週刊エコノミスト Online

2022年入試:首都圏オススメ私立中学ランキング 首位は「オンライン」青稜、「満足度」市川と渋谷教育学園幕張…〈サンデー毎日〉

サンデー毎日10月3日号・表紙
サンデー毎日10月3日号・表紙

 コロナ対策やICT教育でエキスパート「推す」学校は

 来年の中学受験も人気になりそうだが、この時期は受験勉強に力が入る頃だ。同時に志望校を絞る時期でもある。学校選びはいつでも迷うものだ。そんな時に役立てたいのがエキスパートの意見。学習塾の塾長・教室長オススメの中学校はどこか。

 中学受験人気が続いている。首都圏模試センターによると、今年も志願者は増え、これで7年連続の増加だ。首都圏の私立中・国立中の志願者は、昨年より650人増えて5万50人になった。志願者が5万人を超えるのは2007年以来14年ぶりだ。首都圏の小学校6年生の私立中受験率も、昨年の16・62%から16・86%に上がった。

 この人気の理由はコロナ禍が大きい。昨年は3カ月近くの休校期間があった。対面授業ができずに、各校は急きょ、オンライン授業を取り入れた。しかし、私立中といってもICT教育は各校ばらばらだ。生徒全員にタブレットなどの通信機器を持たせている学校は少ない。学校も手探りで自宅にパソコンなどがあるのか、通信環境はどうかなどを調査した上で、オンライン授業に踏み切った。さらに、通っている公立小などの対応がプリントを大量に送り、家で自習という学校もあった。保護者は公立中に進学しても同じ状況になるのではと不安に思い、中学受験を目指した家庭も多かったという。

 首都圏の289学習塾がアンケートに回答

 この私立中人気は来年も続くのだろうか。本誌と大学通信は首都圏の学習塾の塾長・教室長に緊急アンケートを実施し、289学習塾から回答を得た。

 それを順に見ていこう。まずは来年入試の志願者数について聞いた。今年と比べて来年は「少し増える」が最も多くて57・1%、次が「変わらない」で29・8%、「大きく増える」が4・8%だった。「今年以上」という回答が9割を超えた。来年も中高一貫校の人気は高いようで、中学入試は厳しくなりそうだ。

 さらに、もっと増えればいい入試方式を聞いたところ、「1回分の受験料で何度も受けられるような制度」がトップで46・4%、次が「特待生制度」32・9%、「公立一貫校の合格発表後の入試」24・9%、「受験料の値下げ」24・6%の順だった。入試について保護者の経済的な負担軽減を望む回答が多かった。私立中を目指しながらも、経済的な理由から諦めている家庭も多いのかもしれない。

 さらに、その中で項目別に学校を選んでもらった。5校連記で記してもらい、最初の一貫校を5ポイント、次を4ポイント……として集計した。

 まずは「オンライン授業で生徒・保護者から高評価を得た」を見ていこう。トップは青稜、次いで広尾学園、開智未来、常総学院、駒込の順となった。青稜の募集広報部部長がこう話す。

「ICT教育にそれほど力を入れていなかったのですが、昨年のコロナ禍から教職員一丸となって態勢を整え、まずはオンラインで休校中の生徒と朝礼をはじめ、4月中旬には、高3生からオンライン授業をスタートさせました。ICTの担当を決めず、教職員全員で取り組んだことで当事者意識が高まり、紆余(うよ)曲折はあったもののうまくいきました。ただ、授業は今まで通りの授業をする先生、ネットを活用する先生などバラエティーに富むことになりました」

 また、学習塾関係者は「感染が拡大して年明けの2月1日からの入試が行えるかどうか、不安な受験生や保護者に、オンライン入試を実施すると発表したことでも注目を集めました」という。青稜はオンライン入試の実施を早々に打ち出し、最終的には実施しなかったが、すぐにコロナ禍への対策をとったことで、学習塾からの評価も高くなった。

 2位は早くからICT教育に取り組んできた広尾学園だ。生徒全員にタブレットを持たせ、授業などで活用してきた。休校中は徹底してオンライン授業を実施した。また、オンライン授業の必要性について安田教育研究所の安田理代表がこう話す。

「休校明けには分散登校になりました。そのため午前、午後に分けて登校させた学校では、授業が3時間、通学時間が片道1時間半だと、コロナへの感染リスクを抱えながらの登校で、しかも往復3時間も要しますから、オンライン授業へのニーズは休校期間だけにとどまらなかったのです。今年もそうでしたが、来年入試でも、より通学時間の短い学校が人気になりそうです」

 「面倒見の良さ」は12年連続で京華がトップ

 次に「面倒見が良い」を見ていこう。トップは12年連続で京華だ。2位は常総学院、3位は帝京大、4位は桐光学園だった。京華は120年以上の伝統ある男子校で、面倒見の良さには定評がある。学習塾の評価を見ても「先生と生徒の距離が近く、アットホームな様子で生徒に寄り添っている」「生徒一人一人に合わせた進路指導と学力を伸ばすフォロー体制がある点」「丁寧な指導によって大学合格実績を上げているから」などだ。補習授業も多く、落ちこぼれを出さない教育に力を入れている。2位の常総学院の学習塾からの評価は「英語教育などきめ細かくグループ分けした指導」「課外指導や時間外の個人指導が熱心なこと」などだ。少人数を活(い)かしたマンツーマンに近い教育が人気のようだ。安田さんはこんな見方をする。

