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デジタル人民元「試験運用開始」の衝撃=立沢賢一(元HSBC証券会社社長、京都橘大学客員教授、実業家)
現在の世界は米中覇権戦争の真っ只中にあります。
中国がデジタル人民元を積極的に推進しているのは、人民の生活の利便性改善の目的よりも戦略的目的があるからです。
新型コロナショックで一時期停戦状態でしたが、米国と中国は2018年から覇権戦争を開始し、現在はその渦中にあるのです。実弾こそ飛び交ってはいませんから忘れがちですが、それ以外はほぼ戦時状態と言っても過言ではありません。
第二次世界大戦後、英国からバトンを受け取り、覇権国家となった米国の自国通貨である米ドルは世界の基軸通貨となりました。ユーロは米ドル覇権に挑戦する意図を持って創造され、EUの発足後ユーロが決済通貨としての流通量で米ドルを超えた時期もありました。ところがギリシャショックを契機にユーロの勢いは無残なまでに意気消沈してしまいました。ユーロが石油決済通貨として利用され始めた一時期には米ドルの信認が揺らぎかけましたが、ユーロ自滅の恩恵で再び米ドルの威力は強まったのです。
中国の人民元はハードカレンシーとしての信用においては基軸通貨である米ドルと真っ向勝負しても勝てる筈がありません。賢い中国共産党首脳部は米国と同じ土俵上で負け戦をするわけがありません。ですからデジタル通貨にやや後ろ向きだった米国の姿勢を突いて、中国はデジタル人民元を早急に普及させることで、自分たちに有利な別の土俵での通貨戦争の準備に入ろうとしているのです。スピード感がかなり早いのは正にこの理由によるものと考えられます。
デジタル人民元という武器でデジタル通貨市場を制し、米中覇権戦争の通貨戦争部門で中国は米国を凌駕しようと企てているのです。
立沢賢一(たつざわ・けんいち)
元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。
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