「犯罪による収益の移転防止に関する法律等に照らしても、金融機関としての責任を全うしなかったと評価される事象はなかったと認識している」と回答した。

 和田氏と米投資ファンドは、積水ハウスのガバナンス(企業統治)改善や取締役就任を要求しており、4月23日の株主総会に向けて、委任状争奪(プロキシファイト)に動き出している。現経営陣が事前に土地売買の問題点を知りながらも取引を進めたことや、問題取引についての情報開示が限定的なことを挙げ、企業価値や株主利益にマイナスと指摘。現在の取締役に代わり、和田氏や斎藤氏を含む新たな取締役候補を提案している。これに対し、積水ハウスは不正取引は存在しないと主張し、提案された取締役候補についても知識や経験が乏しく適切な構成ではないとして、全面対決の方針を打ち出している。

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