経済・企業

三菱商事は再エネ4000億円投資 新エネ・再エネ商社の取り組み=編集部

いずれ日本にも…… 三菱商事提供
いずれ日本にも…… 三菱商事提供

新エネ・再エネ 洋上風力、電池、水素…得意分野の延長に商機あり=編集部

 世界的な脱炭素のうねりを受けて、商社各社は、温室効果ガスを大量に排出するビジネスからの脱却(ダイベストメント=投融資の引き揚げ)と、新エネルギー・再生可能エネルギービジネスなど新規事業の開拓(インベストメント=投融資)を同時並行で進めている。(商社2021)

三菱は4000億円で買収

 このうち、新規事業については、各社とも事業が可能か検討段階であり、出資額も比較的小さい。この中にあって目を引くのが、三菱商事が2020年3月に買収した蘭エネルギー企業「エネコ」だ。中部電力と共に約41億ユーロ(約5000億円)で買収。三菱商事はうち8割に当たる約3910億円を出資した。エネコは、再生可能エネルギー開発や電力小売りを手掛け、顧客数は600万世帯にも及ぶ。三菱商事はエネコの知見を生かして、日本を含むアジアでも再エネ案件を積み増していく。

 その他の事業でも各社の特徴が表れている。各社が得意分野を核に、新たな取り組みを付加している。

 下流(物・サービスの供給上、消費者に近い側)に強い伊藤忠商事は、家庭用蓄電池「スマートスター」を合弁会社で製造し、販売している。9月からは、毎月定額で家庭用蓄電池をリースする「サブスクリプション」を開始する。消費者接点に近いビジネスで収益のチャンスをうかがうという、同社らしい取り組みだ。

 資源やエネルギーの開発・生産に強い三井物産は、CCS(二酸化炭素の回収・貯留)事業会社「ストレッガ・ジオテクノロジー」(英)に出資した。CCSやCCUS(二酸化炭素の回収・利用・貯留)は、今後、天然ガス開発や水素製造で需要が高まる。三井物産の資源・エネルギー開発ノウハウと相乗効果が高い。同社はストレッガ・ジオテクノロジーを通して、CCUSやCCUが先行する欧州での知見を取り込む。

(編集部)


大手5商社の脱炭素の新たな取り組み

伊藤忠商事

 工業ガス世界大手「エア・リキード」日本法人、子会社「伊藤忠エネクス」と共に水素の製造から供給までの事業化を検討。まずは、中部圏で水素ステーション運営を検討▽合弁会社で製造する家庭用蓄電池「スマートスター」は累計販売4.5万台。毎月定額で貸し出す「サブスクリプション」も開始

三井物産

 米カリフォルニア州で水素ステーションを開発・運営する「ファースト・エレメント・フューエル」に総額2500万ドル(約27.5億円)を出資。運搬トレーラーのタンクなどに化学部門の炭素繊維技術を活用▽英CCS(二酸化炭素の回収・貯留)事業を担う「ストレッガ・ジオテクノロジー」に15.4%を出資

丸紅

 豪州で、再生可能エネルギー由来の電力で水を電気分解した水素を原料とした「グリーンアンモニア」を製造・輸出する事業性調査を、IHIや地元エネルギー大手「ウッドサイド・エナジー」と共に実施▽秋田県秋田港・能代港の洋上風力発電事業に参画。事業を進める特別目的会社の筆頭株主

三菱商事

 蘭エネルギー企業「エネコ」を中部電力と共に約41億ユーロ(約5000億円)で買収。再生可能エネルギーにも強いエネコの営業基盤を活用し、日本を含むアジアにも事業拡大へ▽ブルネイで天然ガス由来の水素を製造し、トルエンと合成して日本へ輸送するプロジェクトに参画。ENEOS製油所へ供給する実証実験も

住友商事

 豪州で、太陽光由来の電力で水を電気分解して「グリーン水素」を製造・現地販売する地産地消型事業を検討。地元資源大手「リオティント」のアルミナ精製所に動力源として提供▽英洋上風力発電事業「ファイブ・エスチュアリーズ」に参画。事業リスクは一定程度あるが高リターンも見込める開発初期段階から参画

(出所)取材を基に編集部作成

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