投資・運用 考えない投資生活
リーマンショック、コロナショック、政府のデフォルト……先の読めない時代でも「暴落」に負けないための「誰でもできる鉄の3箇条」
コロナウイルスの感染第1波時には1万6000円台をつけた日経平均は、その後大きく反発、特にこの1カ月ほどで約3000円も値上がりし、今は2万6000円を大きく超えて推移しています(2020年12月3日現在)。
米国市場でも同様の株高が見られますが、これらはコロナ対策による緩和マネーが流れこんだ結果であって、いずれ調整売りの局面や「暴落」が来るという予想もされています。
「株高」だけを見れば株式投資に手を出したくなりますが、「いずれ暴落する」と思うとどうしてもその手がすくんでしまうもの。
『お金の不安から一生自由になれる 考えない投資生活』(飛鳥新社)を上梓したばかりのファイナンシャルスタンダード株式会社代表、福田猛氏が、「投資初心者に特におすすめ」な「暴落リスクが恐くなくなる」投資のコツを伝授します。
個別株と比べ投資信託には「絶対的な安心感」がある?
投資信託は個別株の投資よりも安全な点があります。
それは、紙くずになる可能性が限りなくゼロに近いということ。
日本は国が大企業を倒産させないと言われていますが、過去にJALは会社更生法を適用して破綻し、株価がゼロになってまさに株券は紙くずになりました。
かつては国営企業だったので、「まさか破綻しないだろう」と思っていたら、そのまさかが起きたのです。
今回のコロナショックでも、大手アパレルメーカーが倒産するなど、予想外のことが起きているように、いつどの企業が倒産するかわかりません。
それでも投資信託はひとつの企業が倒産しても他の数十、数百の銘柄でカバーできるので、紙くずになる可能性はほとんどないのです。
それに、投資信託はたとえ販売会社や運用会社、信託財産を管理している信託銀行が破綻しても、投資家が預けたお金は、投資額にかかわらず守られるようになっています。
個別株がジェットコースターだとしたら、投資信託は登山鉄道のようなものです。
ジェットコースターは乗っていたら生きた心地はしませんが、登山鉄道はまわりの景色を眺めながら、旅を楽しめます。
ただ、私は個別株の投資を全否定しているわけではありません。
投資信託の分とは別に資金を用意して、なくなっても生活に影響がないように投資したほうがいいと思います。
いわゆる「遊び金」でやるべきです。
「かぼちゃの馬車」で大打撃、スルガ銀行もかつては「優良株」
スルガ銀行の株は、一時期は大人気の投資対象でした。
スルガ銀行は法人に融資する従来の銀行ビジネスから方向転換し、個人向けの融資を中心に行っていました。
趣味のロードバイクや楽器購入をサポートするためのローンや、シングルマザー向けの住宅ローンもあり、個性的な商品で注目を集めていました。
疑問を挟む余地がない優良企業だと、メディアも信じていたのです。
だから、多くの投資家がスルガ銀行の株を買って、株価はそれこそうなぎ上りでした。
チャートをご覧ください。
それが、「かぼちゃの馬車」の不正融資問題が明るみに出て、一気に社会的信用を失ったのは、皆さんもご存じでしょう。
これは女性専用のシェアハウス「かぼちゃの馬車」を投資用不動産として販売していた事業者が、実際にはあり得ない高利回りを謳ってオーナーを募集していた事件です。
その事業者が破綻したときに、オーナーたちには返済能力がないのに、書類を改ざんしてローンを組ませていたスルガ銀行の不正が発覚しました。
スルガ銀行の株価を見ると、「ここに投資していたらどうなっていたか」と冷や汗が出そうなほどの下げ幅です。
相場は読めないとお話しましたが、どの企業がどれぐらい信頼できるのかも、外にいる人からはなかなかわかりません。
個人投資家がその企業の本当の顔を知るのは、不祥事が起きたことが発覚してからではないでしょうか。
「勝ったり負けたり」ではなく「基本的にプラス」でやるべき
だから投資信託以上にあらゆるリスクを考えて準備をしておかないと、立ち直れないほどのダメージを受けてしまうかもしれません。
個別株投資は儲かったり損したりの世界ですが、世界の株式や債券に投資する投資信託は「プラスサムゲーム」だと言われています。
プラスサムゲームは、ゲームのプレイヤー全員が利益を出せる可能性があるゲームです。
つまり、全員が勝者になれるのです。
普通、ゲームは勝ち負けを競って遊ぶものなので、全員が勝者になれるゲームは基本的にありませんが、RPGゲームは唯一、プラスサムゲームと言えます。
オンラインゲームでRPGゲームを遊ぶプレイヤーは、ゲーム内で仲間を見つけてチームを作ります。
そのチームでメインで戦う人とサポートする人、ケガをしたメンバーを手当てする人など、役割分担をしてみんなで敵に向かっていきます。
そして、敵を倒したらみんなの報酬がアップされたりして、全員が勝者になれるのです。
投資信託の中でも地域や投資対象を限定した商品ではなく、世界中の株式または債券に分散する商品は、長期的に投資家に利益を出してきました。
一方で、ギャンブルや投機は「ゼロサムゲーム」と呼ばれ、運の要素や騙しあいなどがないと勝てないので、全員がハッピーにはなれません。
どうせなら、みんなが勝てる世界にいるほうがいいと思いませんか?
