舞台 歌舞伎座 十月大歌舞伎 梶原平三誉石切=小玉祥子
人気の「源平の戦い」より敵に心寄せる武将のさみしさも
歌舞伎には「源平の戦い」を題材に扱った作品が数多くある。10月の東京・歌舞伎座、第3部で上演される「梶原平三誉石切(かじわらへいぞうほまれのいしきり)(石切梶原)」もそのひとつ。片岡仁左衛門が主人公の梶原平三役で、2月の同劇場以来、久々に舞台出演する。
「やっと舞台に立てるというのが今の心境です。役者はライブ、今現在を生で見ていただくのが最高の幸せで、それを実現できるのは本当にありがたいです」と思いを語る。
自粛期間中は「勧進帳」の全役をひとりで語る自主稽古(げいこ)や足腰の鍛錬のためのウオーキングをして過ごしたという。
享保15(1730)年に大坂・竹本座で「三浦大助紅梅靮(みうらのおおすけこうばいたづな)」の題名で人形浄瑠璃として初演され、同年に歌舞伎化された。人気となったのが、全五段の三段目のクライマックスで、今回も上演される「石切梶原」と通称される部分だ。
梶原は平家方の武将でありながら、石橋山の合戦で挙兵して敗れた源頼朝をひそかに助けていた。
鎌倉・鶴ケ岡(鶴岡)八幡宮の社頭で梶原は大庭三郎・俣野(またの)五郎兄弟と出会う。そこに六郎太夫(ろくろだゆう)と娘の梢が大庭に刀を売りに来る。刀の鑑定を大庭に依頼された梶原は名刀と見極めるが、俣野は切れ味を試すことを大庭にすすめる。
死罪と定まった2人を梶原が試し切りにすることになるが、罪人は呑助という男ひとりしかいなかった。六郎太夫は梢を去らせ、自身を試し切りのもうひとりにしてくれと頼み、戻った梢が止めてもきかない。梶原は刀を振るうが切られたのは呑助だけ。大庭兄弟が去った後、梶原は石の手水鉢(ちょうずばち)を切ってみせて名刀であることを示し、自分が刀を買おうと申し出る。梶原は六郎太夫の命を助けるため、わざと切り損じていた。
梶原は矢をモチーフにした家紋を織り込んだ白の衣装も華やかな、さっそうとした「捌(さば)き役」と呼ばれる分別のある武将役。仁左衛門の初演は1978年の京都・南座。以来回数を重ねていたが、しばらく間が空き、今回は2004年12月の南座以来となる。
刀の目利きをする場面、2人を重ねて試し切りをする「二つ胴」、手水鉢を真っ二つにする場面、さらには平家方に属しながら、源氏に思いを寄せる本心を明かす「物語」の場面など見せ場は多い。
「平家に付いているのに源氏に心を寄せている。だから死後に悪名を受ける覚悟をしています。華やかな中にちょっとさみしさを持つ役として演じます」
中村歌六の六郎太夫、片岡孝太郎の梢、坂東弥十郎の大庭、市川男女蔵(おめぞう)の俣野の配役。
(小玉祥子・毎日新聞学芸部)
日時 10月27日(火)まで上演中(8日、19日は休演)
会場 歌舞伎座(東京都中央区銀座4-12-15)
問い合わせ チケットホン松竹
0570-000-489(ナビダイヤル)(10時~17時)
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