再びコロナ禍の2022年大学入試 共通テストは2年目も受けるべし!〈サンデー毎日〉
成績は「不測の事態」のエビデンス
大学入学共通テストの出願が9月27日にスタートし、2022年度入試(22年4月入学)が本格始動する。入試改革元年だった今春に続き、コロナ危機が再び影を濃く落としそうだ。悩める受験生に4人のエキスパートが最新の模試データに基づいて本音でアドバイスする。
進む「3教科型」脱却、国公立併願組が増加
「早稲田大、青山学院大など21年度に入試改革を行った首都圏の難関私立大が狙い目となりそうです」
東進ハイスクールコンテンツ本部の島田研児・教務制作部長はそう話す。両大学は21年度入試で看板学部や主な入試日程で共通テスト受験を必須化し、受験生の安全志向などから志願者を大幅に減らした。特に早稲田大は1970年代以来なかった「10万人割れ」となり、大学関係者を驚かせた。ただ、志願者が減少した大学、学部は翌年にリバウンドで人気が上がり、狭き門になるというのが受験界の常識でもある。なぜ「狙い目」なのか?
早稲田大は政治経済、国際教養、スポーツ科の3学部で共通テストを受けないと出願できない、いわば国公立大入試と同様のスタイルになった。とりわけ政治経済では数学ⅠAを必須化し、4教科4科目を課した。私立文系では英語と国語、地理歴史などの選択科目を課すのが標準的だが、その最難関が「3教科型」を脱却した意味は大きい。
島田氏は「入試改革初年度に実質倍率を大きく下げた首都圏の難関私立大については、実際の入試問題や出題傾向が明らかになり、志願者はある程度戻る」と予想する。半面、受験層は3教科型と異なる方式に対応できる人が中心になりそうだ。つまり国公立大志願者の併願が増える。「2021年度と同様、合格しても国公立大に流れる率が高まり、最終的に追加合格を出す私立大が増えるのではないか」(島田氏)。結果的に門は狭まらない可能性がある。入試改革は従来のセオリーを変えつつあるようだ。
共通テストは難化必至、センター試験で練習を
難関私立大では、上智大も21年度入試の「共通テスト利用型」で数学ⅠAを必須とする4教科を課した。上智大は前年度まで大学入試センター試験利用入試を行わなかったが、新たに導入した。私立大の約9割が採用している共通テスト利用方式は大学個別の試験対策が不要なことが多く、戦略的に欠かせないツールだ。河合塾の亀井俊輔・教育情報部長が言う。
「夏に行った模試で私立大の動向を見ると、共通テスト方式の志望者数の増加率が非常に高い。今春の共通テストの平均点が比較的高かったので、受験生の警戒感が薄れているのだと思います」
しかし、と亀井氏は続ける。「導入1年目は、作問者もセンター試験と難易度が大きく変わることで混乱が生じるのは避けたい気持ちが強かったと思われます。2年目の共通テストは難化する可能性が高い」
駿台教育研究所の石原賢一・進学情報事業部長は、より具体的に「数学ⅡBが10点以上難化する(平均点が下がる)」と断言する。
「共通テストの平均点が高かった理由は数学が易しかったからです。数学ⅡBの平均点が6割(59・9点)でした。かつてセンター試験でこんなに高かったのは01年度以来。数学に限らず、どの教科・科目もセンター試験の過去問にしっかり取り組む。その上で模試を受けて読解力が問われる長文問題など、新しい出題形式に慣れておくことです」
コロナ下の受験作戦に意外な「親リスク」!?
21年度入試は〝コロナ2巡目〟の中で迎える公算が大きい。体調管理に注意するのは当然だが、ベネッセコーポレーション学校カンパニーの谷本祐一郎・教育情報センター長によると、盲点になりがちな家庭内リスクが存在するという。
「子どもが入試で県外に出る場合、保護者も職業によっては自宅に2週間とどまらないといけないとか、受験しに行けるエリア、行けないエリアが変わってくる可能性があります。県外の大学を受験する場合は、地方会場があるか、共通テスト利用方式が使えるか、1回の受験で複数併願できる方式があるかなどについて親子でコミュニケーションを取り、しっかり確認しておくことが重要です」
その上で駿台の石原氏は、リスク管理の観点からも「共通テストには必ず出願すること」と強調する。
「コロナが拡大しても、今春のように特別措置や追試験を行う大学は減るでしょう。まずは共通テストを受験して自分の成績のエビデンスを取っておく。そして個別学部だけではなく、全学部日程入試や共通テスト利用方式を使い、いろいろなところで判定してもらえる作戦を取ることです」
ただし、共通テスト利用方式には注意が必要だ。
「同方式の志望者が増加していることから、倍率が上がり、ボーダーラインが高くなり、難化すると予想しています。地方会場の有無を確認し、一般方式も視野に入れていくべきです」(河合塾の亀井氏)
「安全志向」は損をする、強い志望が一番の武器
学部・学科の志望動向は世相を敏感に映し取る。
「社会科学系の学部は不人気が続いていますが、各大学とも法・政治学系は経済・経営・商学系、社会・国際系よりも明らかに人気が高まっています」と河合塾の亀井氏は話す。コロナ危機のあおりで今春の大卒者の就職率が低下する中、公務員を視野に入れる受験生が増えているというのだ。
一方で外国語系、国際系の志望は低迷している。留学もままならない状況では当然といえそうだが、東進の島田氏は「資格が取れるとか就職に有利だとか、逆に大変そうだから避けるといった理由で志望校・志望学部を選びがちですが、自分がやりたいことは何かという部分がおろそかになっては本末転倒です」とたしなめる。また、進路にこだわることがむしろ好結果を生むと話すのはベネッセの谷本氏だ。
「今春入試について高校の先生に尋ねると、想定より高い点数を取れた受験生の傾向として『志望進路が明確で、強い志望理由がある』という答えが多かった。コロナ禍では自分で課題を把握して勉強をする『学習マネジメント』と併せ、志望理由の明確化が例年以上に大事になってきます」
コロナを恐れず、そして侮らず準備を進めたい。