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なぜ「1国2制度」ではダメなのか 中国共産党が恐れる「香港の憲法=香港基本法」の驚くべき中身=立沢賢一
香港基本法=香港の憲法に隠された意図
1997年の中国返還後の政治・経済体制を定めた「香港基本法」と呼ばれる憲法に相当する法律が香港にはあります。それは香港の「一国二制度」を担保するものです。
「香港基本法」の大きな特徴は将来的な中国の民主化を期待する英国と、香港の中国化を望む中国共産党の両方の思惑が混じり合って反映されていることです。
中国共産党政府は「香港基本法」を反故してまで今、「香港国家安全維持法」の導入を強行したのでしょうか?
香港基本法第23条問題とは?
かつて、中国本土から追放された法輪功学習者や、文化大革命、天安門事件で迫害された人々は香港に渡り、(1) 民主主義 (2) 自由 (3) 中国共産党の不正を香港市民に伝えていました。香港返還後、実は中国共産党にとって、ネガティブな情報が香港から広東地方へ波及し脅威となるのが不安の源でした。
香港基本法第23条では、中国政府に対する反逆、分離、扇動、そして転覆を禁止する「国家安全法」を制定することが定められています。つまり、香港基本法第23条は 香港における反体制活動を取り締まるための条文です。
香港市民はこれに対して様々な自由が幅広く制限される恐れがあるとして懸念を表明していました。そのこともあり、香港返還からこれまで、 第23条を具体的に実施するための法令は制定されていなかったのです。
香港特別行政区立法会( 通称 香港立法会)は、長年、同法の導入を試みてきましたが、表現の自由や報道の自由などの市民の権利を侵害するものだとして市民の反対が激しく、立法化することが出来ませんでした。
2003年7月1日には、香港立法会で国家安全法の施行の採決が間近となり、民主党を中心とする民主派の政党及び団体を中心とした 参加者50万人以上に及ぶ大規模デモが発生しました。そして、デモが功を奏し、第23条の立法化問題はいったん棚上げとなりました。
2018年に、中国共産党は第23条に基づく国家安全条例を香港に制定するように再び強く求めました。
ですが、林鄭月娥行政長官は国家安全条例制定より先に、まずはハードルが低めの逃亡犯条例改正を試みようとしたのです。
ところが、逃亡犯条例改正に反対する香港デモが起き、結果的に反中運動にまで進展してしまいました。
これにより、香港政府に国家安全条例を制定する能力がないと判断した中国共産党は、一国二制度を意図的に無視し、国家安全条例と類似の香港国家安全維持法を、香港立法会を関与させずに施行したというのが2020年6月30日の出来事です。
立沢賢一(たつざわ・けんいち)
元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。
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