パニック時に心得ておくべき「鉄の3カ条」
コロナショックよりも前に、米中の貿易摩擦で株価が大きく下落した時期がありました。
そういう場面で、「下落相場は平均で20 カ月で戻る」とわかっていても、チャートがグングン下がっていく様子を見ていたら、さすがに心はざわつきます。
心が折れそうになったとき、自分にいつも言い聞かせている3カ条があります。
皆さんも、自分なりのルールを決めておくと、パニックになっても流されずに済むのではないかと思います。
1、目線を遠くに置く
暴落しているときは、どうしても「明日はもっと下がるかもしれない」「今日のうちに解約したほうが、損は小さくて済むんじゃないか」と、目先のことしか目に入らなくなります。
そうなったら、さらに悪い情報しか耳に入らなくなるので、こういうときほど目線を遠くに置くようにしています。
当たり前ではありますが、人は目に見えるものは見えて、目に見えないものは見えません。
テレビでは連日コロナに関する報道をしていて、証券会社の自分の口座を見て赤字になっていたら、目に見えない将来のゴールが考えられなくなります。
そういう場合、「そもそも何のために資産運用をしているんだっけ?」と自問して、本来の目的に立ち戻れるようにしています。
どうしても値動きが気になるのなら、投資関係のニュースをしばらく一切見ないようにして、物理的に距離を置くのもいいかもしれません。
2、投機に走らない
長年、投資の世界にいたら、コロナショックのように暴落したときは買うチャンスだというのはわかっています。
たとえば、3月に買った銘柄が、4月に急上昇して10万円儲かった。
嬉しくなって、もう1回やろうとなる。
そうこうするうちに、完全に短期思考になってしまい、暴落したら買い、急上昇したら売る、を繰り返すようになります。
正直、短期売買のほうが面白いのは確かです。
結果が早く出るし、大きな利益を得られるので、楽しいのは間違いありません。
しかし、投機は1回や2回成功しても、3回目、4回目は成功するとは限らず、むしろ失敗する確率が高いものです。
だから、こういうときこそ投機に走らないように自制する必要があります。
3、「明るい未来」のために「今を不幸」にしない
私は、そもそも「お金」とは自分がどう生きたいのか、何をしたいのかという目標や目的を実現するためのツールだと考えています。
たとえば、私だったら資産運用で世の中の多くの人に幸せになってもらいたいし、自分らしく生きてもらいたい。
そのために会社を運営していく資金が必要ですし、顧客の価値を高めるために自分が勉強するためのお金も不可欠です。
プライベートでは、妻と愛犬と暮らすためのお金ももちろん大切です。
それ以外はマイホームは持っていますが車は持っていませんし、多少お酒を飲む機会が多いくらいで、いたってシンプルな生活を送っています。
人間は経済活動をしているので、いろいろなものやサービスを利用したい場合、お金と交換する必要があります。お金はそのためのツールにすぎません。
極端な話、お金がなくなっても命まではなくならないので、命さえあればなんとか
なると思います。
資産運用はあくまでも手段であって、目的ではありません。
家族と健康に暮らしたい、老後に豊かな生活を送りたいという目的があり、それを実現するための手段として資産を運用する必要があるのだと、私は考えています。
気弱になって資産運用をやめたら、お金のためだけにやっているようなものです。
私はそういうときは、投資の世界の今までの歴史を再確認したり、ドル・コスト平均法はどのような効果があるものなのか、といった基本をもう一度確認します。
手前味噌かもしれませんが、私の書籍『考えない投資生活』を読み返すのも有効な手だと、本気で思っています。
そうすれば自分を信じて最初の計画通りに進めて行こうという気になれるのです。
福田猛(ふくだ・たけし)
資産形成コンサルタント。ファイナンシャルスタンダード代表取締役。一般社団法人ファイナンシャル・アドバイザー協会理事。
大手証券会社を経て、2012 年に起業。金融機関に属さない「IFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)」として、独立した立場でこれまで数千人の資産運用をサポート。
2015 年、楽天証券IFA サミットにて総合1 位と表彰される。
600 億円以上を預かる日本のトップIFA 法人となり、日本経済新聞や経済専門のテレビ番組、雑誌などの出演・取材・寄稿も多数。
著書に『投資信託 失敗の教訓』(プレジデント社)、『プロがこっそり教える資産運用のはじめかた』(毎日新聞出版)等がある。