2022年度大学入試:3年連続「志願減」 倍率で狙い目となる私立大は〈サンデー毎日〉
21年度志願者は戦後最大の前年比14%減
2022年度入試(22年4月入学)における一般選抜の試験日が出そろった。21年度の一般選抜は大学入試改革とコロナ禍で大きく様変わりしたが、22年度はどのような状況が予測されるのだろうか、探ってみた。
20年度入試は大学入試改革初年度となる翌21年度入試を嫌い、入れる大学に入学しようという安全傾向が強まり、私立大の一般選抜志願者は19年度より減った。そして、21年度入試は20年度で浪人生が大幅に減少し、さらにコロナ禍が相まって、私立大の一般選抜志願者は、前年比14%と戦後最大の減少幅となった。
減少は2年連続だが、その反動として、22年度入試も志願者が増える兆候は見られず、さらなる減少が見込まれている。代々木ゼミナール教育総合研究所の主幹研究員、坂口幸世氏は、こう話す。
「18歳人口の減少やコロナ禍の影響など、22年度も一般選抜の志願者が減少する要因は多い。総合型選抜や学校推薦型選抜といった年内に行われる特別選抜も影響するでしょう。21年度の特別選抜の志願者は増えませんでした。しかし、コロナ禍で早期に入学者を確保したい大学は、特別選抜で多くの合格者を出しました。これもあって一般選抜の志願者が減少しましたが、22年度入試でも同様の傾向が続くと見ています」
21年度入試で特別選抜の志願者が増えなかったのは、コロナ禍で課外活動などが制限された影響が大きい。22年度もコロナ禍に収束の見通しが立っておらず、特別選抜の志願者が大きく増えることはなさそうだ。大学も21年度と同様に、特別選抜に多くの合格者を出すと見られている。
難易度レベル別のグループを見ると、21年度は、早慶上智▽MARCH(明治大、青山学院大、立教大、中央大、法政大)▽関関同立(関西大、関西学院大、同志社大、立命館大)――などの難関大から、日東駒専(日本大、東洋大、駒澤大、専修大)や産近甲龍(京都産業大、近畿大、甲南大、龍谷大)など、難関大に次ぐ上位大まで志願者が減少した。
ただ、22年度はこの状況が変化し、難関大に志願者が戻ってくると指摘する予備校関係者がいる。
「かつて5倍くらいあった難関大の平均的な倍率が3~2倍まで下がっています。この倍率なら受けてみようと考える受験生が増えると、志願者が戻る大学があるかもしれません」
一般的に、志願者の減少に対する反動は、減少幅が大きいほど顕著に表れる。では、21年度入試で、大学入学共通テストと大学独自の記述式問題を課す方式を取り入れ、志願者が大幅減となった早稲田大(政治経済、国際教養、スポーツ科学)、上智大、青山学院大はどのような状況が予測されるのか。坂口氏に聞いてみた。
「早稲田大・政治経済の政治学科は、倍率が2倍台に下がったことから、難関国公立大志望者の出願が増える可能性があります。全体としても多少の反動はあると思いますが、一般的な私立3教科型入試とは異なる受けにくさを、クリアして出願する受験生は、それほど多くならないと見ています」
共通テストで知識を担保し、個別試験で各学部が求める能力を測る入試は、大学入試改革の理念を具現化したものではあり、今後はこうした入試が一般的になる可能性はある。しかし、現状の私立大入試では、まだ少数派なのも事実だ。それだけに、受けにくさをクリアしようと考える受験生が増えないのなら、早稲田大や上智大、青山学院大を第1志望とする受験生にとって、22年度入試は狙い目の年と言えそうだ。
法学部が茗荷谷移転、中央大は志願者増か
その他の大学は、どのような状況が見込まれるのだろうか。倍率アップが予想される大学・学部について見ていこう。
例えば、中央大・法は、4年間多摩キャンパス(東京都八王子市)だった。しかし、22年度の入学者は1年次が多摩キャンパスで、2年次以降は東京都文京区に開設する茗荷谷キャンパスで学ぶことになる。利便性の高いキャンパスに移ることにより、多くの志願者が集まり難化しそうだ。
同様に利便性の高いキャンパスに移転するのは、立命館大・情報理工。1~3年次がびわこ・くさつキャンパス(滋賀県草津市)で、4年次が大阪いばらきキャンパス(大阪府茨木市)だが、22年度は3年次から、いばらきキャンパスで学べるようになる。その他にキャンパス移転が志願者増に結び付きそうなのは、東京理科大・薬や関東学院大の法、経営、人間共生(コミュニケーション学科)などがある。
入試方式に注目すると、25年度からの新課程入試を前にして大きく変更する大学は少ない。そうした中、試験日を増やすのは京都女子大だ。これまで1日だった前期(A方式)の試験日を2日間にし、試験日自由選択制とする。関西学院大も全学部で2日間の試験日自由選択制を導入し、受験機会を拡大する。学部の新設によって志願者の増加が見込まれるのは、武蔵大・国際教養、神奈川大・建築、近畿大・情報などがある。
受験機会が拡大する大学が多くある中で、対照的に門戸が狭くなる学部があるのは早稲田大だ。22年度入試では、文化構想が430人→370人、文が390人→340人に減り、倍率アップの可能性が高いので注意が必要だ。
22年度の私立大の一般選抜も、コロナ禍での入試になりそうだ。21年度同様に厳しい状況が予想される。8月31日発売の「サンデー毎日9月12日増大号」には「全国302私立大入試スケジュール」を掲載している。志望校の詳細を確認し、半年に迫った一般選抜に向けてモチベーションを新たにしてほしい。