新規会員は2カ月無料!「年末とくとくキャンペーン」実施中です!

週刊エコノミスト Online

小室夫妻が指摘した「誤った情報」とは何か 緊急連載・社会学的皇室ウォッチング!/8=成城大教授・森暢平〈サンデー毎日〉

10月26日に結婚の記者会見をした小室圭さんと眞子さん(代表取材)
10月26日に結婚の記者会見をした小室圭さんと眞子さん(代表取材)

 眞子さん(30)と小室圭さん(30)は、結婚当日、これまでの「誤った情報」のいくつかを明確に否定した。そのひとつが、2018年のフォーダム大学(米ニューヨーク州)入学に際する「皇室利用」についての週刊誌への反論である。当時の報道が適正だったのか、検証してみたい。

 日本雑誌協会による質問では、フォーダム大法科大学院LLMコースに、法学士の学位を有していない小室さんが入学できたこと、学費全額免除の奨学金を受給したことが「特別待遇」ではないか、とされた。小室さんは、「皇室利用をしたという事実はありません」と明確に否定した。

 小室さんは2018年3月末までに、500語の志望理由書、推薦書2通、TOEFLスコア、成績証明書などを同大学に提出した。たしかに、LLMコースは、基本的に法学士の学位が必要だが、同等の法学教育を受けたと認定されれば入学が認められる。 小室さんは2016年から2年間、一橋大大学院国際企業戦略研究科で、経営法務(ビジネスロー)を専攻しているうえ、奥野総合法律事務所で、パラリーガルとして実務に携わっていた。

 小室さんは、「ロースクール入学以前に修了したlaw studies」が認められたため、出願できたと述べている。一橋大学での経営法務専攻が、フォーダムが求める法学教育と同等と判断されたということだ。

 米大学の入学プロセスは日本の総合型選抜(AO)入試と似ていて、一斉試験はない。志望理由書に深めたいテーマが明確に書かれているかがポイントになる。

 小室さんは一橋大大学院時代、海外からの直接投資の法システムに関しての修士論文を英文で書いた。これをもとに志望動機を書き、将来設計を明確にすれば、既習内容、実務経験ともに合格基準はクリアしただろう。NY弁護士会の学生論文コンペに2年連続入賞したことを併せると、かなり優秀であり、奨学金受給も不思議ではない。選考プロセスに問題があったとは到底思えない。

 小室さんの回答で重要な点は、「入学選考において、私が『プリンセス・マコのフィアンセ』であるとお伝えしたことはありません。日本のメディアから大学に問い合わせが来る可能性があり(略)入学決定後に説明をいたしました」と書かれてあることだ。志望理由書などに、眞子さんのフィアンセと書いてはいないとの全面否定である。

 「匿名」に依拠する疑惑

 問題となったのは2018年7月5日、フォーダム大が、眞子さんのフィアンセであるケイ・コムロを受け入れるというニュース・リリースを流したことである。宮内庁は7月17日、納采の儀を経ていないので婚約状態ではなく、フィアンセという表現は適切ではないと指摘。3日後に記述は削除された。

『週刊文春』(同年7月26日号)は、小室さんが志望理由書に「『自分は眞子さまの婚約者』と書いたのでしょう。そうでない限り、大学側も日本の報道などを孫引きして公式HPに明記することはしないはずです」(宮内庁関係者)と書いた。各誌は、小室さんの「皇室利用疑惑」を書き立てた。

 臆測はエスカレートし、「何がなんでも試験を突破させたい大学は、小室さんだけに、他の留学生にはつけていない『特別教授』を用意するようです」(外務省関係者、『女性セブン』同年9月27日号)、「(小室さんは)『留学ビザ』を取得していなかったようです」(外交関係者、同誌同年10月11日号)などと書き立てた。後者の表題は「小室圭さん超VIP留学中断帰国! 眞子さま震える」であった。

 小室さんならこんなことがありそうだという想像をたくましくして、正体不明で、検証不可能な「関係者」を連発し、悪意のこもるニュースを流し続けた。

 臆測の暴走

 私は、納采の儀を経ていないから、婚約状態ではないとする宮内庁の指摘は適切ではなかったと思う。婚約とは、従来の日本にはない西洋法に基づく個と個の約束である。公の場での結婚の宣言があれば、「婚約成立」と判断するのが妥当である。二人の記者会見は2017年9月3日であった。当時「婚約内定」と書かれたが、法的には会見以降、婚約は成立していた。

 ちなみに、美智子さま(現・上皇后)の結婚発表は1958年11月27日で、納采の儀は翌年1月14日であるが、発表以降、事実上の婚約者として扱われている。

 おそらく、宮内庁はフォーダム大の発表を事前に知らず、驚いて表現を削除してもらったということなのだろう。この慌てぶりが、「小室さんは自分勝手に留学を決めてしまった」(『週刊文春』2018年7月12日号)との印象を強めた。

 眞子さんが述べるとおり、留学は眞子さんがお願いして、時期を早めてもらったものである。宮内庁と眞子さんの意思疎通に問題があり、結果的に「疑惑」を広げた。

 ビザ未取得「疑惑」について、『週刊文春』(同年10月18日号)は、奥野総合法律事務所を通じて、小室さんが「事実無根」と反論する回答を得ていた。しかし、記事タイトルは「小室さんアメリカ『不法滞在』疑惑」であった。

 「最近の皇后さま(美智子さま)は『小室さんとは、一体どういう方なのでしょう』としきりにこぼしておられます」(御所の事情に通じる関係者、『週刊新潮』8月16・23日号)と書かれたこともある。宮内庁担当記者の経験から言えば、皇后の発言がこれほど明瞭になることは通常はあり得ない。この問題について、美智子さまは眞子さんに一切の意見は言わなかった。ご性格からしても、右のような発言があったとは考えられない。

 宮内庁は、「一つひとつに反論するとキリがない」「反論しない報道が真実と受け取られてしまう」として、週刊誌報道を静観してきた。それが「臆測の暴走」を加速させてしまった。

 二人の会見が一方的だとの批判があった。ただ、今まで一方的に記事を書かれてきたのは二人の方だと思う。

     ※

 眞子さんの結婚に合わせ、連載のタイトルを「社会学的 皇室ウォッチング!」に変更し、皇室全般の問題を取り上げていきます。

もり・ようへい

 成城大文芸学部教授。1964年生まれ。博士。毎日新聞で皇室などを担当。CNN日本語サイト編集長、琉球新報米国駐在を経て、2017年から現職。著書に『天皇家の財布』(新潮社)、『近代皇室の社会史―側室・育児・恋愛』(吉川弘文館)など

「サンデー毎日11月14日号」表紙
「サンデー毎日11月14日号」表紙

 11月2日発売の「サンデー毎日11月14日号」は、他にも「さようなら、皇室。 眞子さん『亡命』への3年間の葛藤」「衆院選を検証する 金子勝 詐欺としての『新しい資本主義』」「10年ぶり東京『震度5強』の揺れは『首都直下地震』の前触れか!?」などの記事も掲載しています。

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

12月3日号

経済学の現在地16 米国分断解消のカギとなる共感 主流派経済学の課題に重なる■安藤大介18 インタビュー 野中 郁次郎 一橋大学名誉教授 「全身全霊で相手に共感し可能となる暗黙知の共有」20 共同体メカニズム 危機の時代にこそ増す必要性 信頼・利他・互恵・徳で活性化 ■大垣 昌夫23 Q&A [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事