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2021年度入試:全国4300高校徹底調査 著名進学校 難関・有名大「現役」進学実績・東日本編 筑波大付駒場、札幌南、聖光学院…
進学校の実力を知るために、大学合格者数は重要な指標だ。しかし、合格者数が実際の入学者数と一致しないことは多い。そこで、地域別の難関・有名大への進学者数を調査した。今週号では、東日本の進学校の実力を探った。
コロナ禍、公立伝統校が躍進 学業専念で進学実績アップ
進学校の実力を測る確実な指標の一つは、卒業生に対する現役進学者の割合。特にコロナ禍が受験勉強に大きな影を落とした2021年度入試(21年4月入学)では、例年以上に生徒の地力と共に、学校のサポート体制が問われることとなった。
こうした緊急事態下で、高い現役進学率を残した学校はどこなのか。受験生や保護者に人気が高い国公立大の進学状況について、旧七帝大に東京工業大、一橋大、神戸大を加えた「難関10国立大『現役』進学率ランキング」と、全ての国公立大を対象とした「全国国公立大『現役』進学率ランキング」の二つのランキングから見ていこう。
まず「難関10国立大『現役』進学率ランキング」のトップは、定位置である筑波大付駒場。東北大(1人)と一橋大(2人)以外は全て東大進学者で、卒業生のおよそ2人に1人が現役で進学していることになる。
2位は札幌南。難関10国立大の総数が前年の121人から133人に増え、進学率が4・8ポイントアップした。21年度は公立伝統校の躍進が顕著になった年であり、ランキング中の公立校は前年の11校から13校に増え、大半の学校で前年の進学率を上回っている。その中で進学率が最も上がったのは、前年の23位から9位にジャンプアップした日比谷。東大進学者が前年を23人上回る48人となり、進学率は11・7ポイントアップとなった。
他に進学率が前年を大きく上回った公立校には、日比谷と同様に東大進学者が15人から44人に増えた13位の横浜翠嵐や15位の浦和・県立(各+4・6ポイント)、18位の札幌西(+6・8ポイント)、20位の水戸第一(+8・6ポイント)、21位の秋田(+6・7ポイント)、22位の山形東(+8・3ポイント)などがある。公立校の現役進学率が上がっている要因について、安田教育研究所の安田理代表が解説する。
「学区の撤廃や東京の進学指導重点校、神奈川の学力向上進学重点校の指定など、自治体の施策で優秀な生徒と教員が集中する仕組みができた学校の実績が高い。地方では、交通の便が良く教育熱心な家庭が多いことから優秀な生徒が集まりやすい、県庁所在地の学校の進学実績が伸びています」
優秀な生徒が集中することに加え、コロナ禍の影響で公立校の難関大現役進学率が伸びていると指摘する予備校関係者は多い。
「学業とクラブ活動や学校行事を同列にこなす生徒が多い公立トップ校にとって、コロナ禍で学業に集中する環境になったことが、生徒の学力アップにつながった。元々、地力があるトップ公立校の生徒が学業に専念したことが、進学率アップの大きな要因になっているのです」(予備校関係者)
私立校では、3位の聖光学院の進学率が1・6ポイント上がり前年の4位から順位を上げ、武蔵は進学率が5・3ポイントアップして前年の20位から14位になった。他には、8位の浅野(+2・3ポイント)、10位の駒場東邦(+2・5ポイント)、16位の渋谷教育学園渋谷(+2・7ポイント)などの進学率が上がっている。安田氏は、神奈川の進学校に注目して、こう話す。「進学率が伸びている聖光学院や浅野に栄光学園(12位)を加え、神奈川のトップ校3校が上位にランクインしています。かつて、神奈川に大手予備校が進出していなかった頃、これらの学校では、授業だけで難関大に合格させたいという思いが強く、そうした教員の姿勢が今に継承されていることが、現役進学率に表れています」
浅野は元々、東京工業大や一橋大の進学実績が高い学校だが、東大と京大の合計進学者が前年の32人から43人に増えたこともあり、9位から順位を上げている。
ランキングの5位は桜蔭、6位には開成が入った。桜蔭は難関10国立大以外の国公立大医学部に35人が現役合格しており、全員が進学したとすると、進学率は48・9%。同様の算出法では、筑波大付駒場が52・5%、聖光学院は47・4%。これらの学校では、卒業生の半数が難関10国立大か国公立大医学部に進学している。国公立大医学部を加えると進学率が大きく伸びる学校には、20・5%から38・5%になる25位の北嶺がある。
地元の国公立大への志願者増え、現役進学率軒並みアップ
次に、全ての国公立大を対象とした「全国国公立大『現役』進学率ランキング」を見ると、トップは東京芸大付音楽で、進学先は全て東京芸術大だ。
「高校入学時に音楽に対する高い素養が求められる東京芸大付音楽は、優秀な生徒が揃(そろ)っており、東大より狭き門と言われる東京芸術大への高い進学率もうなずけます」(安田氏)
ランキング全体を見ると、2位の弘前、3位の室蘭栄、4位の秋田南、5位の盛岡第三など、各道県のトップ校に次ぐ学校が数多く入っていることが分かる。安田氏は言う。
「大学入学共通テスト対策に力を入れ、堅実に地元大学に現役進学させる学校として評価できる。北海道や東北の学校が多いのは、共通テストの成績が重視される一般的な国公立大が数多くあるため。首都圏は、幅広い難易度帯の私立大が数多くあることから、国公立大の進学率が伸びにくいのです」
21年度のランキングの大きな特徴は、進学率が前年を上回っている学校が多いこと。60%を超える学校は、20年度の8校から16校に増えている。ランキング全体で、前年度の進学率を下回っているのは、3校のみ(前年と比較ができない東京芸大付音楽を除く)だ。
中でも進学率が大きく伸びているのは、10位の札幌東。全体の進学者が前年の132人から197人に増え、進学率が20・7ポイントアップとなった。ランキング中で前年と比べて進学率が10ポイント以上伸びている学校には、室蘭栄、11位の秋田、15位の旭川東、17位の高田、22位の花巻北、23位の弘前中央、24位の村上中教がある。
このように、現役進学率が上がる学校が多い背景には、地元の国公立大を目指す生徒が増えたことがある。
「コロナ禍で移動を避けたいという思いと、リモート授業のつらさを先輩から聞くことなどにより、地元志向が強まったことが、多くの学校で現役進学率が伸びている一因。地方の学校は、コロナ禍にあっても早くから対面授業を再開できたプラス面もあった」(予備校関係者)
「難関・有名大『現役』進学者数」では難関国立大と私立大に加え、地元の国公立大と私立大の進学実績を掲載した。目指す学校の進学率を確かめてほしい。