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米国は「香港ドルのドルペッグ解除」をもって中国経済の息の根を止めるのか=立沢賢一
金融センターとしての香港は今後どうなるのか?
国家安全維持法第44条では、今後は香港の法廷では、「中国政府の意にかなった判決」を強要されることが謳われています。また、第44条の末尾には、意にそぐわない裁判官をクビにする条項まで付加されているのです。
第44条の規定は「司法の独立」の問題を超えて、香港経済に影響してくる可能性があります。
これまでは「司法の独立」が保証されていたからこそ、世界の投資家は安心して、香港に投資していました。
「司法の独立」を喪失してしまったことで、香港の国際金融センターとしての魅力は、無くなってしまったとも言えます。自由な金融取引ができなければ、金融センターとしての香港の未来は、もはや短期的には無いも同然なのです。
実際、2020年の世界金融センターランキングでは、昨年まで3位だった香港が3つも順位を落とし6位となりました。
香港金融市場では今、人民元決済や中国株取引の金融センターとしての役割が急速に不透明化しています。
香港の株式市場には米国市場から追い出された中国企業が上場していますが、中国による統制強化を懸念し、資金流出が加速した場合、香港金融市場が混乱する可能性があります。
「香港の中国化」が進むことは、国際金融センターとしての香港の地位を低下させると思言っても過言ではありません。
それが現実のものとなれば、中国企業の海外からの資金調達や海外金融機関の対中投資の双方に大きな打撃となり、中国と他の主要国の間での資金の流れを縮小させてしまうでしょう。
香港は中国と海外との間で流れる資金のハブなのですが、そのハブ機能が低下して、双方向の資金の流れが細ってしまえば、世界経済にも打撃を与えます。
貿易決済通貨としての香港ドルの役割はどうなる?
香港ドルは米ドルペッグ(米ドル相場と連動)されており、これが香港の金融インフラを支えています。
米国がドル決済で国際金融機関に制約をかければ、香港の金融経済はまったく機能しなくなり没落することが予想されます。
そして香港の輸出ハブとしての魅力がなくなってしまい、中国本土の国力衰退にもつながる可能性は高いものと思われます。
ドルペッグが廃止されることで香港ドルの信用が失われてしまいますと、香港ドルの暴落は免れないでしょう。7月14日トランプ大統領により署名され成立した「香港自治法」では基軸通貨であるドルの封じ込め作戦が可能にする内容が盛り込まれています。
米国はドルという世界最強通貨が自国通貨なので、香港の生殺与奪の権を握っているとも言え、その気になれば息の根をいつでも止められるのです。
立沢賢一(たつざわ・けんいち)
元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。
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