週刊エコノミスト Onlineコレキヨ

小説 高橋是清 第102話 日比谷焼討事件=板谷敏彦

    (前号まで)

     ポーツマス講和会議は大詰めを迎えた。日本は賠償金獲得を断念、失望の声が高まる一方で、欧米メディアや金融市場は日本が譲歩して戦争を止めたと評価した。

     明治38(1905)年8月末。

     賠償金を取れなかったポーツマス講和条約は日本の外交上の大失敗である。

     当初欧米メディアの間ではこう評された。しかし、しばらくして落ち着きを取り戻すと、むしろ日本が譲歩して戦争を終わらせたことが評価された。間抜けな日本ではなく無駄な流血と出費を止めた賢明な日本というイメージが醸成され、金融市場では日本公債が再評価され始めたのだった。

     しかし日本の、売らんがためのメディアやそれを読んだ大衆の間ではそうはいかなかった。怒りや不満こそが共感を呼ぶ。

     当時の有力紙、『万朝報(よろずちょうほう)』はこう報じた。

    残り2365文字(全文2714文字)

    週刊エコノミスト

    週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
    有料会員になると、続きをお読みいただけます。

    ・会員限定の有料記事が読み放題
    ・1989年からの誌面掲載記事検索
    ・デジタル紙面で過去8号分のバックナンバーが読める

    通常価格 月額2,040円(税込)

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    8月11・18日合併号

    2020年後半 日本・世界経済大展望第1部16 「沈没」する自動車大国 苦境・群馬が暗示する近未来 ■神崎 修一/柳沢 亮/加藤 結花19 「トヨタ超え」テスラ、三つの理由 ■中西 孝樹20 コロナワクチン開発 「実用化まで1年半」でも野心的 ■近内 健22 米大統領選 3項目でバイデン氏が優勢 ■ [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事

    ザ・マーケット