「(ランクインした)多くの学校が高校募集をしており、中学の生徒数が少ないことも面倒見の良さにつながっており、高評価なのでしょう」

「生徒や保護者の入学後の満足度が高い」のトップは市川と渋谷教育学園幕張だった。次いで京華、城北、常総学院の順だ。偏差値が高くて第1志望入学者が多い学校と、入学後生徒を伸ばしている学校が入っており、二極化が読み取れる。

「入学時の偏差値に比べ、大学合格実績が高い」のトップは12年連続で京華だ。今年の実績を見ると一橋大3人、東京都立大4人、早稲田大6人、慶應義塾大8人、東京理科大7人合格だ。10年前には早稲田大4人、慶應義塾大1人、東京理科大3人で、伸びていることが分かる。2位は常総学院、3位は駒込、4位は横浜隼人、5位は開智未来と昌平だった。5位の埼玉の2校はともに東大に2人合格で、1人は推薦合格だ。

 次に「最近、大学合格実績が伸びていると思われる」を見てみよう。トップは広尾学園、2位が今年から高校募集を中止にして完全中高一貫校となった本郷、3位は洗足学園、4位は渋谷教育学園幕張、5位は大宮開成だった。近年実績を伸ばしている学校と今年実績が高かった学校の両方が入っているのが特徴だ。10位の開智日本橋学園はもとは女子校の日本橋女学館だった。15年に開智日本橋学園中に変わり、共学となった。今年は中高一貫生の1期生が卒業し、東大1人、東京工業大1人、早稲田大15人、慶應義塾大7人合格などの実績だった。

 「グローバル教育」は八雲学園、「理数教育」は芝浦工業大柏が高評価

「グローバル教育に力を入れている」だ。トップは八雲学園、2位は広尾学園、3位はIBDP(国際バカロレアのディプロマプログラム)認定校の昌平、4位もIBDP認定校の茗溪学園、5位は郁文館だった。共学校が多く、別学校では女子校が10位の洗足学園、18位の富士見丘、男子校はゼロだった。ただ、共学校でも元女子校は7校にも上る。広尾学園や三田国際学園のように、インターナショナルコースなど、グローバルなコースのある学校が上位にきているのも特徴だ。

「理数教育に力を入れている」だ。トップは芝浦工業大柏、2位は広尾学園、3位が東邦大付東邦、4位が宝仙学園(理数インター)、5位が芝浦工業大付だった。トップの広尾学園には医進・サイエンスコースがあり、芝浦工業大柏にはグローバル・サイエンスクラスがある。こういったコースは、受験生にも何を学ぶのかがはっきり伝わり人気も高い。さらに、理系大学の付属校が多いのも特徴だ。

「保護者に人気がある」のトップは渋谷教育学園幕張だ。2位は市川、3位は茗溪学園、4位は中央大付、5位は中央大付横浜だった。大学付属校人気は依然として高いが、今年の入試ではやや陰りが見られ、難関大の付属校は志願者が減ったところが多かった。進学校人気も高いことが分かる。

「生徒や保護者に勧めたい」だ。首位は常総学院、2位が京華、3位が駒込、4位が土浦日本大中教と豊島岡女子学園だった。難関上位校と「面倒見が良い」の上位校が入っている。進学校では武蔵、栄光学園、麻布など、伝統校が入っているのも特徴だ。

 これは志望校選びで重視している項目を聞いたものだ。重視しているのは「大学合格(進学)実績(付属校含む)」で87・9%、次いで「通学の交通の便」66・4%、「偏差値」62・3%で、ここまでが6割超えで、いずれも昨年を上回った。以下「校風」「教育方針」「塾の先生の意見」「立地環境」の順となった。さらに最重視する項目でもトップは、大学合格実績だった。トップの大学合格実績は、どこの中学に進学しても気になるところだ。

 前出の安田さんは「コロナの影響で通学の交通の便を気にする保護者が増えています。朝、満員電車に乗ることや、学校が用意する通学バスが密になるので避けたいとかです。また、各校が集まって開催される合同説明会などのイベントが減り、学校の説明会も入場制限をしています。オンラインで開催されていますが、やはり実際に学校を訪れたいとの気持ちが強くなっています。学校情報が少ないことを考えると、偏差値に頼らざるを得ないため偏差値重視なのでしょう」と言う。

 「伸びる生徒の保護者」は「コミュニケーションがよくとれている」

「伸びる生徒の保護者の共通点」も聞いた。トップは「子どもとのコミュニケーションがよくとれている」の43・9%、次いで「子どものことをよく見て、適性や能力を把握している」と、「塾(教師)を信頼し、聞く耳を持っている」がともに43・3%だった。中学受験では子どもを冷静に第三者的な目で見つめて、志望校を決めていくことが大切だ。

 来年入試は今年以上に混沌(こんとん)としている。志願者は増えそうで、一貫教育への期待は高まる。来年から豊島岡女子学園が高校募集をやめて完全中高一貫校になり、都内の公立一貫校も高校募集をやめる方針だ。ますます中学受験の重要度が増していく。学校情報の不足から、有名校人気になることも考えられる。エキスパートの意見を参考に、子どもにあった学校を見つけてほしい。

 9月21日発売の「サンデー毎日10月3日号」は、「オンライン授業で生徒・保護者から高評価を得た」「面倒見が良い」「生徒や保護者の入学後の満足度が高い」「入学時の偏差値に比べ、大学合格実績が高い」「最近、大学合格実績が伸びていると思われる」「グローバル教育に力を入れている」「理数教育に力を入れている」「保護者に人気がある」「生徒や保護者に勧めたい」の各ランキング表を掲載しています。

 他にも「どうする?受験生のワクチン」「総裁選インサイド 暴君・河野太郎 「宰相」への死角」「百貨店ロスは大阪・東京に及ぶのか」などの記事も掲載しています。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事