新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

教養・歴史

佐藤優批判はタブーなのか!? 佐高信の著作めぐり1000万円の名誉棄損裁判に

佐藤優氏(左)と佐高信氏
佐藤優氏(左)と佐高信氏

 評論家の佐高信氏が、作家で元外務省主任分析官の佐藤優氏に約1000万円の損害賠償請求裁判を起こされたことがわかった。佐藤氏は佐高氏の著書『佐藤優というタブー』(旬報社)に名誉棄損的表現が含まれるとし、発行者である木内洋育・旬報社代表取締役にも1064万円を支払うよう求めている。

 同書のオビには「”雑学クイズ王”佐藤批判はタブーか!?」「私は二冊も佐藤と共著を出した責任を感じて、ここで佐藤批判を、特に佐藤ファンに届けたい」などと書かれている。共著もある作家同士が名誉毀損裁判に至るのは異例なことだろう。

 辛口評論家とも称される佐高氏は月刊誌『噂の真相』(休刊)で「タレント文化人筆刀両断」を連載するなど、数多くの文壇や論壇の批評を書いてきた。佐藤氏は多くのメディアに連載を持ち多作で知られる。

問題にした9つの記述

 訴状によれば佐藤氏は9つの佐高氏の記述を問題にしている。 最初に指摘しているのは、「創価学会御用達の佐藤優が、『AERA』でダラダラと『池田大作研究』を続けている。2020年9月28日号の第37回が特に卑劣な学会擁護だった」という表現。

 これについて佐藤氏は「原告が著述している池田大作研究の内容が『卑劣な学会擁護』とするものであり、『卑劣』とは『品性や言動がいやらしいこと』、『人格的に低級であること』を意味し、原告が卑劣な方法で学会擁護をしたとするこの表現は原告の作家としての良心であるとか、その誇りを踏みにじる表現である。このような侮蔑的表現で他人の著述を批判することは許されることではない」としている。

 次は、「彼は2016年3月2日付け『東奥日報』の電気事業連合会の『全面広告』に出て、『エネルギー安全保証の観点から原子力発電の必要性を強調』している。おそらく最低でも1000万円はもらっているだろうが、その金額を明らかにしてから『内調から藤原に金銭の流れもあった』とか言え」という記述、などだ。

 「内調」とは内閣調査室、「藤原」とは評論家で『創価学会を斬る』の筆者、藤原弘達氏のことである。佐高氏は佐藤氏について「藤原のように内調から工作されなくても(あるいは、工作されたのか)、国策と称された原子力発電の推進に協力する“原発文化人”はたくさんいる。佐藤もその一人だ」として、電気事業連合会の広告に出た佐藤氏を批判していた。

 これに対して佐藤氏は、「原告には、同広告の仕事によって電気事業連合会から幾らもらっているのかを明らかにする筋合いはなく、一般読者に原告が仕事にそぐわないような多額の金員をもらっていると思わせる記述をして、原告の名誉を傷つけた被告がその根拠を明らかにするべき事柄である」などと訴状で述べている。

佐高信氏の著書『佐藤優というタブー』
佐高信氏の著書『佐藤優というタブー』

第一回口頭弁論は6月8日

 今回の訴えに対し佐高氏は「言論人が裁判に訴えるということは言論での敗北を認めること。言論人失格である。すべての著作を絶版にしろと言いたい」とコメント。

 佐藤氏は「既に裁判で問題を処理する段階ですので、冷静な審理に影響を与えるような言動は私の方からは避けることにしています。第一審の判決が出た後は、きちんと対応します」とメールで回答。

 第一回口頭弁論は6月8日、東京地裁で行われる予定だ。

(楠木春樹・ライター+編集部)

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事