教養・歴史アートな時間

舞台 歌舞伎座 十月大歌舞伎 梶原平三誉石切=小玉祥子

梶原平三景時を演じる片岡仁左衛門(2004年12月南座) 撮影/福田尚武
梶原平三景時を演じる片岡仁左衛門(2004年12月南座) 撮影/福田尚武

人気の「源平の戦い」より敵に心寄せる武将のさみしさも

 歌舞伎には「源平の戦い」を題材に扱った作品が数多くある。10月の東京・歌舞伎座、第3部で上演される「梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)(石切梶原)」もそのひとつ。片岡仁左衛門が主人公の梶原平三役で、2月の同劇場以来、久々に舞台出演する。

「やっと舞台に立てるというのが今の心境です。役者はライブ、今現在を生で見ていただくのが最高の幸せで、それを実現できるのは本当にありがたいです」と思いを語る。

 自粛期間中は「勧進帳」の全役をひとりで語る自主稽古(げいこ)や足腰の鍛錬のためのウオーキングをして過ごしたという。

 享保15(1730)年に大坂・竹本座で「三浦大助紅梅靮(みうらのおおすけこうばいたづな)」の題名で人形浄瑠璃として初演され、同年に歌舞伎化された。人気となったのが、全五段の三段目のクライマックスで、今回も上演される「石切梶原」と通称される部分だ。

 梶原は平家方の武将でありながら、石橋山の合戦で挙兵して敗れた源頼朝をひそかに助けていた。

 鎌倉・鶴ケ岡(鶴岡)八幡宮の社頭で梶原は大庭三郎・俣野(またの)五郎兄弟と出会う。そこに六郎太夫(ろくろだゆう)と娘の梢が大庭に刀を売りに来る。刀の鑑定を大庭に依頼された梶原は名刀と見極めるが、俣野は切れ味を試すことを大庭にすすめる。

 死罪と定まった2人を梶原が試し切りにすることになるが、罪人は呑助という男ひとりしかいなかった。六郎太夫は梢を去らせ、自身を試し切りのもうひとりにしてくれと頼み、戻った梢が止めてもきかない。梶原は刀を振るうが切られたのは呑助だけ。大庭兄弟が去った後、梶原は石の手水鉢(ちょうずばち)を切ってみせて名刀であることを示し、自分が刀を買おうと申し出る。梶原は六郎太夫の命を助けるため、わざと切り損じていた。

 梶原は矢をモチーフにした家紋を織り込んだ白の衣装も華やかな、さっそうとした「捌(さば)き役」と呼ばれる分別のある武将役。仁左衛門の初演は1978年の京都・南座。以来回数を重ねていたが、しばらく間が空き、今回は2004年12月の南座以来となる。

 刀の目利きをする場面、2人を重ねて試し切りをする「二つ胴」、手水鉢を真っ二つにする場面、さらには平家方に属しながら、源氏に思いを寄せる本心を明かす「物語」の場面など見せ場は多い。

「平家に付いているのに源氏に心を寄せている。だから死後に悪名を受ける覚悟をしています。華やかな中にちょっとさみしさを持つ役として演じます」

 中村歌六の六郎太夫、片岡孝太郎の梢、坂東弥十郎の大庭、市川男女蔵(おめぞう)の俣野の配役。

(小玉祥子・毎日新聞学芸部)

日時 10月27日(火)まで上演中(8日、19日は休演)

会場 歌舞伎座(東京都中央区銀座4-12-15)

問い合わせ チケットホン松竹

0570-000-489(ナビダイヤル)(10時~17時)


 新型コロナウイルスの影響で、映画や舞台の延期、中止が相次いでいます。本欄はいずれも事前情報に基づくもので、本誌発売時に変更になっている可能性があることをご了承ください。

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