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週刊エコノミスト Online 密にならないレジャー

空前のキャンプブーム 自然に触れる尊さを実感=SAM

休日だけでなく、平日にキャンプを楽しむ人も増えている 筆者撮影
休日だけでなく、平日にキャンプを楽しむ人も増えている 筆者撮影

 <おもしろ新発見 密にならないレジャー>

「空前のキャンプブーム」──。首都圏の有力キャンプ場のオーナーは、こう言い切る。コロナ禍でも密にならずに、屋外で手軽に楽しめることが人気の背景だが、実は、コロナ以前からここ数年、キャンプ人気は高まっていた。(密にならないレジャー)

 現在のブームが始まる前の2015年前後、ITベンチャー企業の経営者やエンジニアたちがキャンプにハマり始めていた。

 都心の殺伐としたオフィス、デジタルの世界で昼夜問わず猛烈に働く中で、仕事を離れ自然に触れられる、まったく違う空間で過ごす。しかもキャンプでは閑散期と言われた秋や冬に。メリハリの利いたライフスタイルがおしゃれだと、ひそかにムーブメントを形成。そうしたキャンプの場に時代の先端の猛者たちが集まり、その姿をSNS(交流サイト)に投じ、順調に裾野が広がっていた。

道具を見に行く

 今回のブームでは、ユーチューブやインスタグラムなどのSNSを活用して、さまざまなスタイルのキャンプが公開されている。

 一人で楽しむ「ソロキャンプ」や女子たちだけの「女子キャンプ」、もちろん家族や友人同士で楽しむスタイルは根強く、今回のブームのけん引役。特にソロキャンプを楽しむ人は、シーズンにかかわらず静かな平日を選ぶ傾向があるので、キャンプ場としても大歓迎だという。

 興味はあるが、自分にできるか。

コテージなどの施設を使えるのがキャンプの多様性 筆者撮影
コテージなどの施設を使えるのがキャンプの多様性 筆者撮影

 そんな疑問を持つ人に対して、よくかけられるアドバイスは、「キャンプ場に行ってみること」。キャンプ場とは、野外における総合宿泊施設だ。テントを張って寝るのもいいし、コテージやキャビン、バンガロー、さらにグランピングなどの施設を使ってもいい。ネットで検索すれば、ビギナーにもやさしい、自宅からほど近いキャンプ場を探すのも容易だ。施設を利用するなら、テントなどの道具なしで、初心者が手軽にキャンプを楽しむことができる。

 ただ、私は別の提案として、キャンプ用品をまず見に行くことを勧める。キャンプ道具を扱うアウトドア専門店やホームセンターは、今やブームを背景に極めて身近な存在となった。最近の品ぞろえの充実ぶりには私自身驚くほどだ。

まずはキャンプ用品店に赴いて、興味を持てるかを確認しよう 筆者撮影(撮影協力:WILD─1幕張店)
まずはキャンプ用品店に赴いて、興味を持てるかを確認しよう 筆者撮影(撮影協力:WILD─1幕張店)

 まずはキャンプ用品に興味を抱けるか、店頭にたくさん並ぶさまざまなキャンプギア(道具)を見て休日のステキなライフスタイルを想像できるかが、実はキャンプへのファーストステップであると言ってもよい。

 ギアといった側面では、ワークマンの登場も見逃せない。作業向けウエア(衣類)で培ったノウハウを、アウトドア向けに転換。機能的でシンプル、しかもリーズナブルな価格が人気を博し、キャンプには欠かせないアイテムになっている。今のキャンプブームに一役買っていると言っても過言ではないかもしれない。

 どんなギアやウエアがいいかは、ネットで情報がいくらでも入手できる。ただし、ユーチューブをはじめとするSNSでは、自称“専門家”の正しいとは思えない浅薄な情報も多く、中身は玉石混交と言えなくもない。すぐにうのみにせず、しっかり確かめ、よく考えながら、自分に本当に必要なものを購入するのがいい。

 まず何を買うかは人によってさまざまだが、テント、タープ、テーブル、バーナー、調理用具、たき火台とその周辺のギア、必要人数分のシュラフ(寝袋)とマット、キャンプチェアが最初にそろえるめどになるだろう。費用がいくらかかるかは上を見れば青天井なので、1回目の目安として、自分のボーナス1回分の金額でどう収められるかをシミュレーションしてみるといいだろう。

 なお、設備がしっかりしたキャンプ場はテント利用で1日1万円以下、コテージなどの宿泊施設利用ではそれ以上となることがほとんどなので、事前にその投資額も見極めておいた方がよい。

「面倒さ」という魅力

 キャンプの魅力は、なんといっても日常生活では得難い開放感と「ちょっとの面倒」感だ。“たき火”一つにしても、自宅にいればガスコンロのボタンを押すだけ。ところが、キャンプでは、自分たちで薪を用意して、種火から火起こしをしなければいけない。とても面倒な作業だが、この面倒くささを乗り越えてのち、火がついたときの達成感、燃え上がる火をコントロールする成就感は、経験した人しか分からないだろう。

 たき火の燃え上がった炎を見ていると、心が洗われる思いがする。

火を扱う面倒さが妙味 筆者撮影
火を扱う面倒さが妙味 筆者撮影

 例えば、一緒に行った仲間たちや家族と、普段とは違う素直な気持ちで話し合えてしまう。こうしていると、人間は自然の中で生かされているとつくづく感じる。オフィスや自宅だけでは味わえないような体験が、クリエーティブな活動やアイデアにさえつながっていく。これはキャンプ歴30年以上、こよなくキャンプを愛し、その良さを伝えたい私自身の体験である。

 ブームを一過性のものとしないためにも、守るべきことがある。それは、まず安全と安心を確保し、そしてモラルを順守し、マナーを尊ぶこと。

 マナーは約束事だったり、礼儀作法として相手や状況に応じて多少変わるかもしれないが、モラルは社会道徳、倫理観として、いつでもどこでも守るべきものだ。このブームの中、キャンプ場をゴミ置き場にしてしまう人も見受ける。またたき火に興じるあまり、火災にもなりかねないような行為をしてしまう人もいる。自然からの恩恵を受け取るキャンプにおいて、開放的な気分で緩みがちなモラル順守は今一度引き締めなければならない。

 また、キャンプはサバイバルではない。あくまでもレジャーの一つだ。悪天候や体調不良で頑張る必要など全くない。状況が悪ければキャンプ場とよく相談した上で事前に取りやめる、また現地でも遠慮なく撤退すべきだ。

夜は満天の星を一望できることも 筆者撮影
夜は満天の星を一望できることも 筆者撮影
きれいな星空も非日常体験のひとつだ 筆者撮影
きれいな星空も非日常体験のひとつだ 筆者撮影

 もし、あなたがキャンプを始めたのなら、キャンプ場での夜空を見上げてみてほしい。広大な星空を眺めていると、夜は宇宙への扉が開いたのだなと改めて気づかされる。私たちの次のステージはこの宇宙に関してのアイデア創造ではないのか……。夢は広がるばかりだ。キャンプの素晴らしさをぜひ、経験してほしい。

(SAM・アウトドアライター)

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