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週刊エコノミスト Online 密にならないレジャー

1日数千円でボートをレンタル 非日常のマリンライフを手軽に体験=春日井章司

レンタルボートから眺める横浜の景色
レンタルボートから眺める横浜の景色

マリンレジャー 1日数千円でボートをレンタル 非日常を手軽に体験できる=春日井章司

近年のアウトドアブームと2020年からのコロナ禍により、マリン市場が活気づいている。(密にならないレジャー)

 特に人気なのが、ボートのレンタルサービスだ。全国のマリンクラブを運営するマリーナ(停泊所)でサービスに入会するとボートを借りることができるもので、購入することなく気軽に家族や友人と釣りやクルージングを楽しめる。日本マリン事業協会(JMIA)の発表によれば、今年に入ってレンタルサービスの入会者は激増しており、前年比で17%増と、過去最高を記録している(図)。

 ボート免許を取得して3カ月目という都内在住のAさんは、東京湾の2カ所のマリーナで、ヤマハ発動機が運営するレンタルサービス「シースタイル」を利用。定員6人の小型ボートを6時間、約1万5000円で借りて、台場周辺と横浜みなとみらいでのクルージングを試してみたところ、爽快で楽しい時間を過ごせたという。

 マリーナで一度、初回講習を受ければ、以後は自由に予約ができる。

 Aさんは、「最初の操船は恐る恐るだったが、慣れてくると波の穏やかな東京湾のクルーズは楽しい」と息を弾ませる。操船はクルマと似た感覚ででき、装備されている魚群探知機をカーナビのように使えるので、道のない海上でも迷うことはない。「レインボーブリッジをボートでくぐったり、羽田空港やみなとみらいの街を海上からゆったり眺めたり、天気が良ければ昼寝もできる。楽しい非日常体験ばかりです」と満足顔だ。

免許取得者も増加

 レンタルサービスの入会者数と連動するように、ボート免許の取得者数も増えている。レンタルボートを借りるために必要な1級・2級小型船舶免許、水上バイク用の特殊小型船舶免許の20年7月から12月の取得者数は、外食や旅行などの自粛から時間と予算に余裕ができたためか、前年比で46%も増加した。3密を避けるアウトドアレジャーとして認識され、今年になってその勢いは加速している。

 免許の取得も車に比べると簡単だという。一般的な教習コースの場合、座学講習を1日、操船実技講習を1日、それぞれ受講し、国家試験を1日受けるだけ。試験もそれほど難しいものではなく、しっかりと勉強すれば取得できるレベルだ。講習料や試験受験料などで10万~15万円ほどの費用がかかるが、政府からの特別定額給付金の10万円も免許取得者数増加の一助になったと思われる。

小型のレンタルボートはこんな感じ
小型のレンタルボートはこんな感じ

 レンタルサービスの利用は、会員制のマリンクラブに入会金と月会費(ヤマハ発動機のシースタイルの場合、入会金2万2000円、月会費3300円)を支払って入会し、ボートを借りるときにレンタル料を支払うのが一般的。レンタル料はボートの大きさや装備によって異なるが、シースタイルを例にとると、平日3時間の場合、定員6人の小型艇なら数千円、15人まで乗れるちょっと豪華なボートなら10万円程度だ。

 ボートの購入費や管理費などのコスト負担に比べると、レンタルボートはかなりの割安であることは間違いない。3~4人で安いボートを借りれば、1人当たり4000~5000円の負担で、一日中楽しめる。

 とりわけ人口の多い首都圏となると、密を避けてレジャーが楽しめるというメリットは大きい。東京湾に面する東京、神奈川、千葉だけでも10カ所以上のマリーナがあり、それぞれでボートをレンタルできる。ただ、昨今は急激なブームで、特に週末は予約がとれない状況になってきているという。

 ヤマハ発動機のシースタイルは、全国約140カ所のマリーナでレンタルができる最大級のサービスだ。船舶メーカー系ではスズキマリンも全国5カ所のマリーナでレンタルボートのサービスを運営している。

 日本マリン事業協会によれば、「昨年8月から12月については、レンタルボートの利用回数が4割増になった」とのことで、21年になってもこの傾向は変わらないという。

自治体主導のプランも

中古艇に貼られた「成約済み」の札 筆者撮影
中古艇に貼られた「成約済み」の札 筆者撮影

 話題の中心はレンタルだが、販売のほうもじわじわと人気が高まっている。

 4月には、横浜ベイサイドマリーナで、国内最大級のマリンイベント「ジャパンインターナショナルボートショー」が開催。例年は5万人を超える人が集まるイベントだが、今年はコロナ禍の影響もあり、屋外マリーナでの展示開催と同時にインターネットによるバーチャルボートショーを併催した。

 展示会場では富裕層向けの豪華で華やかな大型クルーザーが展示される一方で、最近のブームをけん引する4~6人乗りの小型フィッシングボートの展示にも注目が集まっていた。

1億3200万円でもお買い得という中古の高級ボート
1億3200万円でもお買い得という中古の高級ボート
ボートの中にはこんな部屋が
ボートの中にはこんな部屋が

 小型といっても新艇は500万円以上、ものによっては1000万円以上もする高い買い物だが、中古艇であれば100万~300万円台とサラリーマンでも手が届くようなものもあり、人気はうなぎ登り。新艇も展示スタッフによると「生産が追いつかず、1年待ち」とのことで、なかなか手に入らないほどの状況になっている。会場に展示されていた見本中古艇も、すでに成約済みの札が貼ってあった。

中古の小型ボートならサラリーマンでも手が届くかも
中古の小型ボートならサラリーマンでも手が届くかも

 会場では、地方の自治体とマリーナが協力して、都会では手の届かないマリンレジャーを格安料金で楽しめるプランを提供し、地域活性や町おこしにつなげようとする展示ブースもあった。

 そのひとつが、日本海に面する富山県が県外客を誘致する「新湊マリーナ」の一日レンタルボートプラン。県外在住でボート免許を持っている人なら1日当たり1万2000円で富山湾クルーズや釣りが楽しめるというものだ。海越しに立山連峰を望む景色を堪能できるなら安い投資かもしれない。

 また、広島県や岡山県など波の穏やかな瀬戸内海に点在する「海の駅」(一般客にも開放されているマリーナ)の展示ブースでは、ボートレンタルをしながら併設された海鮮レストランでの食事やショップでの買い物が楽しめるといったサービスを積極的にPR、こちらも盛況だった。

 コロナ禍の逆風を追い風にして、マリンレジャーの関心度は高まるばかりだ。

(春日井章司・ジャーナリスト)

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