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「メールだけで処罰」「日本人も対象」香港国家安全維持法がもたらすディストピアの悪夢=立沢賢一
香港国家安全維持法で一体何が可能になるのか?
国家安全維持法の取り締まり対象は、①「国家統一を破壊する行為(国家分裂罪)」② 「国家を転覆する行為」、③ 「テロ活動」、④ 「外国、海外勢力との結託」の4つです。
① 分裂罪は第20条で香港や中国と共に、「いかなる地方であっても中華人民共和国から分離させること」が対象となっています。これは台湾やウイグルなどの分離独立運動も対象になると思われます。
② 転覆罪は第22条で「中華人民共和国の根本制度を転覆し破壊すること」「政権機関を転覆すること」「法律に基づく履行機能を重大に干渉し、妨害し、破壊すること」などとされています。拡大解釈によって幅広い行為を取り締まることが可能です。
③ テロ活動は第24条で「人に対する激しい暴力」「交通機関、交通施設、電力設備、ガス設備又はその他の燃焼し爆発しやすい設備を破壊すること」などと書かれています。
内容的にテロ行為というよりも、過激なデモの取り締まり規定として存在しているように見受けられます。
問題は、「組織し、計画し、実施し又は参加」「扇動し、協力し、教唆し、金銭又はその他の財物をもって他人を援助」のいずれも犯罪とされている点です。
つまり、実際の行為がなくても、相談したり、メールを送ったり、金銭支援をするだけで取り締まりの対象となってしまいます。
これでは民主化運動家もその支援者もまったく動きようがありません。
④ 第34条では「永住権を有さない者が本法の規定する犯罪を実施した場合は、独立して適用又は国外追放を付加して適用することができる」としています。
つまり、民主化運動にかかわった外国人をも取り締まりの対象となるのです。
例えば、日本の書店で普通に売られている反中の本などを持って香港に入ったりしたら、逮捕される可能性すらあります。
第38条では「永住者の身分を有さない者が香港特別行政区以外で香港特別行政区に対して本法に規定する犯罪を実施した場合、本法を適用する。」
つまり、外国人が香港において違反行為をした場合はもちろん、香港以外の場所であってもこの法律は適用されるのです。
国家安全維持法は域外適用する法律で、属地主義ではありません。今は有り得ませんが、たとえ地球外に居ても、違反すれば逮捕されるのです。
この法律はまるで地球のみならず、宇宙全体をも中国共産党の支配下だと言っているが如き条文と言えます。
現在、香港と犯罪者の引渡し条約を結んでいるのは、オーストラリア、カナダ、チェコ共和国、フィンランド、ドイツ、インド、インドネシア、アイルランド、韓国、マレーシア、オランダ、ニュージーランド、フィリピン、ポルトガル、シンガポール、南アフリカ、スリランカ、イギリス、アメリカ、フランスの世界20カ国です。
これら条約締結国は中国との犯罪者引渡し条約を大至急停止しなければ危険であると考えられます。7月3日にカナダが、香港との犯罪人引渡し条約を停止し、7月21日には、イギリスが当該条約を暫時停止しました。
また、第43条では捜査手法について、電子メールの閲覧、電話の盗聴なども可能としていますので、当局の捜査機関はあらゆる手段を使って日本を含めた海外からの情報を入手しようとするものと思われます。
これら国家安全法の条文から解釈できることは、もし外国人が海外から香港を支援するための送金や運動を支持するメールなどを送っていた場合、香港に足を踏み入れた途端に拘束される可能性があるということです。
中国本土で中国政府の批判を言いたい時は、左右を見て誰もいないことを確かめてから小声で囁くといいますが、香港のレストランやカフェでも、あたかも中国本土のような光景をこれから目にすることになるのでしょう。
立沢賢一(たつざわ・けんいち)
元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。
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