教養・歴史書評

『自立力を磨く お金と組織に依存しないで豊かに生きる』 評者・池内了

    著者 藤村靖之(非電化工房代表) 而立書房 1800円

    自給力、自活力、仲間力 企業に依存しない生き方伝授

     コロナ禍の蔓延(まんえん)で、ふと資本主義社会はこのままでは長続きしないだろうと思ってしまう。弱肉強食で貧富の格差はますます拡大し、いずれ破綻してしまうという不安感に捉われるからだ。だから、そのような事態になる前に企業社会に流されている自分から脱却して独り立ちしたいとは思う。しかし、そう簡単に実行できるとは思えないまま時間だけが過ぎ去っていく、そう悩む人もおられるのではないだろうか。

     そんな方々へ非電化製品を中心にした自立型・持続型の産業を提供し、栃木県那須町で工房を構えて多くの後継者を育てている著者からの「お金と組織に依存しないで豊かに生きる」ための実践提案集である。評者たる私がもう30年若ければ思い切って飛び込んだのに、と思う。

     著者は、お金と組織に依存しない生き方に不可欠な自立力として

    (1)『自給力』食べ物・住まい・エネルギーを自分で愉(たの)しくつくる力

    (2)『自活力』必要な現金は仕事を創って愉しく稼ぐ力

    (3)『仲間力』仲間をつくって協力し合って愉しく生きる力

    の三つの力こそ資本主義が破綻しても持続できる根本であるとする。いずれも「愉しく」とあるのは、単なる楽しくではなく、不快な心を抜きとって、心の底からたのしくという意味が込められている。だから愉しさの中身は、美味(おい)しいこと、ぬくもりのある人間関係、よい雰囲気、充足感があることなのである。

     そんなことが可能なのか、と疑問を持たれる方のために、本書で愉しく支出を減らし、愉しく自給率を高める極意を伝授している。その要点は、月3万円のビジネスを週2日以内で行う方策を考えて後は自由時間とし、その自由時間を利用して支出を減らし自給自足のための実践をするということである。

     例えば、物々交換したり、菜園で野菜を育てたり、中古品の再生をしたり、電気の契約電流を下げたり、シェアハウスを試みたり、雨水トイレに改造したりと、日常の「食べ物・住まい・エネルギー」のカテゴリーについて実践例がいくつも紹介されており、やれることはたくさんある。

     しかし、生き方を変えようとすると、孤独・貧困・病・常識という障害にぶつかることは必定である。それらを克服するのは仲間の存在で、情報の交換、助け合い、そして同士愛。仲間の力を利用するのも自立力を培う重要な要素と強調する。

     企業社会の桎梏(しっこく)から外れて生きる「愉しさ」についてアレコレ想像してみたことであった。

    (池内了・総合研究大学院大学名誉教授)


     藤村靖之(ふじむら・やすゆき) 1944年生まれ。大阪大学大学院基礎工学研究科物理系専攻博士課程修了。日本大学工学部客員教授。自立共生塾主宰。著書に『月3万円ビジネス』『愉しい非電化』など。

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