テクノロジー 脱炭素革命
風力発電にデジタルの双子をつけて稼働率アップと人手不足解消を同時に達成したドイツの第4次産業革命のすごさ
ものづくりのデジタル化が進むドイツで、風力発電の分野でもそのコア技術である「デジタルツイン(双子)」の研究が進んでいる。これは、風力発電装置に設置されたIoTセンサーが、風速、風の方向、風車の羽根の回転速度だけでなく、振動や温度などの各種データを採取、故障を未然に察知。発電量の最適化と同時に、風車の稼働率を高めるのに役立つものだ。
ドイツ風力発電協会(BWE)によると、独国内には2019年時点で3万925基の風力発電装置が設置され、61・428ギガワットの発電容量がある。19年はドイツの総発電量の24・4%と、褐炭発電を抑え、発電源別でトップに立った。ドイツは今年7月4日、5日の両日、風と太陽光に恵まれ、総発電量の61%が風力を含む再生可能エネルギーで賄われた。
3万925基のうち、2万9456基は地上に、1469基は海上に設置されている。その多くは、人が近づくのが容易ではない場所に設置されており、デジタルツインによる監視と制御は、再生エネルギーの安定的な供給のために不可欠な要素技術と言える。
色で操業状態を表示
写真・下は、独連邦経済エネルギー省の「THE Wind IO Joint Project」のもと、当社がブレーメン大学、ユーリヒ総合研究機構などと開発した風力発電装置を制御する「ダッシュボード」を示している。色によって、表示される情報の種類が分けられている。具体的には、(1)赤色:風車の操業状態(羽根の回転速度、風に対する風車の角度、羽根の角度など)、(2)青色:風の状態(風力、風の方向、風速)、(3)灰色:日次、月次の発電量──などを示している。
3万を超える風力発電装置全てを人が監視するのは不可能なため、各風車は、これらの情報に基づき、AI(人工知能)が最適な発電量を得るように、羽根の向き、回転速度、羽根の角度を自動的に調整する。また、装置の振動や温度などのチェックを通じて実施する「予防・予測メンテナンス」は、特に、海上に設置された風車で有用となる。
ドイツでは11年以来、「インダストリー4・0(第4次産業革命)」を掲げ、製造部門のデジタル化を進めてきた。本誌7月14日号では、産業用ミキサーを製造する独Mixaco社が、当社のデジタルツイン技術を使い、「ミキサーの使用量に応じた課金事業」を展開していることを紹介した。最近では、木材やプラスチック部材のラミネート加工を行う独düspohl Maschinenbau社のラッピング装置に三菱電機のロボットが使われるなど、日本の製造業の間でも、独「インダストリー4・0」の技術を採用するところが増えていることも指摘したい。
(ロレンツ・グランラート CONTACT Software日本代表)
本誌初出見出し:風力発電に「デジタルの双子」 発電量最適化やメンテに威力=ロレンツ・グランラート