マーケット・金融

デジタル人民元「試験運用開始」の衝撃=立沢賢一(元HSBC証券会社社長、京都橘大学客員教授、実業家)

デジタル人民元の実用化を急ぐ中国人民銀行=中国・北京で2019年11月12日午前、赤間清広撮影
デジタル人民元の実用化を急ぐ中国人民銀行=中国・北京で2019年11月12日午前、赤間清広撮影

現在の世界は米中覇権戦争の真っ只中にあります。

中国がデジタル人民元を積極的に推進しているのは、人民の生活の利便性改善の目的よりも戦略的目的があるからです。

新型コロナショックで一時期停戦状態でしたが、米国と中国は2018年から覇権戦争を開始し、現在はその渦中にあるのです。実弾こそ飛び交ってはいませんから忘れがちですが、それ以外はほぼ戦時状態と言っても過言ではありません。

第二次世界大戦後、英国からバトンを受け取り、覇権国家となった米国の自国通貨である米ドルは世界の基軸通貨となりました。ユーロは米ドル覇権に挑戦する意図を持って創造され、EUの発足後ユーロが決済通貨としての流通量で米ドルを超えた時期もありました。ところがギリシャショックを契機にユーロの勢いは無残なまでに意気消沈してしまいました。ユーロが石油決済通貨として利用され始めた一時期には米ドルの信認が揺らぎかけましたが、ユーロ自滅の恩恵で再び米ドルの威力は強まったのです。

中国の人民元はハードカレンシーとしての信用においては基軸通貨である米ドルと真っ向勝負しても勝てる筈がありません。賢い中国共産党首脳部は米国と同じ土俵上で負け戦をするわけがありません。ですからデジタル通貨にやや後ろ向きだった米国の姿勢を突いて、中国はデジタル人民元を早急に普及させることで、自分たちに有利な別の土俵での通貨戦争の準備に入ろうとしているのです。スピード感がかなり早いのは正にこの理由によるものと考えられます。

デジタル人民元という武器でデジタル通貨市場を制し、米中覇権戦争の通貨戦争部門で中国は米国を凌駕しようと企てているのです。

立沢賢一(たつざわ・けんいち)

元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。

Youtubeチャンネル https://www.youtube.com/channel/UCgflC7hIggSJnEZH4FMTxGQ/

投資家サロン https://www.kenichi-tatsuzawa.com/neic

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

8月9日・16日合併号

世界経済 ’22年下期総予測第1部 世界経済&国際政治14 米国は景気後退「回避」も 世界が差し掛かる大転機 ■斎藤 信世/白鳥 達哉17 米ドル高 20年ぶり高値の「ドル指数」 特徴的な非資源国の通貨安 ■野地 慎18 米長短金利の逆転 過去6回はすべて景気後退 発生から平均で1年半後 ■市川 雅 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事