週刊エコノミスト Online

プロ野球 タイガース優勝へ 佐藤輝は田淵を超えバースになる 浪花の春団治、川藤幸三が太鼓判

「サンデー毎日6月13日号」表紙
「サンデー毎日6月13日号」表紙

 やはり今年のトラはひと味違う。プロ野球はセ・リーグ首位の阪神が5月28日に両リーグ30勝一番乗りを果たした。首位快走の要因を阪神で代打の切り札として活躍した川藤幸三氏に尋ねると、立役者に佐藤輝の名を挙げ、さらにルーキーは「バースになる」というのだ。(記録は5月28日現在)

長嶋茂雄以来 新人1試合3発

「何といっても佐藤の入団やろ。虎の日本人打者として一人前になる前に、ここまで騒がれるのはブッちゃん以来でしょう」

 こう語るのは「浪花の春団治」とも呼ばれた川藤幸三氏だ。福井・若狭高から1968年にドラフト9位で阪神入り。主に代打の切り札として活躍し、現在は野球解説者だ。「ブッちゃん」とは田淵幸一氏。翌69年に法政大からドラフト1位で同じ阪神に入り。79年には西武へ移籍し、プロ通算474本塁打を放ち、昨年は野球殿堂入りを果たした大打者だ。そして「佐藤」とは今季、近畿大からドラフト1位で阪神に入団した大型スラッガー・佐藤輝明内野手。川藤氏に古巣の好調の理由を聞くと、真っ先に佐藤輝の加入を挙げた。

 まず、今季の阪神の戦いを振り返ってみよう。開幕カードはヤクルトに3連勝。直後の広島3連戦は負け越したが、続く中日3連戦に勝ち越すと単独首位に再浮上。4月20日には巨人を破って7年ぶりの8連勝を飾り、開幕20試合消化時点で早くも16勝目を挙げた。この時点で16勝以上したのは、阪神としては83年ぶり3度目。過去2度は戦前とはいえ、いずれも阪神が優勝している。さらに、5月28日には両リーグ最速で30勝到達。これは18年ぶりにリーグ優勝した2003年以来2度目と、いずれも縁起の良い数字が並ぶ。

 そして、佐藤輝だ。圧巻は30勝一番乗りを果たした交流戦の西武戦。九回の決勝3ランを含め、セの新人では1958年の巨人・長嶋茂雄以来、63年ぶり2人目となる1試合3本塁打の離れ業をやってのけた。本塁打はリーグ首位タイの13本、打点は同2位の38と堂々の成績で、打率も2割7分6厘と上がってきた。

 佐藤輝の最大の魅力といえば、身長187㌢、体重94㌔の恵まれた体格からの豪快なフルスイングだろう。

 川藤氏もうなる。

「あれだけ振るのは今までのタイガースにもないスタイル。ブッチャンは入団時、細かったけれど、佐藤は体もすごい。ホームランに持っていく技術は、まだブッチャンの方が上だが、佐藤は『この男、どこまで行くんだろう』と楽しみ。ブッチャンは1年目は本塁打22本で、佐藤の方がハイペースです。30本なんて中途半端なことを言わず、40本を目指してほしい」

 一方、三振数は64とリーグ断トツのワーストだ(2位はヤクルト・村上宗隆内野手の47)。ただ、川藤氏は心配をしていない。

「今年は思い切り振り回したら、ええ。当てに行っては、並の打者になってしまう。それよりも、投手に恐怖感を覚えさせることが大事。そのうち、相手が逃げて勝手に四球になる」

 すると、川藤氏の口から懐かしい名前が出てきた。

「かつてランディ(バース)が『日本のピッチャーは何でボール球ばかり投げるんや』と悩んでいた。私は『お前が打ちに行くから怖がっているんや。四球にしてもろうたら、ええ。後ろに掛布(雅之)、岡田(彰布)がおるから、そのうちお前と勝負せざるを得なくなる』と言った」

 85年、阪神が過去唯一、日本シリーズを制した時の伝説のクリーンアップだ。

「佐藤は力はもちろん、スイングの速さ、柔らかさに優れている。何よりも足腰が強く、ああ見えて軸足がブレない。飛ばす基本が備わっている。あれだけ大きな体でも足も速く、俊敏で三塁の守備も十分にこなせる。3冠王だったバースになれる逸材ですよ」

コロナ禍「自粛」で野球に集中か

 さらに、優勝争いが佐藤輝の成長を促すという。

「弱いチームの強打者は自分のことだけを考えればよかったが、佐藤はチームが優勝を狙っている。長嶋さんも王(貞治)さんも(巨人という)優勝する組織の一員としての責任感でスターになった。佐藤もそうなってほしい」

 一方、コロナ禍が佐藤輝にはプラスに働いているという見方もある。大手紙の阪神担当のスポーツ記者は「外出自粛により、野球に集中できているのではないでしょうか」と指摘する。

「阪神はやはり関西の人気球団であり、大阪の〝タニマチ文化〟も重なり、選手には平時、夜の誘いが非常に多い。ただ、阪神は昨年、藤浪晋太郎投手ら3選手が会食で感染したり、福留孝介外野手(昨季は阪神、現中日)らが球団の決めたルールを破って食事をして感染者を出したり、問題が相次ぎました。その反省もあり、現在は厳格に外出自粛をしているようです」

 球界特有の事情もある。

「プロ野球は今も〝タテ社会〟の性質が強い。そのため先輩が試合後、後輩を食事などに連れ出すこともよくあります。しかし、それも難しい。佐藤の打率は、学生時代より高いくらい。ここまで結果を出せている要因の一つは、コロナ禍もあると言えるでしょう」

 では、優勝の可能性は。「苦手にしている交流戦を終え、セの2位に数ゲーム差リードしていれば、確率は70、80%ではないでしょうか」(前出の担当記者)

 ある意味、阪神ほどコロナ禍の影響を受けた球団はないかもしれない。昨年には当時の球団社長が、集団感染がチーム内で複数あり、球界全体に迷惑をかけたとして辞任した。

 地元・関西は第4波が最も深刻だ。そのお茶の間から応援する虎党の期待に応え、昨年まで通算165勝176敗13分けと負け越している交流戦を切り抜ければ、2005年以来のリーグ優勝が見えてくる。

 6月1日発売の「サンデー毎日6月13日号」には、他にも「ワクチン副反応不都合な5つの真実」「ながら筋トレで巣ごもり老化を防ぐ」などの記事も掲載しています。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

2月14日号

どうする?どうなる?日銀大検証16 岸田政権「インフレ抑制」へ 10年ぶり総裁交代で緩和修正 ■浜田 健太郎19 インタビュー 軽部謙介 帝京大学教授・ジャーナリスト 日銀が甘くみた内閣の力 「安倍1強」に内部ひょう変21 「 ガラパゴス」日銀 市場機能をマヒさせた「看守」 低金利慣れの財政に大打撃 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事