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2021年度大学入試 難関9国立大学で「現役合格率」が高い学校は? この10年間で伸びた学校は?

東大=筑波大付駒場、灘、聖光学院 京大=北野、東大寺学園、甲陽学院…

 大学進学で現役志向は今なお根強い。そこで注目されるのは、生徒の多くが現役で東大や京大などに多数合格する、難関大の現役合格が当たり前の学校だ。そんな学校は、一般的な学校とどこが違うのだろうか。探ってみた。

 まず、コロナ禍という受験生に逆風が吹く中で行われた2021年度入試(21年4月入学)は、例年とどのような違いがあったのだろうか。出願状況の特徴について、駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長に聞いてみた。

「コロナ禍での移動を嫌い、地方から都市部の大学への出願が減り、家に近く、学力も近い、ミニマムで実力に見合った出願が目立ちました。それでも、翌年の大学入試改革を嫌って、異常に現役志向が強まった20年度のような安全志向は見られませんでした」

コロナ禍も志願者微減にとどまった難関国立大入試

 21年度入試は、私立大を中心に難関大の志願者が減少したが、極端に難易度が低い大学に受験生が流れたわけではない。22年度入試に大規模な改革がないことから、コロナ禍でも極端な現役志向は見られないという。

 もちろん、このような入試状況にあっても、基調として現役志向は根強いものがある。安田教育研究所の安田理代表が、その背景について解説する。

「今の保護者世代は、何事も効率を重視する傾向にあり、子どもにも最短ルートで進学してもらいたいという気持ちが強い。こうした保護者の考えが影響していることから、子どもも現役で進学したいという思いが強くなるのでしょう」

 また、難関国立大の入試状況を振り返っておこう。実力などに見合った大学を目指す傾向が強まった21年度入試だが、難関大の志願者が大きく減少した私立大と対照的に、大学入学共通テストの平均点が昨年までの大学入試センター試験の平均点を上回ったこともあり、難関国立大の志願者は微減に留まった。

現役占有率=該当大学の現役合格者数÷卒業生数

 では、現役で多くの生徒が大学に合格している、生徒と保護者の期待に応えている学校はどこなのか。

 現役合格者が多い学校でも、卒業生全体に占める割合が低ければ、大学に現役進学できる可能性は低い。そのため、卒業生に対して現役合格者が占める割合を現役占有率とした。また、私立大は入試方式や日程が多様で重複合格がある。そのため、原則として1校しか合格できない国公立大の現役合格実績を指標とし、現役合格者数は旧七帝大(東大、京大、北海道大、東北大、名古屋大、大阪大、九州大)に東京工業大と一橋大を加えた、難関9国立大学の合計とした。

筑波大付駒場は4割が現役で東大に、京大は北野が首位

 こうした、厳しい入試状況において、東大の現役占有率が最も高いのは筑波大付駒場(43・8%)で、2位は灘(34・7%)、3位は聖光学院(30・0%)だった。3校ともに、卒業生の3割以上が東大に現役で合格している。現浪合わせた東大の総合格者ランキングは、開成が首位で筑波大付駒場は3位だ。しかし、現役占有率は開成(27・2%、4位)を大きく上回る。

「生徒を鍛えて難関大に合格させる学校とは次元が違う。一を聞いて十を知るような、地頭が良い生徒が入学していることから、安定して高い現役占有率となっているのです」(安田氏)

 灘と聖光学院も総合格者数は開成より少ないが、現役占有率は開成を上回る。ただ、上位3校の卒業生が160~230人なのに対し、開成は390人と多い。この点を考慮すれば、開成も現役占有率は高いと評価できよう。

 京大は公立の北野(19・2%)がトップで、卒業生の5人に1人が現役合格。かつては近畿圏の私立中高一貫校が上位に並んでいた。しかし、大阪府が11年に難関大合格に向けた文理学科を持つグローバルリーダーズハイスクール(GLHS)を10校指定した。

 その中の1校である北野は、1960年から70年代にかけて定位置だった京大合格者数ランキングでもトップに返り咲き、今回も4年連続の首位を守った。2位は僅差で東大寺学園(19・1%)、3位は甲陽学院(18・4%)となっている。

阪大は茨木、北大は札幌北、東北大は仙台第二、名大は刈谷、九大は大分上野丘

 大阪大もかつては私立一貫校がベスト3を占めていたが、2021年度は茨木(16・3%)、天王寺(12・7%)、長田(11・6%)の順となり、公立校が独占。茨木と天王寺はGLHSに指定されており、長田は、兵庫県が通学区を拡大したことから、優秀な生徒が集まる仕組みができた効果が大きい。

