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2021年大学入試:医学部合格者高校別ランキング 首位には14年連続で東海、2位に久留米大付設、3位はラ・サール…

コロナ禍で志願減に歯止め

 長らく減少が続いてきた国公立大医学部(医学科)の志願者が、2021年度入試(21年4月入学)は底を打った。国公立大医学部の人気が回復した背景とともに、合格実績が高い学校や、合格者数を伸ばしている要因を探った。

 コロナ禍で、厳しい医療現場のさまざまな情報に接した医学部志望者。その出願動向に注目が集まった21年度入試で、国公立大医学部の志願者が大きく減ることはなかった。駿台教育研究所進学情報事業部の石原賢一部長は言う。

「当初、コロナ禍で混乱した医療現場ですが、現在は対処法が分かってきています。そうした状況下で、新型コロナウイルスへの恐怖心より、医療従事者の頑張りから『自分もやってみたい』とプラスに捉える受験生もいたでしょう。経済状況の悪化で地方を中心に、就職への不安感から医学部志望者が増えていることもあり、医学部人気が戻ってきました」

 国公立大医学部の志願者は、大学生の好調な就職状況を背景として減少が続いてきた。しかし、駿台予備学校調べで21年度の志願者は2万1883人。前年度を100とした指数は99の微減ながら、前期のみの集計は7年ぶりの増で、志願者減に歯止めがかかった。 人気が回復傾向にある21年度の国公立大医学部の合格状況を、高校別に見ていこう。国公立大医学部医学科への合格者数ランキングに注目すると、まず、合格者数が最も多かったのは、14年連続で1位となる東海(93人)。名古屋大(30人)と名古屋市立大(12人)の合格者数ランキングは、定位置となるトップだった。

久留米大付設は昨年の5位から浮上

 2位は前年の合格者を25人上回り、5位から順位を上げた久留米大付設(90人)。進路指導部長教諭に合格者が大きく増えた要因について、聞いてみた。

「13年に中学を男女共学化し、入学時から医学部を志望する女子が増えてきたことが一因です。数学の教員が中心となり、英語や国語教員らとのチームワークで学力を引き上げたことも挙げられます。医学部志望者が多いことから、医学部受験が当たり前の環境にあり、一緒に頑張るという雰囲気が醸成された効果も大きいですね」

 同校は、九州大(26人)と防衛医科大学校(16人)の合格者数ランキングでトップ。長崎大(14人)、佐賀大(9人)、山口大(8人)、熊本大(6人)など、中国から九州地方の大学を中心に多数の合格者を輩出している。 3位は合格者が18人増で7位から上がったラ・サール(79人)。4位の洛南(72人)は、合格者が3人増えたが、前年の3位から順位を下げた。

公立校は5位に熊本、10位に札幌南と旭丘

 このように、上位に私立の中高一貫校が並ぶ中、公立校で熊本(5位、66人)が前年を21人上回り、14位から上がった。熊本大の合格者数は35人で合格者数ランキングトップとなり、同校の総合格者数の半数以上を占める。

 熊本以外の公立校では、10位に札幌南と旭丘(ともに52人)がランクイン。札幌南は北海道大(15人)と札幌医科大(25人)の合格者数ランキングトップ。旭丘は名古屋大(14人)の合格者が多い。17位の仙台第二(46人)は、東北大(14人)と山形大(19人)、21位の新潟(43人)は新潟大(23人)の合格者数ランキングでそれぞれトップになるなど、地元の医学部に強い伝統がランクインの要因になっている。

「現役合格率」首位は久留米大付設

 現役合格者占有率ランキング(国公立大医学部医学科への現役合格者数÷卒業生数)を見ると、1位は合格者数ランキングで2位に浮上した久留米大付設で29・9%。2位に北嶺(26・2%)が入った。同校の谷地田穣校長は言う。

「例年に比べて、飛び抜けてできる生徒が多い学年ではなかったが、教員と生徒の信頼関係が強く最後まで努力を続けた結果、東大・理Ⅲに現役で3人をはじめ、多くの合格者を出せました。頑張れた背景には、医師の講演会や実際の医療現場体験など、毎月のように医療に関するプログラムを実施することで、医師の仕事を具体的にイメージでき、志望が固まっていたことにあります」

「現役率」2位は北嶺、3位に桜蔭…

 現役占有率ランキングは、合格者数ランキング以上に一貫校が強い。北嶺以下は、桜蔭(19・7%)、大阪星光学院(16・5%)、ラ・サール(16・4%)、東海(15・2%)など14位までを一貫校が占める。「医学部合格実績が高い一貫校は、その積み重ねた経験から医学部合格に向けたさまざまなノウハウが蓄積され、卒業生からの情報が入りやすいという強みもあります。そうした学校には実績を頼りに、多くの医学部志望の生徒が入学してくることも大きい」(石原氏)

公立校のトップは札幌南

 公立校は卒業生数が多い分、現役占有率では不利な面もある。それでも、公立校の難関大合格実績が伸びた21年度入試の流れは、国公立大医学部も例外ではなく、ランクインした公立校は20年度の3校に対し、21年度は札幌南(15位、11・1%)、前橋・県立(25位、8・6%)、仙台第二(26位、8・6%)、熊本(29位、8・1%)、新潟(30位、7・9%)の5校に増えた。 国公立大医学部へのこだわりから、22年度入試は浪人生が増えそうだ。さらに、経済状況の悪化により、医学部志望者の増加が見込まれる。難化含みの22年度の国公立大医学部入試。合格校の地図がどのように書き換えられるか、注目される。

大学通信・井沢 秀

 4月13日発売の「サンデー毎日4月25日号」は、他に「国公立大 私立大 医学部合格者 高校別ランキング」「国公立大医学部に強い地域別高校ランキング」も掲載しています。

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