資源・エネルギー資源高 襲来!

原油・天然ガス サウジなど協調減産継続 ヘンリーハブは最高値記録=岩間剛一

    寒波によって米テキサス州のシェールオイル生産にも影響(Bloomberg)
    寒波によって米テキサス州のシェールオイル生産にも影響(Bloomberg)

     新型コロナウイルスの感染拡大から1年が経過し、今年に入ってからは原油価格が上昇基調にある。米国の原油指標価格であるWTI原油先物価格は、昨年4月には1バレル=20ドルを割り込んでいたが、今年3月11日には1バレル=66・02ドルへ上昇した。また、欧州市場の指標である北海ブレント原油価格も、3月8日に節目の1バレル=70ドルを超え、コロナ感染拡大前につけた2020年1月の水準に戻っている(図1)。

     21年に入ってからの原油価格上昇の要因は、需要面から見ると、ワクチン接種開始による経済活動の回復期待のほか、米バイデン政権が大規模な追加経済対策に乗り出し、世界経済の成長率引き上げの可能性が高まったことが大きい。中国でも21年1~2月の工業生産が、市場予想を上回る前年同期比35・1%増となり、石油需要が増加する見通しが強まっている。(資源高襲来!)

     一方、供給面でも、OPEC(石油輸出国機構)とロシアなど非OPEC加盟国による「OPECプラス」が、21年に入ってからも協調減産を維持している。3月4日のOPECプラスの会合でも、21年4月からロシアに日量13万バレル、カザフスタンに日量2万バレルの増加を認めただけで、日量690万バレルの協調減産を続けることを表明している。

     さらに、OPECの盟主サウジアラビアは、自主的に今年2、3月に実施した日量100万バレルの追加減産を4月以降も継続することを明らかにしており、自主減産を早い時期に縮小することには慎重な姿勢を示している。米エネルギー情報局(EIA)は、こうした需要面と供給面の要因により、国際石油需給は今年春以降も引き締まると見込んでいる(図2)。

    中国のLNG輸入増加

     これまでは原油価格が1バレル=50ドルを超えると、米国のシェールオイルの生産量が増加し、原油価格の上値を抑えていた。しかし、テキサス州に来襲した記録的な寒波により、石油生産施設やパイプラインが打撃を受けて生産が減少。世界的な脱石油の流れも相まって、シェールオイル生産企業の資金繰りは厳しくなっており、生産量が増加していない。

     天然ガス、LNG(液化天然ガス)は今冬、アジア、欧米諸国が記録的な寒波に見舞われ、暖房・発電需要が大幅に増加したことで、価格が歴史的な高値となった。米国の天然ガス価格(ルイジアナ州ヘンリーハブ渡し)は今年2月17日、瞬間的に百万BTU(英国熱量単位)当たり23・86ドルと史上最高値を記録した(図3)。

     さらに、中国は地球温暖化対策、大気汚染防止策としてLNG輸入を増加させており、すでに20年12月単月では世界最大のLNG輸入国である日本のLNG輸入量を抜いている。豪州のLNGプラント故障も重なったことで、今年1月13日には北東アジア地域のLNGスポット価格は百万BTU当たり32・50ドルと過去最高を記録し、LNGの調達難から日本は綱渡りの電力危機に直面した。

     毎年4月は北半球の気候が温和となり、暖房・発電用の石油、天然ガス需要が低下するため、原油、天然ガス価格も落ち着く。しかし、今年は春以降も原油、天然ガス、LNG価格のさらなる上昇が見込まれる要因が数多くある。まず、世界経済がコロナ禍からの回復の途上にあり、各国の積極的な財政出動も相まって、米国をはじめ大幅なプラス成長が見込まれる。これに伴い、石油・天然ガス需要も増加する可能性が高い。

    1バレル=70ドル超えも

     また、各国の金融緩和政策により、あふれかえったマネーが原油先物市場などに流入していることも、エネルギー価格全般の上昇に拍車を掛けている。世界的な脱化石燃料の流れの中、英蘭ロイヤル・ダッチ・シェルをはじめとした石油・天然ガス企業は、再生可能エネルギー投資を拡大し、石油・天然ガス開発投資を抑制している。石油・天然ガス供給が需要の伸びに追いつかず、恒常的に価格上昇圧力がかかっている。

     今後も米国のシェールオイルの生産量が低迷を続けると、WTI原油先物価格は1バレル=70ドルを超える動きとなろう。天然ガス、LNG価格も、夏場の冷房需要増加が見込まれるうえに、21年には中国が日本を抜いて世界最大のLNG輸入国になる可能性が高まっている。ヘンリーハブ渡しの天然ガス価格は夏場に向けて百万BTU当たり3ドル、北東アジアのLNGスポット価格は百万BTU当たり10ドルに上昇する可能性がある。

     原油価格、LNG価格の上昇は、ガソリン価格、電気料金などの末端価格の上昇を通じ、消費者の負担増につながる。日本でもガソリン価格の値上げが続いており、資源エネルギー庁によれば、3月22日時点のレギュラーガソリンの店頭小売価格は1リットル=149・7円と17週連続の値上がりとなった。また、石油化学製品の原料となるナフサ(粗製ガソリン)の価格も上昇しており、関連産業への価格転嫁も進んでいる。

     米テキサス州の石油精製・石油化学プラントの回復には、数カ月程度を要する見込みで、塩化ビニールなどの石油化学製品に幅広く影響が及ぶ。世界的な景気回復の中、石油製品、石油化学製品への需要増加に見合った供給が十分に増えないために、関連製品の価格上昇が逆に経済成長の足かせとなることも考えられる。

    (岩間剛一・和光大学経済経営学部教授)

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