ロシア 秘密警察創設者の銅像再建に物議=前谷宏
モスクワの中心部に、ソ連国家保安委員会(KGB)の前身である秘密警察を創設したジェルジンスキーの銅像を再建するかを問うオンライン住民投票が2月下旬に実施された。しかし賛否が拮抗(きっこう)し、投票は途中で中止された。
ジェルジンスキー像はKGBの本部があったルビャンカ広場に建てられていたが、1991年のソ連崩壊直前に撤去された。しかし、2月に保守系の作家らが市に復活を要望。市民の意向を調べるため、再建案とロシア中世の英雄アレクサンドル・ネフスキーの像を新設する案の2択が示された。
ロシアでは1月、反体制派指導者逮捕をきっかけに大規模な反政権デモが起こったばかり。露メディアは、今回の投票の背景に、市民の注意を抗議活動からそらせる狙いがあったと指摘する。
投票では再建案が45%、ネフスキー案が55%と賛否が割れた。政権を支える治安機関の関係者はジェルジンスキー像復活を望んでいたとされるが、欧州からの侵略者を撃退したとされるネフスキーも保守層の間で支持が高い。ニュースサイト「メドゥーザ」は、「抗議から注意をそらせる代わりに、政権の支持層を分断させてしまった」ことが投票中止の理由と指摘している。
(前谷宏・毎日新聞モスクワ支局)