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法務・税務 固定資産税に気をつけろ!

これでスッキリ! 課税明細書を理解するチェックポイント3=編集部/監修 古郡寛

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 難解な固定資産税の課税明細書を読み解くポイントを整理した。(固定資産税)

 ポイント1 評価額、課税標準

 送られてくる納税通知書と課税明細書(図)を見て、まず目が行くのは税額だろう。毎年ほぼ同じ税額だからと、税額だけを確認する人も少なくないが、税額の算出方法を知っておくと、課税の誤りにも気付きやすくなる。固定資産税は固定資産の「課税標準」に税率を掛けて算出する。税率は市町村(東京23区は東京都)ごとに条例で定めるが、地方税法は通常用いるべき「標準税率」として1・4%と定めている。

 地方税法では、土地、家屋などの固定資産の「適正な時価」に対して課税すると定めている。この「適正な時価」として用いられるのが「固定資産税評価額」であり、総務省が定める「固定資産評価基準」に基づいて市町村が固定資産を評価し、評価額を決めている。固定資産税評価額は課税明細書では「価格」、課税標準は「課標」と省略して記載されることもある。

 この固定資産税評価額を原則として課税標準とするが、住宅対策などの観点から、さまざまな課税標準の特例措置が設けられているため、課税標準が評価額と一致しないことも少なくない。こうして計算した税額に対し、新築住宅なら3年間、認定長期優良住宅なら5年間、家屋の固定資産税を半額とする措置もある。新築から年数が経過した後に、家屋の固定資産税が上がったように見えるのは、この措置が切れるためだ。

 固定資産税評価額は単に固定資産税だけでなく、市町村税の都市計画税や都道府県税の不動産取得税、国税の登録免許税、相続・贈与税など他の税にも影響する。特に、土地や家屋の評価額の誤りは納税者自身が気づかない限り、そのまま長年にわたって見過ごされることになりやすい。しかし、土地や家屋の評価方法は複雑なため、納税者が誤りに気付くことがそもそも難しいという矛盾をはらんでいる。

 ポイント2 住宅用地の特例

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 土地にかかる課税標準の特例措置で、広く適用されているのが、住宅用地の固定資産税負担を軽減する「住宅用地の特例措置」だ。200平方メートルまでの小規模住宅用地の課税標準は評価額の6分の1に、200平方メートル超の一般住宅用地は3分の1へと大幅に軽減され、固定資産税額への影響も大きい。市町村による固定資産税の課税誤りでは、住宅用地の特例措置を適用し忘れているケースが散発している。

 東京都の課税明細書では、「小規模地積」の欄に小規模住宅用地の特例が、「一般住宅地積」の欄に一般住宅用地の特例が、それぞれ適用されている土地の面積で記載されている。この課税明細書のケースでは、土地の「価格」(固定資産税評価額)は4500万円だが、面積150平方メートルすべてに小規模住宅用地の特例が適用され、「固定本則課税標準額」の欄に記載の課税標準は750万円(=4500万円÷6)となっている。

 一つの家屋を住宅と店舗など住宅以外の目的に併用することも珍しくない。その場合は、家屋全体の面積に占める居住部分の面積に応じ(住宅用地率)、土地にどの程度、住宅用地の特例を適用するかが表のように決められている。店舗として使っていた建物を居住用に用途変更したりした際は、市町村に申告して住宅用地の特例の適用を受けることを忘れないようにしたい。

 空き家を取り壊さずに放置して、危険な状態となるケースが各地で目立っている。そこで、2015年5月に全面施行された空き家対策特別措置法によって倒壊のおそれがある「特定空き家」に指定された場合、住宅用地の特例を適用しないことにした。特定空き家に指定されると「固定資産税が6倍になる」というのは、課税標準額を6分の1とする小規模住宅用地の特例から外れることを指している。

 固定資産税は毎年1月1日時点の固定資産の所有者に対して課税される。1月1日時点で家屋を取り壊して更地になっていれば、その年の固定資産税では土地に住宅用地の特例が適用されなくなる。年内の住宅の完成を急いだり、年が明けてから住宅を取り壊したりするのは、住宅用地の特例が大きく影響している。

 ポイント3 負担調整措置

 かつて、土地の固定資産税評価額が地価公示価格より大幅に低い時期があった。バブル期には地価上昇ペースに固定資産税評価額の上昇が追いつかなかったため、国は1994年度の評価替えで地価公示価格の7割まで固定資産税評価額を引き上げることにした。しかし、それでは急激に固定資産税額が増えてしまう。そこで、なだらかに土地の課税標準を引き上げる仕組みとして「負担調整措置」が導入された。

 負担調整措置では、まず今年度の本来の課税標準額に対する前年度の課税標準額の割合を示す「負担水準」を計算する。そして、住宅用地などの場合、この負担水準が100%未満ならば、今年度の課税標準額は「前年度の課税標準額+(今年度の本来の課税標準額×5%)」とする。つまり、前年度の課税標準額が本来の課税標準額に一致するまで、本来の課税標準額の5%を加算する形で、今年度の課税標準を引き上げる。

 固定資産税では、地価公示価格が下がっても土地の課税標準が増えることがあるのは、この負担調整措置が要因であることが多い。この課税明細書のケースでは、負担水準は「675万円÷750万円」の「90%」と100%未満のため、今年度の課税標準額は「675万円+750万円×5%」の「712万5000円」になるはずだった。

 しかし、固定資産税では21年度、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、負担水準が100%未満の住宅用地などについては、前年度の課税標準額に据え置く措置が取られたため、今年度の課税標準は前年度と同じ「675万円」となっている。据え置きの措置が今年度限りで打ち切られた場合は、翌年度以降は課税標準が上昇して税額が増える可能性もある。

(編集部)

(監修=古郡寛・税理士)

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