教養・歴史 書評 『悲劇の世界遺産』 井出明著 文春新書 1210円 2021年8月27日 『悲劇の世界遺産』 井出明著 文春新書 1210円 世界遺産は、地域にとって誇らしく観光の起爆剤になると期待される。だが、本来の価値は戦争や虐殺、人身売買、強制労働といった負の歴史を含み多面的だ。著者は国内外の事例を挙げ、日本の産業遺産が近代化の影を捉えていないことや、価値判断がその実、西洋の文明観に基づくことを指摘する。悲劇の場所を巡るダークツーリズムは、現地で真実性に近づき思索を深めることが本質だというから、観光客と観光地の双方にとって旅の可能性が広がる。(A) 前の記事 『新たな医療危機を超えて』 真野俊樹著 日本評論社 2090円 次の記事 『日本金融百年史』 横山和輝著 ちくま新書 1100円 文字サイズ 小中大 印刷