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新たな価値創造に挑む大学改革のDXが始動 大学プレスセンター・ニュースダイジェスト

    「サンデー毎日5月9・16日合併号」表紙
    「サンデー毎日5月9・16日合併号」表紙

     コロナ禍を機に、自動運転や人工知能(AI)など次世代技術により、社会や暮らしのあり方を変革する「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が一気に加速した。9月にはデジタル庁の創設も予定されている。大学通信が運営するニュースリリースサイト「大学プレスセンター」では、2021年2月21日~3月20日までに配信したリリースのアクセス数を集計。今回はランキング上位の記事のうち、転換期にあるそうした大学の現場のニュースに着目した。

     文部科学省はポストコロナ時代を見据え、デジタル技術を取り入れた教育の先導的なモデルとなる取り組みを支援する「デジタルを活用した大学・高専教育高度化プラン」を公募した。そのうち、「学修者本位の教育の実現」に資する取り組みに選定されたのが、追手門学院大(大阪府茨木市)の「OIDAI DX推進計画」だ。関西の中規模私立大で唯一選ばれた(30位)。

     同大では主体的に学び、協働して問題解決にあたる独自の学修スタイルと、ICT(情報通信技術)を含め教育効果を最大化するさまざまな手法を2018年から実践してきた。それらの成果を土台に、DXでさらなる強化を図り、学修者である学生本位の教育を進めていく考えだ。

     計画では超高速の10㌐通信が可能な情報基盤を整備し、授業ごとに対面とオンラインを柔軟に選択できるようにする。教材の共有や進捗(しんちょく)確認など学生と教員の間で行うオンラインの各種学修支援システムは統合し、ビッグデータをAIで解析。学修成果を可視化するとともに、AIがティーチングアシスタントとして学生個人の最適な学びを支援する。長期インターンシップをしながらオンラインで授業を受けたり、国内にいながら海外留学に準じたプログラムをオンラインで受講したりできる仕組みも整えていく。

     真銅正宏学長は「コロナ禍前からの教学改革とICTの充実が評価されたと受け止めている。取り組みをより高度化し、文系理系の区別や大学規模差を超えた、新時代の大学教育像の構築を目指す」と話す。

     駒澤大(東京都世田谷区)では教職員の業務にクラウド技術を導入(5位)。これまで紙による決裁を行っていたため、決裁者が不在で停滞したり、部署やキャンパス間で文書の持ち回りが生じたりしていた。決裁のために出勤することもあったが、それらの処理をパソコンやモバイル端末で行えるようになり、紙ならではの課題が解決。決裁文書は電子的に保管されるため、管理の簡易化や検索性の向上、システム連携による業務省力化なども期待される。20年度は約80種1万2000件の申請書類をデジタル化した。順次拡大する予定だ。同大は今後もDXを推進し、より重要度の高い業務や新規事業にリソース(資源)を回していく。

     一方で、デジタル社会を支える次世代技術の中核として世界的に注目されるのが半導体だ。

     関西学院大(兵庫県西宮市)と豊田通商は、次世代パワー半導体材料SiC(炭化ケイ素=シリコンカーバイド)基板内の欠陥を無害化する表面ナノ制御プロセス技術「Dynamic AGE-ing®」を共同開発した(25位)。SiC基板の高品質化と生産性向上を実現する革新的な技術だ。SiCは、普及しているパワー半導体材料であるSi(ケイ素=シリコン)と比べ、電力利用の効率化や冷却装置の小型化が可能。自動車や鉄道、産業機器、電力などグリーンイノベーションが進む分野で実用化が始まっている。なかでも電動車からのニーズが高く、国内外の自動車産業で大きな需要が見込まれる。

     コロナ禍の中、情報通信技術の発達が〝人と人とのつながり〟に果たす役割も大きくなっている。

     1位の大阪経済大(大阪市)は、ひきこもり経験者によるオンライン相談グループ「ぽーとぴあ」(代表・髙井逸史人間科学部教授)と共催で、当事者やその家族を対象にウェブ会議システム「Zoom(ズーム)」を使った相談会を2月から実施(有料)。コロナ禍によるひきこもりの増加が懸念されるためだ。当事者は外出できなくても話を聞いてもらえる。相談員は経験者だからこそ感じ取ることができる悩みに寄り添う。

     デジタル社会を牽引(けんいん)する、共創の場としての大学の未来像が見え始めた。(大学通信・上道敬子)

     4月27日発売の「サンデー毎日5月9・16日合併号」には「大学プレスセンター ニュース・アクセスランキング表」が掲載されています。

     また、「短期集中シリーズ しなくていいランニング」「専門家3氏が読み解く 新型コロナ正常化スケジュール」「ホテル業界 あの手この手のサバイバル策」などの記事も掲載されています。

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