 北海道大は札幌北(30・7%)、東北大は仙台第二(21・9%)、名古屋大は刈谷(18・8%)と、大学所在府県の公立校がトップとなっている。

 そうした中で九州大は、地元福岡の筑紫丘(19・1%)を上回り、大分上野丘(19・7%)がトップ。高い現役占有率の要因について、21年度の進路指導主任教諭は言う。

「定年などでベテラン教員が中堅教員と入れ替わり、難関大合格のノウハウが希薄になる中、授業力向上に向けた場を数多く設けて教師力を引き継ぎ生徒に還元しました。理科や地歴にとられていた時間を少なくし英数に力を入れることで、教科バランスを改善。さらに第1志望を貫く指導に生徒がついてきてくれたことなどから、難関大の現役合格者が増えました」

 教師力の底上げとともに、九州大から大阪大、京大、東大と徐々に高い目標を生徒に持たせ、その合格者が増えていることから「難関9国立大現役合格者占有率ベスト50」でも17位(29・0%)に入っている。

難関9国立大合計の「現役合格率」1位は灘

 大分上野丘以外の難関9国立大への現役占有率についても見ていこう。

 トップは灘(48・1%)。ほぼ東大のみで2位の筑波大付駒場(45・6%)に対し、京大合格者の上積みがある分、上回った。それでも、大阪大の合格者が大幅に減少することで10年前の11年度に比べて現役占有率は9・4ポイント下がった。

「10年の間で医学部志向が強まったことが、大阪大の合格者が減少して、現役占有率が下がった要因でしょう」(塾関係者)

札幌南、北野、日比谷、横浜翠嵐は10年度で現役合格が大幅増

 筑波大付駒場も10年前より5・7ポイント下がる中、3位の札幌南(44・6%)は11・8ポイント上がっている。21年度の進路部長教諭が、現役占有率が高い理由を説明する。

「職業から逆算する一般的なキャリア教育とは異なり、1年次の学問研究などを通じて研究したい分野を選び、それが学べる大学を目指す指導をしています。研究したい分野がはっきりしているため、大学進学のモチベーションが高いのです。これまでの難関大合格実績の蓄積から、校内の実力テストの順位で受験大学の合格可能性がほぼ分かるため、生徒も教員も自信をもって受験大学を選ぶことができることも大きな要因です」

 札幌南は、地元の北海道大が減って東大や京大、大阪大などの合格者が増加。モチベーションアップの取り組みが奏功している。札幌南以外にも、公立トップ校で現役占有率が大きく上がる傾向が見られる。安田氏は言う。

「重点校の指定など、自治体の取り組みで公立校の現役合格実績が伸びている。特に日比谷(30・4%、13位)や北野(36・9%、8位)、横浜翠嵐(27・8%、23位)など、私立一貫校並みの受験指導をするトップ校に入れたいと考える保護者が増え、入学した生徒が結果を出すことで、現役合格の循環が生まれています」

 11年度より北野が18・0ポイント、日比谷が16・9ポイント、横浜翠嵐が20・2ポイントと、いずれも東大や京大の現役合格者数が増え、現役占有率が大きく上がっている。

県浦和、向陽、西京、藤島、水戸第一も2011年度より飛躍

 現役占有率が10年で10ポイント以上、上がっている公立校は多い。他には36位の浦和・県立(24・4%)、43位の向陽(23・5%)、47位の西京(23・1%)、48位の藤島(22・6%)、50位の水戸第一(22・0%)がある。

 現役占有率が大きく伸びる公立校が多い一方、ベスト10の大半は国立と私立の一貫校が占める。その一つ4位の聖光学院(39・6%)は、東京工業大の現役合格者が減少した分、東大にシフトすることで、10年前より現役占有率が5・8ポイントアップした。

「聖光学院は横浜に大手予備校がない時代に開校し、学校にいる間にきちんと面倒を見て、難関大合格者を輩出してきました。このことが意識の高い保護者に安心感を与え、優秀な生徒が集まる一因です」(安田氏)

私立はラ・サール、海城、渋谷教育学園渋谷が10ポイント以上の増

 6位の久留米大付設(38・7%)は13年に中学を共学化した効果もあり、京大の合格者が増えて4・4ポイントアップした。10位の西大和学園(33・7%)は1・6ポイントと上昇度は大きくないが、東大が大幅増と合格大学のレベルを上げながら現役占有率が上がっている。私立校で10ポイント以上伸びている学校には、18位のラ・サール(28・9%)、20位の海城(28・2%)、40位の渋谷教育学園渋谷(23・8%)がある。

 4月6日発売の「サンデー毎日4月18日号」には、2021年度大学入試関連で「全国3401高校 有名182大学合格者数」「難関9国立大 現役合格者占有率ベスト50」「現役合格者占有率 旧七帝大別ベスト3」も掲載しています。

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