教養・歴史鎌田浩毅の役に立つ地学

活発化する鹿児島・桜島 20年代には「大正噴火」級に/52

    噴煙を上げる桜島
    噴煙を上げる桜島

     鹿児島県の桜島火山の南岳山頂火口で4月25日、爆発的噴火が発生し、一時は上空3000メートル以上まで噴煙が上昇した。気象庁は一時、火砕流が火口から南西におよそ1・8キロ流れ下ったとして噴火速報を発表し、火口からおよそ2キロとしていた警戒範囲を2・4キロまで拡大した。

     気象庁はその後、火砕流と判断した現象は風下に流された噴煙の一部と確認したため、警戒範囲を元の2キロに戻している。近年の噴火では火砕流が1・8キロ流れ下る現象はなかったが、今から100年ほど前の1914年1月に火砕流が流下したことがある。桜島の東麓と西麓に開いた複数の火口から大量のマグマが噴出し、西部では高温の火砕流が発生した。

     1914年の噴火ではさらに、約8時間後にはマグニチュード(M)7・1の大地震が起こり、鹿児島市街を直撃した。その結果、58人の死者・行方不明者が発生し、121棟の家屋が全壊した。大正3年に起きたことから「大正噴火」と呼ばれている。

     この時の火山灰を含む噴煙は高度8000メートル以上に達し、山麓(さんろく)では1日に厚さ2メートルの火山灰が降り積もった。火山灰はさらに上空11キロの成層圏にまで上昇し、西日本上空を経て東北地方まで広がった。

     大正噴火は1年以上も継続し、噴出物の総量は91年の雲仙普賢岳(長崎県)噴火の10倍、また1707年の富士山宝永噴火を上回る30億トンに達した。桜島でこうした大規模な噴火が起きたのは、江戸時代(1779年)の安永噴火以来、135年ぶりだった。

    蓄積を続けるマグマ

     現在、桜島南岳の5キロ下にはマグマだまりがあり、鹿児島湾の中央にある姶良(あいら)カルデラを作る巨大なマグマだまりへ火道が連続している(図)。

     この姶良カルデラは、現在も噴火を続けている桜島の大元にある巨大火山である。鹿児島湾北部にある円形の地形は、2万9000年前の巨大噴火によって陥没してできたカルデラの名残なのだ。そして深さ10キロにあるマグマだまりには年間1000万立方メートルずつマグマが蓄積し、一部のマグマが桜島南岳へ供給されて噴火を継続させてきた。

     現在、大正噴火で出た量の9割に相当する量までマグマは回復し、2020年代中に大正レベルに達すると予測されている。もし蓄積量が大正並みになれば、同程度の大噴火がいつ発生しても不思議ではない。よって桜島火山が大噴火を起こす時期に入ったことを警戒しなければならない。

     なお、鹿児島県のトカラ列島近海では4月から地震が相次ぎ、十島村の悪石島では震度4の揺れを観測した。こうした活動は桜島とは距離が十分に遠いため直接の関係はない。またトカラ列島には活発な噴火を繰り返す諏訪之瀬島の御岳があるが、桜島と諏訪之瀬島は互いに独立に活動する活火山なので、それぞれに対する火山観測情報を注視する必要がある。


     ■人物略歴

    鎌田浩毅(かまた・ひろき)

     京都大学レジリエンス実践ユニット特任教授・名誉教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。専門は火山学、地質学、地球変動学。「科学の伝道師」を自任。理学博士。

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