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経済・企業

コロナ後には「V字回復」と「銀行解体」が待っている=北尾吉孝(SBIホールディングス社長)

SBIホールディングスの北尾吉孝社長
SBIホールディングスの北尾吉孝社長

 私はコロナショックの局面はチャンスだと思っている。危機として意識したことはない。なぜならばこれは戦争や震災とは根本的に違うからだ。過去の戦争は生産能力が破壊されてきた。一方でコロナは目に見えない敵ではあるが、生産設備は破壊されていない。終息までに1、2年かかるかもしれないが、人類の英知は必ず短期間でワクチンを作る。もちろん景気は一時的には悪くなるが、回復する過程で新しい産業が必ず出てくる。新しく伸びる企業も出てくる。

お粗末だった医療統計

 今回、日本は統計データの取り方や集積して分析するといったことがいかにお粗末か分かった。特に医療統計におけるサイエンティフィックなデータの正確な収集やITを活用した解析ができていない。逆に言えばこうした事業はこれから伸びることが期待される。

 中国に過度に依存したサプライチェーンの変革も必要だ。これがばく大な需要を生む。日本にも、今回品不足になっているような製品の工場を建てないといけない。そうすれば雇用も生まれる。この大きな変化の中で人の移動も行われる。景気低迷で雇用が一時的に減っていくのはやむを得ない。でもこれはすぐに回復する。生産能力が落ちていないわけだから。新しい原材料の調達先や新しい供給先もでき、日本が生産を止めていた製造が復活するといった動きが当然出てくる。

ひふみ投信を買収したワケ

 もう一つ今回の局面でありがたいことは、アセットの値段が全部安くなったことだ。コロナ前、ベンチャー企業の株価はピークだった。公開前でも値段はどんどんつり上がっていた。今はITバブルがはじけたような状況。安く買えば投資の成功確率は高くなり、パフォーマンスの向上も期待できる。 我々はこれからM&A(合併・買収)をアグレッシブにやっていく。ひふみ投信の運用を行うレオス・キャピタルワークスを買収したのもその一環だ。レオス・キャピタルワークスの藤野英人社長には優良な投資先を見つける目利き力がある。運用力の強化という観点から買収した。

金融変革はオープン・アライアンスで

 今まではオープン・イノベーションという概念が使われてきた。自社だけで革新的な研究開発はとても無理だから、いろいろなところで一緒にさまざまな知恵や技術を結集していきましょうということだ。

 私はこれからの事業では「オープン・アライアンス」という考え方が大切だと思っている。つまり、さまざまな業態にわたる多くの企業や企業グループと提携し、ウィンウィンの関係を具現化することだ。こうした提携により、時には1社だけでは到達困難な高みに到達することができる。

銀行解体とネオバンク

 例えば銀行業の分野で私は「ネオバンク」ということを全従業員に常に言っている。銀行の持っている機能をアンバンドル(解体)してパートナー企業に黒衣として提供する戦略で、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)連携を通じてさまざまなフィンテックベンチャーが有するサービスを当社の顧客が利用できるようにすることだ。 銀行の預金・決済・融資というファンクションは大事だが銀行そのものは要らないというのが今の考え方だ。SBIグループの銀行は300以上の銀行サービスでAPIを開放している。デジタルトランスフォーメーション(デジタル化による変革)で急成長したシンガポールのDBS銀行もそうやって成長していった。

 私は20年前から「ネットワーク価値の提供」と言ってきた。家を買うと住宅ローンのニーズが派生する、家を持つことで火災保険や生命保険のニーズも出てくる。不動産の情報も必要だ。引っ越しサービスの情報も必要だ。こうしたものを全てネットワークとして提供していく。

 総合スーパーとして成功したダイエーは価格訴求の時代に活躍した。値段が安ければ買う。セブン-イレブンの時代は価値の訴求。価値があるものなら少々高くても買う。私はその後にネットワーク価値を訴求する時代が来ると言ってきた。それがますますこれから広がっていく。

 我々はいろいろな機能の集合体として、顧客が要求するような全体的なサービスを提供する。全ての派生需要に応える商品やサービスを提供できる体制を、オープン・アライアンスを通じて作ろうとしている。すべての顧客に最大限のベネフィット(利便性)を感じてもらえるような総合的なサービスを提供していく。

 三井住友フィナンシャルグループと提携を決めたのは、そうしたビジネスを展開していく上で最良のオープン・アライアンスにつながると考えたからだ。太田純社長は決断力、判断力に優れた方で、これからの我々のアライアンスの進化が楽しみだ。

(構成=桑子かつ代・編集部)

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