金銭トラブル問題「小室責任論」に反駁する 緊急連載・社会学的眞子さまウォッチング!/7=成城大教授・森暢平〈サンデー毎日〉
眞子さま(30)と小室圭さん(30)がいよいよ10月26日に結婚し、記者会見が開かれる。金銭トラブルについて、小室さんが何を語るかが、ポイントであることは間違いない。一時金が辞退され、儀式がない異例の結婚であることの責任が、小室さんや母親にあると考える人は依然少なくない。会見を前に小室さんに本当に責任があるのかを、もう一度、考えたい。
小室さん責任論は、例えば、フリーアナウンサーのワイドショーでの次のような発言に見て取れる。
「眞子さまが一人で(天皇ご夫妻と上皇ご夫妻に)挨拶(あいさつ)に行くとか、すべての儀式を全部すっ飛ばすって、あり得ないって私は思っていて(略)その理由は誰にあるのか。(略)小室さんは何で(挨拶に)連れて行けないのか。その理由は何なのかとか、やっぱり、みんな知りたいと思う」
金銭トラブルが解決していない現状は小室さんに責任があり、記者会見で説明を聞きたいとの考えである。
小室さん責任論を唱えるのは、ワイドショー内のタレントだけではない。テレビ局の解説委員もニュース番組の中で「結婚が延期になってしまった一つの理由に金銭トラブルがあります。こういう異例の形になってしまったのは(略)やはり小室さん側の責任は重いと感じざるを得ません」と、同様の意見を開陳した。
元婚約者の目的見えず
ここで、金銭トラブルについてもう一度考えてみる。婚約の正式発表から3カ月が過ぎたころ、『週刊女性』(2017年12月26日号)に、小室さんの母親が、元婚約者Aさんに対して、約400万円の「借金」があると報道された。小室さんにとったら、寝耳に水である。
これが引き金になり、2018年3月に予定された「納采の儀」は、その1カ月前に中止され、結婚自体も延期となった。
小室さんは苦労して代理人(上芝直史弁護士)を選任し、交渉方針を詰めた。400万円を解決金として払ってしまう方法もあったが、Aさんが金銭だけを目的としているとも思えない。何しろAさんは、小室さんが米国で金髪女性に誘われたら性行為を拒めないだろう(『週刊大衆』2018年8月6日号)などと明らかに名誉を毀損(きそん)する発言を繰り返している。小室家を貶(おとし)めることが目的なら、解決金が払われても中傷を繰り返す可能性がある。
2019年5月8日、上芝弁護士と、Aさんの代理人である『週刊現代』記者の話し合いが持たれた。上芝弁護士は、解決するまでは「話し合い内容を途中で公にはしないことを確約して」ほしい旨を要請した。
しかし、9月26日、Aさんからの回答書は拒否であった。「話し合いの進捗(しんちょく)や内容を秘密にするのではなく、むしろ定期的に正確な情報を公開した方がいたずらに事態をゆがめたり煽(あお)ったりするような報道を減ずることになる」「国民に対しても誠実に事の経緯を公表する方がお二人の結婚にも近づくと思う」とあった。
『週刊現代』記者が代理人についていることもあり、秘密は守れないとの宣言である。しかし、この種の話し合いでは、互いが本音でやり取りをするため、交渉を秘密にすることは常識である。
その年の11月13日、小室母子に対しAさん側は「もはや金銭の請求はしない」「話し合いは不要なのでやめたい」と告げた。しかし、「問題は解決したと考えていいのか」という趣旨を質問したところ、「決して解決したとは思っていない」という回答が返ってきた。
訳が分からない回答である。金銭は求めず、それでも解決していないのなら、いったい何を求めるのか。交渉は事実上、ここで頓挫した。
小室さん母子は2021年4月12日、打開策として解決金の支払いを通じての解決を新たに提案。しかし、Aさんは、母親と直接会うことを求め、問題は再び行き詰まっている。
婚約延期以来の3年8カ月、小室さん母子は、トラブル解決を目指して、尽力してきた。解決に至らなかった大きな要因は、Aさんが、交渉の過程を秘密にする約束をしなかったこと、母親との直接面会を求めたことの2点である。法的交渉において通常とは異なる主張をするAさん側の対応が問題を複雑にしていることは否めない。
こうした場合、債務不存在確認訴訟を起こす方法がある。小室さんの母親の側から、借金がないことの確認を求めて提訴すれば、Aさん側は弁護士選任を検討することになる。そこから解決金などの実質交渉に入るやり方である。それができなかったのは、「世論」の反発が容易に予想されるためだ。
解決に至らなかったさらなる要因は、歪(ゆが)んだ世論の存在にあると私は思っている。
小室さん母子が、400万円を返したくないためトラブルの解決を引き延ばしてきたと主張する人がなおいる。まったくの曲解だ。小室さん母子がトラブル解決を遅延させるメリットは何もない。結婚までの解決に向かって懸命に努力してきたはずである。
母の問題に責任あるか
百歩譲って、小室さんの母親から「財布代わり」にされていたというAさんの主張に寄り添うとしよう。だが、そこに小室さんが関係あるのだろうか。婚約中の男女の問題に、なぜ、息子である小室さんが責任を負わなくてはならないのだろうか。
10月26日の記者会見で、小室さんが金銭トラブルについて割く時間は、せいぜい5分。長くても10分であろう。異例の結婚という形の責任が小室さんにあると考えれば、小室さん自身が再び、トラブルの経緯を説明すべきことになる。しかし、小室さんはこの問題で、何の責任も負っていない。
金銭トラブルについて、記者会見で小室さんが語ることは、以下の2点であるはずだ。(1)Aさんからの支援には今も心から感謝している、(2)今後も真摯(しんし)にAさんとの話し合いを続け、解決を目指す――。
もう、それで十分ではないか。小室さん責任論に与(くみ)することは、まったくできない。
もり・ようへい
成城大文芸学部教授。1964年、埼玉県生まれ。博士(文学)。毎日新聞で皇室や警視庁担当、CNN日本語サイト編集長、琉球新報ワシントン駐在を経て、2017年から現職。著書に『天皇家の財布』(新潮社)、『近代皇室の社会史』(吉川弘文館)など